三谷幸喜
ゲストには三谷幸喜を迎える。
【演出家 三谷幸喜が教える“ステキなドラマ作りの極意”】
▼表現力をつけやがれ
三谷曰わく、良い俳優は良い台詞を考え的確に自分の思いを伝えるという。
嵐の6人には表現力クイズをやってもらう。
――場所は夜のオフィス。
時計の針は10時を指している。
残業中の社員AとB。
社員A「…(帰りたい)」
社員Bは仕事に没頭している。
社員A「なぁ」
社員B「(顔をあげて)はい?」
社員A「 」
自分が社員Aになったつもりで、帰りたい思いを『帰りたい』を使わずに伝えろ、というものだ。
順番が回ってきて、社員Aを芽依、社員Bが松本。
「あーあ、」
「……」
松本はそろばんのような手つきをしている。
「そろばんか(笑)」
《笑》
「何の仕事してるんだよ(笑)」
「疲れたな〜」
「……」
「…ねえ」
「……」
「デカいそろばん使ってんな(笑)」
「ねえ!」
「…はい?」
ようやく松本も顔を上げた。
「今何時かわかる?」
《あぁ〜》
芽依なりの答えは『今何時かわかる?』。
観客も納得のようだ。
三谷「なるほど」
「三谷さん的には何点?」
三谷「あのですね、実は僕の考えた答えとほぼ一緒なんです」
そう言って三谷が捲ったフリップには、『今何時?』と。
三谷「文句無しの100点です」
《おぉ〜》
「すご!」
「やったー!」
三谷「まさか同じ答えが出るとは思ってませんでしたね」
「いや、あの、実際によく使うんですよ」
「と、言うと?」
「ご飯とか食べてさ、喋ったりするじゃない?だけど明日も朝から仕事だからそろそろ帰りたい。そういうときに」
「『今何時?』って?」
「そう」
「でもココで言っちゃったらもう使えないんじゃないの?」
「あ…」
《笑》
「はい、馬鹿ー」
▼ビックリしやがれ
三谷曰わく、「笑う泣く怒る」の演技は簡単。ビックリの演技が1番難しい、らしい。
三谷「柱にぶつかっていただきましょう」
「柱?」
三谷「ええ。柱お願いします」
大道具が運んできたのはどこにでもある柱。
三谷「えー、それではですね、今度は皆さんに“あるとわかっている柱に自然とぶつかる”という芝居をしていただきます」
設定は“怒りを吐き出しながら気付かずに柱にぶつかる”というもの。
三谷「よーい…スタート!」
「あぁもう!櫻井マジでムカつく!」
「おい!」
《笑》
「ヘタレすぎだっつーの!」
《笑》
そのまま柱へと歩いて行く。
「しかも撫で肩だしさー!」
「これ、ただの俺の悪口じゃね?」
《笑》
ヘコむ櫻井を他の4人が慰めている。
「もう本当にムカつ――」
ドンッ!!
「〜っ!もう!」
三谷「はい!」
戻ってきた芽依は鼻を赤くし、目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
「すいません芽依さん」
「はい?」
「今、素でぶつかりましたよね?」
《笑》
「そんなことないです、バリバリ演技です」
「鼻真っ赤(笑)」
《笑》
そう言われて、芽依は両手で鼻を隠す。
三谷「これが演技だったら非常に良かったんですけど(笑)」
「いや、これ演技ですよ!」
「正直に言って。鼻、超痛いでしょ?」
「…痛い」
《笑》
「1つ確認したいんだけど…ここで俺の悪口を言う必要あった?」
《笑》
「いや、本当申し訳ない(笑)」
▼三谷と舞台作りやがれ
三谷流ドラマ作りの極意曰わく、初めに設定登場人物を頭の中で決めるという。
設定
・夜の繁華街で同窓会
・2次会終わりの深夜12時半
・残った同窓生6人の会話
以上を踏まえて三谷が用意した役の設定は、IT社長、俳優、キャバクラ嬢、サラリーマン、自営業、失業中。
三谷「まず見てわかるのが1人ありますよね。キャバクラ嬢は…渡辺さん」
「そうだよね。私以外の人がやったらちょっとね」
《笑》
三谷「で、僕の中でもう、(この役は)絶対この人にしようと最初から決めてたものが…失業中が二宮さん」
《イエーイ!》
「いや、俺そういうのやってたけど(笑)」
三谷「違う違う、そういうことじゃなくて」
「はい」
三谷「(役が)1番屈折してるわけですよ」
「そうですね」
《笑》
三谷「この中で最も屈折感が似合うというか」
《笑》
「屈折感(笑)」
三谷「俳優さん…大野さん」
《あぁ〜》
三谷「サラリーマン。えー、この人もの凄く熱くて、当然朝まで行くと思い込んでいる。絶対行くんだと」
※サラリーマンの設定 帰りたくない
久しぶりに集まったので朝まで行くと思っている
「久しぶりに集まるんですもんね」
三谷「うん、当然行くだろうと。えー…松本さん」
《あぁ〜》
三谷「えー、自営業。唯一の妻帯者で子供も生まれたばかりで早く帰りたいと思ってる」
「IT社長残ってるからな」
《笑》
三谷「悩んだんですけども、こっち(自営業)が相葉さん」
《あぁ〜》
「くぅー!」
三谷「で、ITが櫻井さん」
《あぁ〜》
「なるほど」
三谷「えー、今彼らの抱えてる問題は、帰るか朝まで飲むかなんですよ」
6人も真剣な表情で話を聞く。
三谷「この人、IT社長は帰りたい」
「仕事ありますしね」
三谷「仕事あるし。で、車もね、停めてあるんです、ちょっと行った先に。ただ、こういう人ってあんまり自分から帰るって言いたくないんですよ。きっとみんなから恨まれるっていうか『やっぱお前変わったよな』って言われたくないから」
《あぁ〜》
