親友のアシスト
世間では、芽依は可愛いくて美人でちょっと天然って感じのイメージを持たれていて、私も“憧れの女優No.1”に選んでもらっちゃったりして。
だから、私達がこんなこじんまりとした居酒屋にいると知ったら、みんな驚くだろう。
元々私の行きつけの場所で、芽依を誘ってみたら気に入ってくれて店長とも仲良くなって、それからはここで集まることが多くなった。一応個室もあるし、時々店長もサービスしてくれるし。
「2人が来るの久しぶりだなあ」
「そうだっけ」
「おう。テレビを通してはよく見かけたけどな」
特にお前、と芽依の頭を小突く店長を見ると自然と笑みが零れる。なんだかんだであの人、芽依のこと超可愛がってるから。
いつものように個室に案内されて、お酒と適当なつまみを頼む。
「そういえばCM見たよ」
「CM?」
「うん。『クビよ、クビクビクビー!』」
ああ、ドラマか。
で、今のは私の真似なの?もしかしなくても、確実にそうだ。演技は上手いくせに相変わらず物真似のクオリティーはびっくりするほど低い。
しかもそのドラマの醍醐味といえば、私じゃなく翔くんの『お嬢様の目は節穴でございますか?』じゃないんだろうか。
『クビよ、クビクビクビー!』をセレクトする辺り、芽依らしいっちゃ芽依らしいけど。
「撮影進んでる?」
「うん、順調。そっちは?」
「イイカンジッ!」
芽依の似てない物真似パート2。多分今のはローラ。
普段からおかしいけど、今日は一段とおかしい。
ここでとりあえず、おかしい点を挙げてみようと思う。
一、お互いドラマの撮影が始まって忙しくなったっていうのに、飲みに行きたいと誘ってきた。しかも、滅多に自分からは誘わないくせに。
二、まだ素面だというのに、テンションが変。
三、化粧でだいぶ誤魔化してるけど、目が腫れてる。
伊達に私も芽依の親友やってないから、思い当たる節が無いわけじゃない。
でも、まだそのときじゃないから。
芽依が限界に達したら、支えてあげるの。
「翔ちゃんとは仲良くなった?」
「まあ、それなりにって感じ」
「そっかあ」
そこでタイミング良く、頼んでいたものが運ばれてきた。
お酒が弱い芽依は珍しくビールで、少し心配になる。けどまあ、そのときはそのときでいっか。
酔ったら楽になることだってあるし。
それよりも。
芽依はなんとも思わないんだろうか。…私と翔くんのことについて。
週刊誌やネット上では私は共演者キラーと呼ばれてるらしく、今回のドラマで共演する翔くんとも早速噂が立った。
自分の股の緩さは自覚しているから、そういうこと書かれても仕方ないと割り切っている。
それに、“今のところ”は翔くんとそんな関係になる予定は無い。
タイプじゃないわけじゃない。かっこいいし優しいし頭良いし、素敵だと思う。
だけど翔くんは多分、芽依のことをただのメンバーだと思っていない。公共の場では仲の良いメンバーって感じだけど、前に番組にお邪魔したときの裏での様子を見てなんとなく察した。…おそらくそれは翔くんだけじゃないんだろうけど。そしてそのことに芽依は気付いていない。
芽依はモテるから彼氏も結構いたりして、その人達も十分かっこいいんだけど、私としては本当に芽依のことを理解してくれている嵐の人がいいなって思っちゃうわけ。
それで、今回たまたま共演することになった翔くんを応援する気持ちが強まった。
翔くんは私が気付いてるなんて思いもしてないだろうけど。
まあでも、芽依が他の人を好きになったらそっちを応援するけどね。あくまでも私は芽依の味方だから。
2杯目の途中くらいから、芽依の様子がおかしくなった。
いつもなら行動がスローになって甘えたになるだけなのに、今は少し泣きそうだ。
もうそろそろ、かな。
「…景子ぉ」
「ん?どうした?」
できるだけ優しいトーンで聞いてあげる。
