優しさにつけ込んだ
とにかく俺はムシャクシャしていた。
本気で好きで付き合っていた彼女の存在が週刊誌に載せられ事務所に無理矢理別れさせられたのだ。
別れてからも暫くは吹っ切れないでいた。自慢じゃないがそれなりにモテてそれなりに彼女もいた。だけど今回は違った。こんなにも人を好きになったのは初めてだった。
だからコンサートでソロを歌っているときも彼女のことを思い出して泣いたりしちゃって。女々しいけど、それだけ本気だった。
「ニノ、食べないの?」
相葉さんが心配そうに顔を覗く。
全く手をつけていないロケ弁が寂しそうに机の上に置かれている。なんでお前が寂しそうなんだよ、ホントに寂しいのは俺だっつーの。
「最近ずっと食べてねぇじゃん」
「体壊すよ?」
いいよ、それでも。そうすることで彼女がまた俺の元に戻ってきてくれるなら。
「‥無理しちゃだめだよ」
「うん。みんなありがと」
みんなが心配してくれてることはわかってる。
あの日以来食欲も無くて、殆ど何も食べてない。あ、潤くんに栄養ドリンクは飲まされた。翔ちゃんも俺の大好物の某有名店のハンバーグ弁当を買ってきてくれて、少し食べたっけ。
それでも心にぽっかり空いた穴は埋まらなくて。
「ねぇ、今日ってこの仕事で終わり?」
「そうだけど」
「じゃあさ、ニノん家行っていい?」
「なんで?」
「この前みんなで行ったときにイヤリング忘れたっぽいから取りに行きたくて」
正直今は仕事以外は一人になりたかった。みんなのことは大好きだ。だけどどうしようもない喪失感を埋めることはできないでしょ?それができるのは彼女だけだもん。もう無理なんだろうけど。
だからいくら芽依でも家に来られるのはちょっと嫌だったけど、忘れ物なら仕方ない。俺が探して持って来てもいいんだけど、それも面倒だから。
「わかった」とだけ伝えてソファにうつ伏せになった。背中越しに5つの心配そうな視線を感じた。
家に着くと芽依はテレビの側に跪いてイヤリングを探し始めた。暫くすると「あった!」と声が聞こえてきた。
部屋着に着替え終わりリビングに戻ると、芽依は棚の上に飾ってある写真を見ていた。もちろん彼女とのやつね。
俺が声をかけると焦って振り向いた。
「あったの?」
「うん」
「良かったじゃん」
「‥なんかお腹すいちゃった。ご飯食べてっていい?」
「は?」
「自分で作るからさ」
だんだん腹立ってきた。コイツ今の俺の状況わかってんの?一人にしてほしいってなんでわかんないわけ?他のメンバーはみんなわかってくれてて、そっとしといてくれるのに。
「そういう問題じゃねぇんだってば。悪いけどマジで帰ってくんない?今お前の相手する余裕ないんだわ」
「今のニノを一人にできない」
「でも俺は一人にしてほしい」
「やだ」
「いい加減怒るよ?」
「それでも、ニノをこのままにしちゃいけないと思う。誰かが救ってあげなきゃ」
ジッと睨むと負けじと大きな瞳が睨み返してくる。
マジでいい加減にしてほしい。コイツ面倒くさい。俺のイライラはピークに達した。
芽依の手首を掴み壁に押し付ける。少し怯えた表情で俺を見上げる。
「じゃあ聞くけど、お前に何ができんの?」
「‥‥わかんない」
「は?わかんねぇのに偉そうなこと言ってんじゃねぇよ!」
「でも!!私にできることだったら、何でもしてあげたい」
強い意志の籠もった瞳に見つめられて思わず視線をそらす。というより、芽依が真っ直ぐすぎて見れなかった。今の俺には眩しすぎた。
このとき、狡い俺はある考えに至った。
「じゃあお前さ、ヤらせてくれんの?」
こう言えば、諦めて帰ると思った。芽依は簡単にカラダを許したりしない。ましてや彼氏でもない俺になんて絶対。だからこの言葉を選んだ。
泣いて帰るかもしれない。でもきっと芽依は優しいから明日一言謝れば許してくれる。
俺の中でシナリオは出来上がっていた。
「‥それでニノは救われるの?」
「‥‥え?あ、うん」
「だったらいいよ」
作りあげたシナリオがビリビリと破られていく。
いやいやいや。そんな簡単に。何コイツ、意味わかってんの?セックスするってことだよ?
それとも、俺をなめてんの?どうせヤられないって思ってんの?