※IT社長の設定 帰りたい
仕事があるから帰りたいけど帰りたいと言えない
三谷「俳優も同じ。本当は帰りたくてしょうがないんだけれども、あんま自分の口から言いたくない。嫌われたくないから」
※俳優の設定 帰りたい
嫌われたくないから帰りたいと言えない
三谷「で、自営業の彼も帰りたい」
※自営業の設定 帰りたい
家族が待っているため早く帰りたい
三谷「キャバクラ嬢はどっちでも良いんですよ、朝から仕事があるわけでもないし。ただ、寒い中揉めるのが嫌で“早く決めてほしい”と」
※キャバクラ嬢 どちらでも良い
他の5人に任せるが早く決めてほしい
三谷「失業中の彼には選択肢が無いわけです」
《笑》
※失業中の設定 選択肢なし
お金を持ってないので選べない
三谷「一銭も持ってない」
「電車なら…」
三谷「電車なら、だから140円くらい持ってる」
《笑》
三谷「という設定でこの芝居作っていきます」
いざ、稽古が始まる。
腕時計で時間を確認する相葉。
「じゃあ俺、今日帰るわ」
「あ、マジ?じゃあ俺も帰ろうかな」
「俺、店予約したけど」
《笑》
ここで三谷の止めの声が入る。
三谷「(櫻井さんは)そんなにすぐ出ないほうがいいかもしれない。彼の理想は、みんながバラバラになった後でやっと電話とって『迎えに来てくれ』って感じ」
《あぁ〜》
三谷「むしろ帰りたくないフリをしたほうがいいかもしれない」
「ごめん、今日帰るわ」
「え?」
「本当ごめん、マジでごめん!」
「いや、店とっちゃったんだけど」
「みんなで行ってよ、5人で」
「そこは行こうよ。10年ぶりだよ?」
「いや、そうなんだけどー…」
渋る相葉を見て、松本は大野に振る。
「ね!大変なんだよ、最近」
「おぉ」
「今日はいいじゃん」
ここで三谷の止めの声が入る。
大野に対して「何か言ってあげて」と。
「10年ぶりだよ?久しぶりじゃん」
「でもさホント、だって『待ってる』って電話あったんだって。『早く帰ってきてね』って」
「今日はいいじゃん」
同意を求めるように大野の腕を叩く。
「…行こう!」
《笑》
三谷「『早くしようよ』みたいな、急かす感じで」
「もうどっちでもいいからさ、早く決めようよ」
「ちょっとさー…」
「いいじゃん今日は」
「どうしよっかなあ」
三谷「何か一言いきましょうか。『良いんじゃないの?帰れば』」
「良いんじゃない?帰れば」
《笑》
「だろ?」
「じゃあさ、また今度にしようか」
三谷の止めの声が入る。
三谷「いいですね。そしたら“今度”という言葉が大嫌いなんですよ、彼は」
《笑》
「(笑)はい」
三谷「『今度?今度今度って何だよ!』ちょっと涙目になって」
《笑》
「お酒も入ってるし」
三谷「お酒も入ってる。『今度なんて来た試しが無いじゃないか!』」
《笑》
「熱い!(笑)」
「いやぁ、熱いねー(笑)」
「俺は行きたい」
「また今度にしよう」
「…今度ってなんだよ」
「いや、また…」
「今度今度って言うけど、今度、こっ…(笑)」
《笑》
「今度って言うけど、今度なんか来たこと無いじゃないか!」
《笑》
会場が爆笑に包まれる。
三谷「もっと!前に一歩。『今度なんて来た試しが無い!』」
「今度なんて来た試しが無いじゃないか!」
《笑》
三谷「で、相葉さんがスッと寄ってきて、『今度な』」
「今度なんて来た試し無いじゃないか!」
「まぁまぁ」
三谷「もうそこでうずくまる」
「いいじゃん、そんなつもりで言ってるわけじゃないからさ。ね?」
相葉がうずくまる松本の肩に手を置く。
「また今度な」
三谷「そしたらもう殴りかかって」
《笑》
「お前!」
松本は相葉の肩を抑えつける。
三谷「助けに入る。渡辺さんは面倒くさそうに離れた場所にいて、二宮さんはそれが楽しくて見てる」
《笑》
三谷「櫻井さんすぐ止めに入る」
「おいおいおいおい!」
相葉の胸倉を掴む松本を止める櫻井。
三谷「で、『帰してやろうよ』」
「帰してやろうよ、松本」
「なんで帰すんだよ。お前もじゃねえかよ!」
《笑》
「お前のせいだぞ!」
松本の怒りの矛先は櫻井へ。
と、ここで止めの声が入る。
三谷「これ、コメディーじゃないんで」
《笑》
三谷「もの凄いシリアスな」
「(笑)わかりました」
三谷「じゃ、相葉さん。一言言って去って行きましょうか」
「じゃあ今度な」
「お前!」
「やめよう!」
追いかけようとする松本を櫻井が必死に止める。
三谷「そしたら、じゃあ今度大野さん。パパラッチがいた感じで」
《笑》
三谷「ただの友人の集まりでなく、横にはキャバクラ嬢がいる。端くれならまだしも彼女はナンバー1ですから、マスコミも簡単にわかってしまうんですね。だから、チクショーみたいな。『ごめん俺今追われてんだ。マスコミに追われてんだ。じゃあな』って感じでバッと逃げちゃう」
「じゃあどうする?」
「どうするってどういうこと?」
何かに気付いた大野が遠方を睨むように見つめる。
「クッソー」
《笑》
「どうした?」
「撮られた?」
「撮られた、今」
そう言った大野はチラッと芽依を見る。
「…何」
「あ、いや、別に」
三谷「ここで『私がいるから焦ってるの?』」
「水商売やってる女が一緒だからそんな焦ってんの?」
「そういうわけじゃ…」
「そういうことでしょ?」
「まぁまぁ、そうカリカリすんなよ」
「…ちょっと悪ぃ」
それだけ言い残して走り去って行く。
三谷「はい、『どうする?』」