すると芽依は安心したのか、ポロッと涙を流して口を開いた。
「理くんとね、別れたんだあ」
だろうと思った。
とは言わずに、そっかとだけ返す。
「私、理くんを苦しめてたみたい」
「なんで?」
「色々と我慢してたんだって…」
それ以上詳しいことは言わなかったけど、私には十分伝わった。
多分、芽依も自分で「私のことが好きすぎて嫉妬しちゃってたみたい」なんて言えないんだろう。
私は芽依をそういう目線で見たことないからわかんないけど、彼女には人を魅了する何かがあるんだと思う。
実際に私の業界の友達でも、芽依にハマった人を何人も見てきた。
だから付き合っちゃうと更に欲が出てきちゃうんだろうな。私も恋愛の価値観は芽依寄りだから、少し理解し難いけど。
だからこそ私は、芽依の全てを理解してくれてるであろう嵐の5人(しつこいようだけど私は翔くんを推す)がいいと思うんだけど、なあ。
「ねえ、芽依」
「ん?」
「嵐の誰かと付き合うって選択肢は無いの?」
サラダをひとくち口に入れて、少し考えている様子。
「…んー、なくはないけど、考えたことない」
「……じゃあさ、もし私が翔くんを好きになったら応援してくれる?」
「え、」
大きな目がだんだん見開いてゆく。
でもそれはすぐに戻って、にっこりと笑ってこう言った。
「もちろんするよ。景子と翔ちゃんが付き合ったら私も嬉しいし」
…どんまい、翔くん。
いくら芽依が演技上手いといっても、これは嘘には見えないや。
まあ、今すぐどうにかなるわけでもないし。気長に待とう。
結局、3杯飲んだところで芽依は潰れた。芽依にしては頑張ったほうだ。
そんなに弱くない私はまだまだ飲めるんだけど、さすがにこんな状態の人と飲む気にはなれない。
…とりあえず、私ができるのはここまで。ここからはあなた次第でどうにでもなると思うよ、翔くん。
「あ、もしもし、翔くん?北川ですけど―――」
親友のアシスト
(私はただ、芽依に幸せになってほしいだけ)
だから、私達がこんなこじんまりとした居酒屋にいると知ったら、みんな驚くだろう。
元々私の行きつけの場所で、芽依を誘ってみたら気に入ってくれて店長とも仲良くなって、それからはここで集まることが多くなった。一応個室もあるし、時々店長もサービスしてくれるし。
「2人が来るの久しぶりだなあ」
「そうだっけ」
「おう。テレビを通してはよく見かけたけどな」
特にお前、と芽依の頭を小突く店長を見ると自然と笑みが零れる。なんだかんだであの人、芽依のこと超可愛がってるから。
いつものように個室に案内されて、お酒と適当なつまみを頼む。
「そういえばCM見たよ」
「CM?」
「うん。『クビよ、クビクビクビー!』」
ああ、ドラマか。
で、今のは私の真似なの?もしかしなくても、確実にそうだ。演技は上手いくせに相変わらず物真似のクオリティーはびっくりするほど低い。
しかもそのドラマの醍醐味といえば、私じゃなく翔くんの『お嬢様の目は節穴でございますか?』じゃないんだろうか。
『クビよ、クビクビクビー!』をセレクトする辺り、芽依らしいっちゃ芽依らしいけど。
「撮影進んでる?」
「うん、順調。そっちは?」
「イイカンジッ!」
芽依の似てない物真似パート2。多分今のはローラ。
普段からおかしいけど、今日は一段とおかしい。
ここでとりあえず、おかしい点を挙げてみようと思う。
一、お互いドラマの撮影が始まって忙しくなったっていうのに、飲みに行きたいと誘ってきた。しかも、滅多に自分からは誘わないくせに。
二、まだ素面だというのに、テンションが変。
三、化粧でだいぶ誤魔化してるけど、目が腫れてる。
伊達に私も芽依の親友やってないから、思い当たる節が無いわけじゃない。
でも、まだそのときじゃないから。
芽依が限界に達したら、支えてあげるの。