‥ふざけんな。
芽依の手を引いてベッドルームへと行き、すぐに押し倒してキスをする。
お前がその気なら、俺もノってやる。後悔すればいいよ、俺をなめてかかったこと。
「俺今すっげぇイライラしてるから」
本当はわかってた。芽依は優しさで俺にカラダを許してくれたんだって。それ以外の感情はないんだって。俺をなめてるんじゃなく、心配してくれてるんだって。
でも俺は気付かないフリをして無我夢中で芽依を抱いた。自分の欲望のためだけに。
俺を支配している悲しみ、憎しみ、怒りを全部ぶつけた。芽依を壊してしまうことで、穴が埋められる気がしたんだ。そんなわけないのに。
芽依は泣いていた。でもそれにも気付かないフリをした。
優しさにつけ込んだ
(狡いとわかっていても、芽依の優しさを利用したかった)
本気で好きで付き合っていた彼女の存在が週刊誌に載せられ事務所に無理矢理別れさせられたのだ。
別れてからも暫くは吹っ切れないでいた。自慢じゃないがそれなりにモテてそれなりに彼女もいた。だけど今回は違った。こんなにも人を好きになったのは初めてだった。
だからコンサートでソロを歌っているときも彼女のことを思い出して泣いたりしちゃって。女々しいけど、それだけ本気だった。
「ニノ、食べないの?」
相葉さんが心配そうに顔を覗く。
全く手をつけていないロケ弁が寂しそうに机の上に置かれている。なんでお前が寂しそうなんだよ、ホントに寂しいのは俺だっつーの。
「最近ずっと食べてねぇじゃん」
「体壊すよ?」
いいよ、それでも。そうすることで彼女がまた俺の元に戻ってきてくれるなら。
「‥無理しちゃだめだよ」
「うん。みんなありがと」
みんなが心配してくれてることはわかってる。
あの日以来食欲も無くて、殆ど何も食べてない。あ、潤くんに栄養ドリンクは飲まされた。翔ちゃんも俺の大好物の某有名店のハンバーグ弁当を買ってきてくれて、少し食べたっけ。
それでも心にぽっかり空いた穴は埋まらなくて。
「ねぇ、今日ってこの仕事で終わり?」
「そうだけど」
「じゃあさ、ニノん家行っていい?」
「なんで?」
「この前みんなで行ったときにイヤリング忘れたっぽいから取りに行きたくて」
正直今は仕事以外は一人になりたかった。みんなのことは大好きだ。だけどどうしようもない喪失感を埋めることはできないでしょ?それができるのは彼女だけだもん。もう無理なんだろうけど。
だからいくら芽依でも家に来られるのはちょっと嫌だったけど、忘れ物なら仕方ない。俺が探して持って来てもいいんだけど、それも面倒だから。
「わかった」とだけ伝えてソファにうつ伏せになった。背中越しに5つの心配そうな視線を感じた。
家に着くと芽依はテレビの側に跪いてイヤリングを探し始めた。暫くすると「あった!」と声が聞こえてきた。
部屋着に着替え終わりリビングに戻ると、芽依は棚の上に飾ってある写真を見ていた。もちろん彼女とのやつね。
俺が声をかけると焦って振り向いた。
「あったの?」
「うん」
「良かったじゃん」
「‥なんかお腹すいちゃった。ご飯食べてっていい?」
「は?」
「自分で作るからさ」
だんだん腹立ってきた。コイツ今の俺の状況わかってんの?一人にしてほしいってなんでわかんないわけ?他のメンバーはみんなわかってくれてて、そっとしといてくれるのに。
「そういう問題じゃねぇんだってば。悪いけどマジで帰ってくんない?今お前の相手する余裕ないんだわ」
「今のニノを一人にできない」
「でも俺は一人にしてほしい」
「やだ」
「いい加減怒るよ?」
「それでも、ニノをこのままにしちゃいけないと思う。誰かが救ってあげなきゃ」
ジッと睨むと負けじと大きな瞳が睨み返してくる。
マジでいい加減にしてほしい。コイツ面倒くさい。俺のイライラはピークに達した。
芽依の手首を掴み壁に押し付ける。少し怯えた表情で俺を見上げる。
「じゃあ聞くけど、お前に何ができんの?」
「‥‥わかんない」
「は?わかんねぇのに偉そうなこと言ってんじゃねぇよ!」
「でも!!私にできることだったら、何でもしてあげたい」
強い意志の籠もった瞳に見つめられて思わず視線をそらす。というより、芽依が真っ直ぐすぎて見れなかった。今の俺には眩しすぎた。
このとき、狡い俺はある考えに至った。
「じゃあお前さ、ヤらせてくれんの?」
こう言えば、諦めて帰ると思った。芽依は簡単にカラダを許したりしない。ましてや彼氏でもない俺になんて絶対。だからこの言葉を選んだ。
泣いて帰るかもしれない。でもきっと芽依は優しいから明日一言謝れば許してくれる。
俺の中でシナリオは出来上がっていた。
「‥それでニノは救われるの?」
「‥‥え?あ、うん」
「だったらいいよ」
作りあげたシナリオがビリビリと破られていく。
いやいやいや。そんな簡単に。何コイツ、意味わかってんの?セックスするってことだよ?
それとも、俺をなめてんの?どうせヤられないって思ってんの?
‥ふざけんな。
芽依の手を引いてベッドルームへと行き、すぐに押し倒してキスをする。
お前がその気なら、俺もノってやる。後悔すればいいよ、俺をなめてかかったこと。
「俺今すっげぇイライラしてるから」
本当はわかってた。芽依は優しさで俺にカラダを許してくれたんだって。それ以外の感情はないんだって。俺をなめてるんじゃなく、心配してくれてるんだって。
でも俺は気付かないフリをして無我夢中で芽依を抱いた。自分の欲望のためだけに。
俺を支配している悲しみ、憎しみ、怒りを全部ぶつけた。芽依を壊してしまうことで、穴が埋められる気がしたんだ。そんなわけないのに。
芽依は泣いていた。でもそれにも気付かないフリをした。
優しさにつけ込んだ
(狡いとわかっていても、芽依の優しさを利用したかった)