「どうする?」
三谷「ちょっと1回腹くくって、『4人で行こうか』」
「あー…、まぁ4人で行こうか」
「そうする?」
三谷「で、『俺、店知ってるから案内するよ』」
「店。もう、すぐ着くから」
歩き出す松本。
三谷「そしたら『どうせだったら僕の知ってる店行かないか?』『ワインの飲めるいいとこあるんだよ』」
「じゃあ行こうか」
「うん」
「そうしよっか」
「すぐだから」
「あぁ!どうせだったら、俺の知ってる店行かないか?ワインいっぱいあるし」
三谷「じゃあ『松本、タクシー呼んできてくれるか?』。ちょっと社長の嫌な感じが一瞬出る感じ」
「じゃあ松本、ちょっとタクシー呼んどいてもらえる?」
「俺?」
三谷「そしたら『いいよ!』。凄い良い奴なんで」
《笑》
「OK!」
松本がタクシーを呼びに行く。
三谷「そういう彼が…凄く敏感に。なんか“ちょっと今、社長風吹かせたなあ”みたいな」
「…お前の部下かよ」
「ん?」
「今の今の。感じ悪かった、今」
「…ごめん」
三谷「『そんないちいち突っかかることないじゃん』」
「そんないちいち突っかからなくても」
三谷「そしたら『お前に言われたくない』」
「お前が言える立場かよ」
「は?」
三谷「『俺帰るわ』」
「帰るわ」
三谷「『俺だって明日早いし』」
「明日早いし」
「仕事ねえだろ!」
《笑》
三谷「『飲みに行こうよ』『金のことなんか気にすんなよ』」
「飲み行こうよ、金のことなんか気にすんなよ」
三谷「で、凄いカッとなって、振り返って『お前に奢ってもらう人間の気持ちがわかるのか!』」
《笑》
「お前に奢ってもらう気持ちがわかるのか!」
三谷「だから、割となんかもう、ここで決別宣言するくらいの、ビシッとした。じゃあここ来て(櫻井の肩に手を置き)『俺の分も頑張ってくれよ』」
「奢ってもらう人間の気持ちがわかるのか!」
三谷「さっきの松本さんぐらいガッと」
《笑》
「わかるのか!」
「あー…、ごめん」
「ハァ、じゃあ俺の分まで頑張ってくれよ」
三谷「行こうとしたら『何言ってんだ!』」
「何言ってんだよ!」
去って行く二宮を止める。
「お前の分はお前が頑張るんだよ!」
振り返った二宮は櫻井を見つめる。
三谷「渡辺さんはここでも面倒くさそうに見てる」
《笑》
三谷「そしたら松本さん」
「タクシー捕まったよ!」
《笑》
「あれ?どうした?」
「行こう」
「ん、行こうよ」
「あー、やっと温かいとこに行けるんだ」
「ありがとう」
二宮以外の3人はタクシーの元へ歩いて行く。
三谷「で、その場で『お前が頑張るんだよ』って言われた気持ちがずっと残ってる。1人ポツンとなっています。そしたら、雪が降ってきます」
《笑》
思わず二宮も聞き返す。
三谷「雪が降ってきます」
「あぁ」
三谷「気持ち的に行くか?自分の道を歩むか?」
「あ、この人がってこと?」
三谷「うんうん」
果たして失業中の二宮は皆と飲みに行くのか?
ドラマの結末はいざ本番で。
三谷「大変長らくお待たせ致しました。嵐と私、三谷幸喜のスペシャルコラボレーションドラマ。いよいよ開演です。タイトルは『別れ道』。最後までごゆっくりお楽しみください」
開演のブザーが鳴る。
「なんだよー」
「ねえ、コレ凄いじゃん!このジャケット」
6人6様、それぞれが歩いて来る。
「いやー、楽しいね、今日!」
「まあ、久々集まるとね」
「うん」
「やっぱ美味いな、あそこな」
「ホント美味しかった」
「うん、美味い美味い美味い」
「やっぱ変わったけどさ、みんな。大人になったけど変わんないよね!」
「まあ確かにねー」
携帯を弄りながら答える櫻井。
「他の奴らもそうだったもんね」
「どうする?次」
「ん?」
「次どうしよっか」
「別にどうでもいいよ」
「行こう行こう!」
「なら早く行こう。寒いし」
「ねえねえ、あのさ。…ごめん、俺帰っていい?」
空気が固まる。
「あの、ホラ、さっき言ったじゃん、生まれたばっかで」
「子供ね」
「また?」
「違う、連絡があって風呂入れてねえんだって、まだ。俺入れないといけないんだよ。ごめんな?ごめん」
「ちょっとは?ちょっと」
「あー、すっげえ行きたいんだけど…」
腕を組んで考えていたが、何か思いついたようだ。
「じゃあさ、こうしようよ!」
「何?」
「ウチで飲まない?」
「良いの?」
「良い良い、全然良い」
「大丈夫なの?」
「良い?ウチで飲まない?」
「まあ…」
「見せたいし」
「まぁまぁまぁまぁ!そしたら、また今度にしよ」
「…まあ、それがいいのかな」
「今度ってなんだよ」
「いや、またさ。また集まりゃいいじゃん。今度集まろうよ」
「今度今度って…今度なんて来た試し無いじゃないか!」
熱くなる松本。
「なんだよ今度って。今度って1番嫌いなんだよ」
そう言ってその場にうずくまってしまう。
「いいじゃん。そんな、ねえ?怒ったって」
「どうしたんだよ」
「もー、飲み過ぎたんだって」
相葉が松本の肩をポンポン叩く。
「ね、また今度集まろう?」
「だから今度って――!」
相葉の胸倉に掴みかかる松本。
「あぁ!おいおい!やめろ!」
「だって、なんだよ!良いよ、じゃあ帰れよ!」
「え?」
「俺らでやるから」
「どうしたんだよ!ホント悪い、また今度な!」
謝りながら、相葉は帰って行った。
「あー、じゃあさ」
「5人で行こうよ、じゃあ」
「まあ、それでいいよ」