「翔ちゃんとは仲良くなった?」
「まあ、それなりにって感じ」
「そっかあ」
そこでタイミング良く、頼んでいたものが運ばれてきた。
お酒が弱い芽依は珍しくビールで、少し心配になる。けどまあ、そのときはそのときでいっか。
酔ったら楽になることだってあるし。
それよりも。
芽依はなんとも思わないんだろうか。…私と翔くんのことについて。
週刊誌やネット上では私は共演者キラーと呼ばれてるらしく、今回のドラマで共演する翔くんとも早速噂が立った。
自分の股の緩さは自覚しているから、そういうこと書かれても仕方ないと割り切っている。
それに、“今のところ”は翔くんとそんな関係になる予定は無い。
タイプじゃないわけじゃない。かっこいいし優しいし頭良いし、素敵だと思う。
だけど翔くんは多分、芽依のことをただのメンバーだと思っていない。公共の場では仲の良いメンバーって感じだけど、前に番組にお邪魔したときの裏での様子を見てなんとなく察した。…おそらくそれは翔くんだけじゃないんだろうけど。そしてそのことに芽依は気付いていない。
芽依はモテるから彼氏も結構いたりして、その人達も十分かっこいいんだけど、私としては本当に芽依のことを理解してくれている嵐の人がいいなって思っちゃうわけ。
それで、今回たまたま共演することになった翔くんを応援する気持ちが強まった。
翔くんは私が気付いてるなんて思いもしてないだろうけど。
まあでも、芽依が他の人を好きになったらそっちを応援するけどね。あくまでも私は芽依の味方だから。
2杯目の途中くらいから、芽依の様子がおかしくなった。
いつもなら行動がスローになって甘えたになるだけなのに、今は少し泣きそうだ。
もうそろそろ、かな。
「…景子ぉ」
「ん?どうした?」
できるだけ優しいトーンで聞いてあげる。
すると芽依は安心したのか、ポロッと涙を流して口を開いた。
「理くんとね、別れたんだあ」
だろうと思った。
とは言わずに、そっかとだけ返す。
「私、理くんを苦しめてたみたい」
「なんで?」
「色々と我慢してたんだって…」
それ以上詳しいことは言わなかったけど、私には十分伝わった。
多分、芽依も自分で「私のことが好きすぎて嫉妬しちゃってたみたい」なんて言えないんだろう。
私は芽依をそういう目線で見たことないからわかんないけど、彼女には人を魅了する何かがあるんだと思う。
実際に私の業界の友達でも、芽依にハマった人を何人も見てきた。
だから付き合っちゃうと更に欲が出てきちゃうんだろうな。私も恋愛の価値観は芽依寄りだから、少し理解し難いけど。
だからこそ私は、芽依の全てを理解してくれてるであろう嵐の5人(しつこいようだけど私は翔くんを推す)がいいと思うんだけど、なあ。
「ねえ、芽依」
「ん?」
「嵐の誰かと付き合うって選択肢は無いの?」
サラダをひとくち口に入れて、少し考えている様子。
「…んー、なくはないけど、考えたことない」
「……じゃあさ、もし私が翔くんを好きになったら応援してくれる?」
「え、」
大きな目がだんだん見開いてゆく。
でもそれはすぐに戻って、にっこりと笑ってこう言った。
「もちろんするよ。景子と翔ちゃんが付き合ったら私も嬉しいし」
…どんまい、翔くん。
いくら芽依が演技上手いといっても、これは嘘には見えないや。
まあ、今すぐどうにかなるわけでもないし。気長に待とう。
結局、3杯飲んだところで芽依は潰れた。芽依にしては頑張ったほうだ。
そんなに弱くない私はまだまだ飲めるんだけど、さすがにこんな状態の人と飲む気にはなれない。
…とりあえず、私ができるのはここまで。ここからはあなた次第でどうにでもなると思うよ、翔くん。
「あ、もしもし、翔くん?北川ですけど―――」
親友のアシスト
(私はただ、芽依に幸せになってほしいだけ)