会いたいってメールしてみたけど、俺と違って今大忙しの彼女からは予想通りの返事が返ってきた。あーあ、なんか虚しい。

付き合ってるわけでもないし、芽依にとったら俺なんてただの友達だろうけど、それでも俺は、芽依に会いたい。



気付けば4本目の煙草に手をつけていた。

コンコン、と窓をノックされ、煙草をくわえたまま顔を向ける。


「…何してんの」



ずっと会いたかったやつがそこに立っていた。



「や、だって会いたいっつったじゃん」

「…今日は遅くなるから無理って言わなかったっけ」

「聞いたけど、俺が会いたいから来た」


時刻は深夜2時。
こんな時間まで仕事だったという芽依は、サングラスをしているから顔は見えないものの、なんとなく呆れているように感じる。


このまま外で喋ってるわけにもいかないので(撮られたりしたら困るし)、芽依は家にあげてくれた。



常識的に考えてこんな時間に訪ねるなんておかしいんだろうけど、仕事上あんまり気にならなくなってきた。芽依は若干迷惑がっているけど、なんだかんだでお茶まで出してくれる。


「最近忙しそうだな」

「お陰様で」

「今度ドラマやるんだろ?ますます忙しくなるんじゃね?」

「うーん、まあでも、コンサートと被らないだけマシかなあ」


何年前だったか、ドラマもやって映画の撮影もあって、更にコンサート期間が被った芽依がぶっ倒れた。働きすぎ、寝不足、疲労が溜まって。

芽依は自分から弱音を吐いたりしないけど、普通に考えてそんな生活無理に決まってる。俺でも多分倒れる。ましてや芽依は女で、男と比べたら体力だって無いのに。

そのときほどじゃないけど、目の前にいる芽依も相当疲れが溜まってるのが手に取るようにわかる。休ませてあげるためにここで帰るのが紳士なんだろうけど(…紳士だったらそもそもこんな時間に訪ねてこないか)、俺は生憎、紳士ではない。自己中だけど、会いたいやつには会いたいときに会いに行く。

いや、でもさすがに何も理由無いときは遠慮するよ、俺でも。



「…あのさ、」

「んー?」

「今の俺って…どう思う?」


ゆらゆら揺れる水面を見つめる。そこに映る自分の顔はなんとも情けなくて、悔しいから目を背けた。

かといって芽依の顔を見れるわけもなく、らしくもないけど俯く。



「全く輝いてないし、かっこよくもない」

「…っ、」


グサッとくる。これでも仁くん、ガラスのハートなんだけど。


「――とでも言ってほしいの?」

「へ」

「人の意見じゃなくて、自分がどう思うかじゃない?」


ゆっくり顔を上げれば、大きな2つの黒目が俺を捕らえて離さないでいる。


「仁は後悔してんの?ソロになって」

「…全くしてないっつったら嘘になるけど、後悔よりも他のもんがデカい」

「じゃあそれでいいじゃん」



ネットでは“赤西仁がKAT-TUNの勢いを落とした”なんて言われる始末で。確かにデビューしてノリにノってる時に留学したのは俺だし、そう言われても仕方ないんだけど。
でも俺だって、たった一度の人生だし、やりたいことやって我慢はしたくなかった。

他の5人には迷惑掛けっぱなしだけど、それなりに付き合いも長いから、俺が頑固なのもわかってくれてて、今の路線になることを許してくれた。

申し訳ない気持ちもあるけど、夢だった海外公演をやらせてもらえて俺は幸せだ。


「仁がそんなんだと、Kさん達が可哀想じゃん」

「Kさんってカメのこと?」

「他に誰がいんのさ」



俺のほうが2年も長く生きてるのに、どうも芽依のほうが考え方が大人だ。
いや、普段の精神年齢は低いほうなはずなのに、こういう真剣な相談事のときはびっくりするくらい大人な意見を言う。

まあ、だから俺は芽依を頼っちゃうんだけど。



「ほら、私明日も仕事だから、解決したなら帰って」

「え、泊まる気満々なんだけど」

「いやいや、帰ってほしいんですけど」

「なんでだよ!ぴぃとか時々泊まってんだろ?」

「そんな泊まらないし、智久は何もしてこないもん」

「所詮元彼だろ」

「〜っ!でも少なくとも仁よりは安全だもん!」

「人を猛獣みたいに言うなよ!」

「家入って早々、襲ってきたのは誰よ!」

「だーかーらー、それはあんとき謝ったじゃん!」





曇りのち笑顔

(芽依に話したあとは、必ず笑顔になってる)