「じゃあ、さっさと行こう」
「あ」
サングラスを外して何かを探す大野。
4人が「何?」と声をかけるも返事をせずに探したまま。
「どうした?」
「…あー、ちょっと撮られたかも」
「撮られた?何を」
「写真」
「ダメなの?」
「今狙われてんだよなあ」
そう言ってチラッと芽依を見る。
「…何」
「あ、いや、別に」
「あー、ハイハイ。水商売やってる女と撮られたから焦ってるんだ?」
「違うって」
「何が違うの!?」
「ちょっと、落ち着けって」
「だってそうじゃない!こんな集団で撮られたって何も問題無いはずなのに、こんなに焦ってるってことはそういうことでしょ!?」
「違うって本人が言ってるんだからさ。ね?」
「うん、でも…ちょっと、事務所で話してくるわ」
「え、ダメなの?」
「うん。ちょっとごめん!ごめんね。じゃあ行くわ」
「なんだよ」
「また!じゃあね、連絡する!」
再びサングラスをかけた大野も去って行く。
不満を隠しきれない松本。
「どうしますか。どっちでも全然、いいよ」
「行こうよ。せっかくなんだからさ」
「良いよ、じゃあ」
「じゃあ…行こうか」
「うん」
「じゃあさ、ちょっと1件電話していい?」
「うん、もちろん」
3人が寒さに凍える中、少し離れた櫻井は電話をかける。
「はい、もしもし。あぁ、もう大丈夫、車。…うん、はい、帰っていいから」
盗み聞きしている3人。
「なんかちょっと…」
「やっぱ櫻井すげえな」
「さすが社長って感じ」
「やらしいな」
「かっこいいじゃん、なんか」
「え?」
「俺らのさあ、なんか誇りじゃない?」
「ね、凄いよね」
嬉しそうに話す松本と芽依とは対称的に、二宮の顔は曇っていく。
「ごめんごめん、お待たせ」
「行こっか」
「うん。あ、俺がよく行く店あるからそこ行かない?ワインいっぱいあるし」
「あ、そうなの?」
「うん」
「全然」
「ごめん、タクシー呼んでもらっていい?」
「OK」
松本は素直に従い、タクシーを呼びに行った。
「いやぁ、今のマズくない?」
「ん?」
携帯を弄る櫻井が気のない返事をする。
「いや、お前の部下かよ」
「……あぁ」
「そんないちいち突っかからなくても」
「いやいや、お前が言うなよ」
「は?」
「大体お前、寒い寒いばっかじゃん、今日」
「だって寒いんだもん」
「そんな脚出してるからだろ」
「別にあたしが何着ようが勝手でしょ!?」
「だったらいちいち寒いばっか言うなっつってんの!」
「はぁ!?」
「おい、止めろよ!」
言い合いを始めた2人の間に割って入る櫻井。
「…ま、いいよ。やっぱ俺帰るわ」
「え?」
「うん」
「いやいや、行こうよ!」
「いやいや…ホラ、俺タクシーとか乗る金無いし」
「そんな今更…」
「俺払うよ」
「いいよ!俺、明日も早いから」
「ちょっと行こうよ、1時間くらいサッと」
「いやいや、俺飲む金も無いからさ」
「ワイン代ぐらい出すよ。奢るよ、じゃあ俺がワイン」
フッと二宮が鼻で笑う。
「お前にその、奢ってもらう人の気持ちなんてわかるわけねえだろ。何様だ!!」
そう言った二宮は、櫻井を睨み付けていた瞳をフッと外した。
「ま、ままままま。俺の分までさ、頑張ってよ」
「……何言ってんだよ!」
怒鳴る櫻井に二宮も振り返る。
「お前の分は、お前が頑張るんだぞ!」
「……」
「お待たせ!捕まったよ」
戻ってきた松本も不穏な空気を察する。
「あれ?行こうよ」
「あ、うん。今行く」
櫻井は無言で松本のあとをついていく。
「…行かないの?」
「おぉ、行く行く」
1人残された二宮。
そこに雪が降ってくる。
結局、二宮はタクシーには乗らなかった――。
三谷「はい、カット!」
観客から拍手が起こる。
三谷「いやいやいや、良かったですよ」
三谷は1人1人と握手をしていく。
「うわー」
三谷「いいじゃないですか。さすがですね」
「『さすがですね』ですか?(笑)」
三谷「うん、良かった」
「この上なく緊張しましたよ」
《笑》
「貴重な体験だよね」
「このね、キッカケとかがね」
「そうね」
「誰だっけな?みたいな。あるじゃん。ま、多分どのシーンに関しても大野さんのキッカケは多分無かったですね」
《笑》
「無かったね(笑)」
三谷が去ったあと、6人による反省会。
「いやー、なんかさ」
「凄かったね」
「最後の最後に真面目にやったのって初めてなんじゃない?」
《笑》
「いや、やっぱさ、お客さんとかも凄いんだね。絶対笑わないでって言ったら笑わないんだね」
《笑》
「だってさ、リーダーが出てきてあのサングラス、笑うでしょ、普通(笑)」
《笑》
「俺だったら笑ってるわ(笑)」
「俺も笑うもん、コレ」
「裏でかけてるの見たとき、暫く笑い止まらなかったもん」
《笑》
「爆笑してたね、そういえば」
「人の顔を見るなり腹抱えて笑ってくんだよ!」
《笑》
そして大野は再びサングラスをかける。
「やっぱりアレなんだね。やっぱりmihimaru GTに似てるよね」
《笑》
「似てる似てる」
「なんやかんやね」
「もう間もなく差し込まれる次週予告も真面目であってほしいよね」
《笑》
「そういうことね」
「このあとなんか“ペローン”ってさ、差し込まれたらもう」
《笑》
「あんまり嵐知らなくて今日初めて見た人とかびっくりしちゃうよね」
「あんま変な印象を与えたくないね」
「高低差ありすぎて耳キーンなるわ!状態だよね」
《笑》
演技だってお手のもの!
【演出家 三谷幸喜が教える“ステキなドラマ作りの極意”】
▼表現力をつけやがれ
三谷曰わく、良い俳優は良い台詞を考え的確に自分の思いを伝えるという。
嵐の6人には表現力クイズをやってもらう。
――場所は夜のオフィス。
時計の針は10時を指している。
残業中の社員AとB。
社員A「…(帰りたい)」
社員Bは仕事に没頭している。
社員A「なぁ」
社員B「(顔をあげて)はい?」
社員A「 」
自分が社員Aになったつもりで、帰りたい思いを『帰りたい』を使わずに伝えろ、というものだ。
順番が回ってきて、社員Aを芽依、社員Bが松本。
「あーあ、」
「……」
松本はそろばんのような手つきをしている。
「そろばんか(笑)」
《笑》
「何の仕事してるんだよ(笑)」
「疲れたな〜」
「……」
「…ねえ」
「……」
「デカいそろばん使ってんな(笑)」
「ねえ!」
「…はい?」
ようやく松本も顔を上げた。
「今何時かわかる?」
《あぁ〜》
芽依なりの答えは『今何時かわかる?』。
観客も納得のようだ。
三谷「なるほど」
「三谷さん的には何点?」
三谷「あのですね、実は僕の考えた答えとほぼ一緒なんです」
そう言って三谷が捲ったフリップには、『今何時?』と。
三谷「文句無しの100点です」
《おぉ〜》
「すご!」
「やったー!」
三谷「まさか同じ答えが出るとは思ってませんでしたね」
「いや、あの、実際によく使うんですよ」
「と、言うと?」
「ご飯とか食べてさ、喋ったりするじゃない?だけど明日も朝から仕事だからそろそろ帰りたい。そういうときに」
「『今何時?』って?」
「そう」
「でもココで言っちゃったらもう使えないんじゃないの?」
「あ…」
《笑》
「はい、馬鹿ー」
▼ビックリしやがれ
三谷曰わく、「笑う泣く怒る」の演技は簡単。ビックリの演技が1番難しい、らしい。
三谷「柱にぶつかっていただきましょう」
「柱?」
三谷「ええ。柱お願いします」
大道具が運んできたのはどこにでもある柱。
三谷「えー、それではですね、今度は皆さんに“あるとわかっている柱に自然とぶつかる”という芝居をしていただきます」
設定は“怒りを吐き出しながら気付かずに柱にぶつかる”というもの。
三谷「よーい…スタート!」
「あぁもう!櫻井マジでムカつく!」
「おい!」
《笑》
「ヘタレすぎだっつーの!」
《笑》
そのまま柱へと歩いて行く。
「しかも撫で肩だしさー!」
「これ、ただの俺の悪口じゃね?」
《笑》
ヘコむ櫻井を他の4人が慰めている。
「もう本当にムカつ――」
ドンッ!!
「〜っ!もう!」
三谷「はい!」
戻ってきた芽依は鼻を赤くし、目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
「すいません芽依さん」
「はい?」
「今、素でぶつかりましたよね?」
《笑》
「そんなことないです、バリバリ演技です」
「鼻真っ赤(笑)」
《笑》
そう言われて、芽依は両手で鼻を隠す。
三谷「これが演技だったら非常に良かったんですけど(笑)」
「いや、これ演技ですよ!」
「正直に言って。鼻、超痛いでしょ?」
「…痛い」
《笑》
「1つ確認したいんだけど…ここで俺の悪口を言う必要あった?」
《笑》
「いや、本当申し訳ない(笑)」
▼三谷と舞台作りやがれ
三谷流ドラマ作りの極意曰わく、初めに設定登場人物を頭の中で決めるという。
設定
・夜の繁華街で同窓会
・2次会終わりの深夜12時半
・残った同窓生6人の会話
以上を踏まえて三谷が用意した役の設定は、IT社長、俳優、キャバクラ嬢、サラリーマン、自営業、失業中。
三谷「まず見てわかるのが1人ありますよね。キャバクラ嬢は…渡辺さん」
「そうだよね。私以外の人がやったらちょっとね」
《笑》
三谷「で、僕の中でもう、(この役は)絶対この人にしようと最初から決めてたものが…失業中が二宮さん」
《イエーイ!》
「いや、俺そういうのやってたけど(笑)」
三谷「違う違う、そういうことじゃなくて」
「はい」
三谷「(役が)1番屈折してるわけですよ」
「そうですね」
《笑》
三谷「この中で最も屈折感が似合うというか」
《笑》
「屈折感(笑)」
三谷「俳優さん…大野さん」
《あぁ〜》
三谷「サラリーマン。えー、この人もの凄く熱くて、当然朝まで行くと思い込んでいる。絶対行くんだと」
※サラリーマンの設定 帰りたくない
久しぶりに集まったので朝まで行くと思っている
「久しぶりに集まるんですもんね」
三谷「うん、当然行くだろうと。えー…松本さん」
《あぁ〜》
三谷「えー、自営業。唯一の妻帯者で子供も生まれたばかりで早く帰りたいと思ってる」
「IT社長残ってるからな」
《笑》
三谷「悩んだんですけども、こっち(自営業)が相葉さん」
《あぁ〜》
「くぅー!」
三谷「で、ITが櫻井さん」
《あぁ〜》
「なるほど」
三谷「えー、今彼らの抱えてる問題は、帰るか朝まで飲むかなんですよ」
6人も真剣な表情で話を聞く。
三谷「この人、IT社長は帰りたい」
「仕事ありますしね」
三谷「仕事あるし。で、車もね、停めてあるんです、ちょっと行った先に。ただ、こういう人ってあんまり自分から帰るって言いたくないんですよ。きっとみんなから恨まれるっていうか『やっぱお前変わったよな』って言われたくないから」
《あぁ〜》
※IT社長の設定 帰りたい
仕事があるから帰りたいけど帰りたいと言えない
三谷「俳優も同じ。本当は帰りたくてしょうがないんだけれども、あんま自分の口から言いたくない。嫌われたくないから」
※俳優の設定 帰りたい
嫌われたくないから帰りたいと言えない
三谷「で、自営業の彼も帰りたい」
※自営業の設定 帰りたい
家族が待っているため早く帰りたい
三谷「キャバクラ嬢はどっちでも良いんですよ、朝から仕事があるわけでもないし。ただ、寒い中揉めるのが嫌で“早く決めてほしい”と」
※キャバクラ嬢 どちらでも良い
他の5人に任せるが早く決めてほしい
三谷「失業中の彼には選択肢が無いわけです」
《笑》
※失業中の設定 選択肢なし
お金を持ってないので選べない
三谷「一銭も持ってない」
「電車なら…」
三谷「電車なら、だから140円くらい持ってる」
《笑》
三谷「という設定でこの芝居作っていきます」
いざ、稽古が始まる。
腕時計で時間を確認する相葉。
「じゃあ俺、今日帰るわ」
「あ、マジ?じゃあ俺も帰ろうかな」
「俺、店予約したけど」
《笑》
ここで三谷の止めの声が入る。
三谷「(櫻井さんは)そんなにすぐ出ないほうがいいかもしれない。彼の理想は、みんながバラバラになった後でやっと電話とって『迎えに来てくれ』って感じ」
《あぁ〜》
三谷「むしろ帰りたくないフリをしたほうがいいかもしれない」
「ごめん、今日帰るわ」
「え?」
「本当ごめん、マジでごめん!」
「いや、店とっちゃったんだけど」
「みんなで行ってよ、5人で」
「そこは行こうよ。10年ぶりだよ?」
「いや、そうなんだけどー…」
渋る相葉を見て、松本は大野に振る。
「ね!大変なんだよ、最近」
「おぉ」
「今日はいいじゃん」
ここで三谷の止めの声が入る。
大野に対して「何か言ってあげて」と。
「10年ぶりだよ?久しぶりじゃん」
「でもさホント、だって『待ってる』って電話あったんだって。『早く帰ってきてね』って」
「今日はいいじゃん」
同意を求めるように大野の腕を叩く。
「…行こう!」
《笑》
三谷「『早くしようよ』みたいな、急かす感じで」
「もうどっちでもいいからさ、早く決めようよ」
「ちょっとさー…」
「いいじゃん今日は」
「どうしよっかなあ」
三谷「何か一言いきましょうか。『良いんじゃないの?帰れば』」
「良いんじゃない?帰れば」
《笑》
「だろ?」
「じゃあさ、また今度にしようか」
三谷の止めの声が入る。
三谷「いいですね。そしたら“今度”という言葉が大嫌いなんですよ、彼は」
《笑》
「(笑)はい」
三谷「『今度?今度今度って何だよ!』ちょっと涙目になって」
《笑》
「お酒も入ってるし」
三谷「お酒も入ってる。『今度なんて来た試しが無いじゃないか!』」
《笑》
「熱い!(笑)」
「いやぁ、熱いねー(笑)」
「俺は行きたい」
「また今度にしよう」
「…今度ってなんだよ」
「いや、また…」
「今度今度って言うけど、今度、こっ…(笑)」
《笑》
「今度って言うけど、今度なんか来たこと無いじゃないか!」
《笑》
会場が爆笑に包まれる。
三谷「もっと!前に一歩。『今度なんて来た試しが無い!』」
「今度なんて来た試しが無いじゃないか!」
《笑》
三谷「で、相葉さんがスッと寄ってきて、『今度な』」
「今度なんて来た試し無いじゃないか!」
「まぁまぁ」
三谷「もうそこでうずくまる」
「いいじゃん、そんなつもりで言ってるわけじゃないからさ。ね?」
相葉がうずくまる松本の肩に手を置く。
「また今度な」
三谷「そしたらもう殴りかかって」
《笑》
「お前!」
松本は相葉の肩を抑えつける。
三谷「助けに入る。渡辺さんは面倒くさそうに離れた場所にいて、二宮さんはそれが楽しくて見てる」
《笑》
三谷「櫻井さんすぐ止めに入る」
「おいおいおいおい!」
相葉の胸倉を掴む松本を止める櫻井。
三谷「で、『帰してやろうよ』」
「帰してやろうよ、松本」
「なんで帰すんだよ。お前もじゃねえかよ!」
《笑》
「お前のせいだぞ!」
松本の怒りの矛先は櫻井へ。
と、ここで止めの声が入る。
三谷「これ、コメディーじゃないんで」
《笑》
三谷「もの凄いシリアスな」
「(笑)わかりました」
三谷「じゃ、相葉さん。一言言って去って行きましょうか」
「じゃあ今度な」
「お前!」
「やめよう!」
追いかけようとする松本を櫻井が必死に止める。
三谷「そしたら、じゃあ今度大野さん。パパラッチがいた感じで」
《笑》
三谷「ただの友人の集まりでなく、横にはキャバクラ嬢がいる。端くれならまだしも彼女はナンバー1ですから、マスコミも簡単にわかってしまうんですね。だから、チクショーみたいな。『ごめん俺今追われてんだ。マスコミに追われてんだ。じゃあな』って感じでバッと逃げちゃう」
「じゃあどうする?」
「どうするってどういうこと?」
何かに気付いた大野が遠方を睨むように見つめる。
「クッソー」
《笑》
「どうした?」
「撮られた?」
「撮られた、今」
そう言った大野はチラッと芽依を見る。
「…何」
「あ、いや、別に」
三谷「ここで『私がいるから焦ってるの?』」
「水商売やってる女が一緒だからそんな焦ってんの?」
「そういうわけじゃ…」
「そういうことでしょ?」
「まぁまぁ、そうカリカリすんなよ」
「…ちょっと悪ぃ」
それだけ言い残して走り去って行く。
三谷「はい、『どうする?』」
「どうする?」
三谷「ちょっと1回腹くくって、『4人で行こうか』」
「あー…、まぁ4人で行こうか」
「そうする?」
三谷「で、『俺、店知ってるから案内するよ』」
「店。もう、すぐ着くから」
歩き出す松本。
三谷「そしたら『どうせだったら僕の知ってる店行かないか?』『ワインの飲めるいいとこあるんだよ』」
「じゃあ行こうか」
「うん」
「そうしよっか」
「すぐだから」
「あぁ!どうせだったら、俺の知ってる店行かないか?ワインいっぱいあるし」
三谷「じゃあ『松本、タクシー呼んできてくれるか?』。ちょっと社長の嫌な感じが一瞬出る感じ」
「じゃあ松本、ちょっとタクシー呼んどいてもらえる?」
「俺?」
三谷「そしたら『いいよ!』。凄い良い奴なんで」
《笑》
「OK!」
松本がタクシーを呼びに行く。
三谷「そういう彼が…凄く敏感に。なんか“ちょっと今、社長風吹かせたなあ”みたいな」
「…お前の部下かよ」
「ん?」
「今の今の。感じ悪かった、今」
「…ごめん」
三谷「『そんないちいち突っかかることないじゃん』」
「そんないちいち突っかからなくても」
三谷「そしたら『お前に言われたくない』」
「お前が言える立場かよ」
「は?」
三谷「『俺帰るわ』」
「帰るわ」
三谷「『俺だって明日早いし』」
「明日早いし」
「仕事ねえだろ!」
《笑》
三谷「『飲みに行こうよ』『金のことなんか気にすんなよ』」
「飲み行こうよ、金のことなんか気にすんなよ」
三谷「で、凄いカッとなって、振り返って『お前に奢ってもらう人間の気持ちがわかるのか!』」
《笑》
「お前に奢ってもらう気持ちがわかるのか!」
三谷「だから、割となんかもう、ここで決別宣言するくらいの、ビシッとした。じゃあここ来て(櫻井の肩に手を置き)『俺の分も頑張ってくれよ』」
「奢ってもらう人間の気持ちがわかるのか!」
三谷「さっきの松本さんぐらいガッと」
《笑》
「わかるのか!」
「あー…、ごめん」
「ハァ、じゃあ俺の分まで頑張ってくれよ」
三谷「行こうとしたら『何言ってんだ!』」
「何言ってんだよ!」
去って行く二宮を止める。
「お前の分はお前が頑張るんだよ!」
振り返った二宮は櫻井を見つめる。
三谷「渡辺さんはここでも面倒くさそうに見てる」
《笑》
三谷「そしたら松本さん」
「タクシー捕まったよ!」
《笑》
「あれ?どうした?」
「行こう」
「ん、行こうよ」
「あー、やっと温かいとこに行けるんだ」
「ありがとう」
二宮以外の3人はタクシーの元へ歩いて行く。
三谷「で、その場で『お前が頑張るんだよ』って言われた気持ちがずっと残ってる。1人ポツンとなっています。そしたら、雪が降ってきます」
《笑》
思わず二宮も聞き返す。
三谷「雪が降ってきます」
「あぁ」
三谷「気持ち的に行くか?自分の道を歩むか?」
「あ、この人がってこと?」
三谷「うんうん」
果たして失業中の二宮は皆と飲みに行くのか?
ドラマの結末はいざ本番で。
三谷「大変長らくお待たせ致しました。嵐と私、三谷幸喜のスペシャルコラボレーションドラマ。いよいよ開演です。タイトルは『別れ道』。最後までごゆっくりお楽しみください」
開演のブザーが鳴る。
「なんだよー」
「ねえ、コレ凄いじゃん!このジャケット」
6人6様、それぞれが歩いて来る。
「いやー、楽しいね、今日!」
「まあ、久々集まるとね」
「うん」
「やっぱ美味いな、あそこな」
「ホント美味しかった」
「うん、美味い美味い美味い」
「やっぱ変わったけどさ、みんな。大人になったけど変わんないよね!」
「まあ確かにねー」
携帯を弄りながら答える櫻井。
「他の奴らもそうだったもんね」
「どうする?次」
「ん?」
「次どうしよっか」
「別にどうでもいいよ」
「行こう行こう!」
「なら早く行こう。寒いし」
「ねえねえ、あのさ。…ごめん、俺帰っていい?」
空気が固まる。
「あの、ホラ、さっき言ったじゃん、生まれたばっかで」
「子供ね」
「また?」
「違う、連絡があって風呂入れてねえんだって、まだ。俺入れないといけないんだよ。ごめんな?ごめん」
「ちょっとは?ちょっと」
「あー、すっげえ行きたいんだけど…」
腕を組んで考えていたが、何か思いついたようだ。
「じゃあさ、こうしようよ!」
「何?」
「ウチで飲まない?」
「良いの?」
「良い良い、全然良い」
「大丈夫なの?」
「良い?ウチで飲まない?」
「まあ…」
「見せたいし」
「まぁまぁまぁまぁ!そしたら、また今度にしよ」
「…まあ、それがいいのかな」
「今度ってなんだよ」
「いや、またさ。また集まりゃいいじゃん。今度集まろうよ」
「今度今度って…今度なんて来た試し無いじゃないか!」
熱くなる松本。
「なんだよ今度って。今度って1番嫌いなんだよ」
そう言ってその場にうずくまってしまう。
「いいじゃん。そんな、ねえ?怒ったって」
「どうしたんだよ」
「もー、飲み過ぎたんだって」
相葉が松本の肩をポンポン叩く。
「ね、また今度集まろう?」
「だから今度って――!」
相葉の胸倉に掴みかかる松本。
「あぁ!おいおい!やめろ!」
「だって、なんだよ!良いよ、じゃあ帰れよ!」
「え?」
「俺らでやるから」
「どうしたんだよ!ホント悪い、また今度な!」
謝りながら、相葉は帰って行った。
「あー、じゃあさ」
「5人で行こうよ、じゃあ」
「まあ、それでいいよ」
「じゃあ、さっさと行こう」
「あ」
サングラスを外して何かを探す大野。
4人が「何?」と声をかけるも返事をせずに探したまま。
「どうした?」
「…あー、ちょっと撮られたかも」
「撮られた?何を」
「写真」
「ダメなの?」
「今狙われてんだよなあ」
そう言ってチラッと芽依を見る。
「…何」
「あ、いや、別に」
「あー、ハイハイ。水商売やってる女と撮られたから焦ってるんだ?」
「違うって」
「何が違うの!?」
「ちょっと、落ち着けって」
「だってそうじゃない!こんな集団で撮られたって何も問題無いはずなのに、こんなに焦ってるってことはそういうことでしょ!?」
「違うって本人が言ってるんだからさ。ね?」
「うん、でも…ちょっと、事務所で話してくるわ」
「え、ダメなの?」
「うん。ちょっとごめん!ごめんね。じゃあ行くわ」
「なんだよ」
「また!じゃあね、連絡する!」
再びサングラスをかけた大野も去って行く。
不満を隠しきれない松本。
「どうしますか。どっちでも全然、いいよ」
「行こうよ。せっかくなんだからさ」
「良いよ、じゃあ」
「じゃあ…行こうか」
「うん」
「じゃあさ、ちょっと1件電話していい?」
「うん、もちろん」
3人が寒さに凍える中、少し離れた櫻井は電話をかける。
「はい、もしもし。あぁ、もう大丈夫、車。…うん、はい、帰っていいから」
盗み聞きしている3人。
「なんかちょっと…」
「やっぱ櫻井すげえな」
「さすが社長って感じ」
「やらしいな」
「かっこいいじゃん、なんか」
「え?」
「俺らのさあ、なんか誇りじゃない?」
「ね、凄いよね」
嬉しそうに話す松本と芽依とは対称的に、二宮の顔は曇っていく。
「ごめんごめん、お待たせ」
「行こっか」
「うん。あ、俺がよく行く店あるからそこ行かない?ワインいっぱいあるし」
「あ、そうなの?」
「うん」
「全然」
「ごめん、タクシー呼んでもらっていい?」
「OK」
松本は素直に従い、タクシーを呼びに行った。
「いやぁ、今のマズくない?」
「ん?」
携帯を弄る櫻井が気のない返事をする。
「いや、お前の部下かよ」
「……あぁ」
「そんないちいち突っかからなくても」
「いやいや、お前が言うなよ」
「は?」
「大体お前、寒い寒いばっかじゃん、今日」
「だって寒いんだもん」
「そんな脚出してるからだろ」
「別にあたしが何着ようが勝手でしょ!?」
「だったらいちいち寒いばっか言うなっつってんの!」
「はぁ!?」
「おい、止めろよ!」
言い合いを始めた2人の間に割って入る櫻井。
「…ま、いいよ。やっぱ俺帰るわ」
「え?」
「うん」
「いやいや、行こうよ!」
「いやいや…ホラ、俺タクシーとか乗る金無いし」
「そんな今更…」
「俺払うよ」
「いいよ!俺、明日も早いから」
「ちょっと行こうよ、1時間くらいサッと」
「いやいや、俺飲む金も無いからさ」
「ワイン代ぐらい出すよ。奢るよ、じゃあ俺がワイン」
フッと二宮が鼻で笑う。
「お前にその、奢ってもらう人の気持ちなんてわかるわけねえだろ。何様だ!!」
そう言った二宮は、櫻井を睨み付けていた瞳をフッと外した。
「ま、ままままま。俺の分までさ、頑張ってよ」
「……何言ってんだよ!」
怒鳴る櫻井に二宮も振り返る。
「お前の分は、お前が頑張るんだぞ!」
「……」
「お待たせ!捕まったよ」
戻ってきた松本も不穏な空気を察する。
「あれ?行こうよ」
「あ、うん。今行く」
櫻井は無言で松本のあとをついていく。
「…行かないの?」
「おぉ、行く行く」
1人残された二宮。
そこに雪が降ってくる。
結局、二宮はタクシーには乗らなかった――。
三谷「はい、カット!」
観客から拍手が起こる。
三谷「いやいやいや、良かったですよ」
三谷は1人1人と握手をしていく。
「うわー」
三谷「いいじゃないですか。さすがですね」
「『さすがですね』ですか?(笑)」
三谷「うん、良かった」
「この上なく緊張しましたよ」
《笑》
「貴重な体験だよね」
「このね、キッカケとかがね」
「そうね」
「誰だっけな?みたいな。あるじゃん。ま、多分どのシーンに関しても大野さんのキッカケは多分無かったですね」
《笑》
「無かったね(笑)」
三谷が去ったあと、6人による反省会。
「いやー、なんかさ」
「凄かったね」
「最後の最後に真面目にやったのって初めてなんじゃない?」
《笑》
「いや、やっぱさ、お客さんとかも凄いんだね。絶対笑わないでって言ったら笑わないんだね」
《笑》
「だってさ、リーダーが出てきてあのサングラス、笑うでしょ、普通(笑)」
《笑》
「俺だったら笑ってるわ(笑)」
「俺も笑うもん、コレ」
「裏でかけてるの見たとき、暫く笑い止まらなかったもん」
《笑》
「爆笑してたね、そういえば」
「人の顔を見るなり腹抱えて笑ってくんだよ!」
《笑》
そして大野は再びサングラスをかける。
「やっぱりアレなんだね。やっぱりmihimaru GTに似てるよね」
《笑》
「似てる似てる」
「なんやかんやね」
「もう間もなく差し込まれる次週予告も真面目であってほしいよね」
《笑》
「そういうことね」
「このあとなんか“ペローン”ってさ、差し込まれたらもう」
《笑》
「あんまり嵐知らなくて今日初めて見た人とかびっくりしちゃうよね」
「あんま変な印象を与えたくないね」
「高低差ありすぎて耳キーンなるわ!状態だよね」
《笑》
演技だってお手のもの!