おはようございまーす


やっと来た。

翔くんが来るのを今か今かと待っていたあたしは、すぐさま彼に駆け寄った。

あたしに気付き少し焦っている様子。


「おはよう、翔くん」

お、おはよ


…何かあったな。


近くにはスタッフさんや共演者の方もいたから、翔くんの腕を引っ張って隅のほうに移動する。


え、ちょ、景子ちゃん!?

「…昨日、どうだったの?」


昨日芽依を迎えに来たときと服は違うから、朝帰りってわけでは無さそう。
だけど明らかに動揺しているのを見ると、ただ家まで運んだだけとは考えにくい。


べ、別にどうもしないよ。ただベッドに運んで帰ってきた


目を泳がせながらそんなこと言っても説得力無いですよ、櫻井さん。


疑いの目を向けるあたしに、とうとう観念したのか渋々といった表情で口を開いた。


…最後までヤっちゃいました

「え、ヤったってつまり、」

うん、まあ、そういうこと

「嘘!やればできるじゃん!もしかしたら何もしないんじゃないかって心配だったんだよね」


芽依から翔ちゃんはヘタレだよって聞いてたしね。


…何も無かったほうが良かったよ

「は?」
何も無いほうが、良かった


翔くんは、撫で肩を更に情けなく垂らしている。


お互いが割り切ってるならそういうことしたっていいと思う。実際俺だってセフレいた時期あるし

「うん」

でも、芽依はそういうことしていい子じゃない。ほら、アイツすげえ純粋っつうか

「言いたいことはなんとなくわかるけど」


普通、この業界に入ったら、色んな人と関係を持つようになる。彼氏じゃなくてもお互いのストレスの捌け口だったり、性欲処理だったり。
一般人からすれば理解できないようなことも、この世界では普通のこと。

でも芽依はそんなこと無かった。
何か事情が無い限り、彼氏以外とキスやエッチは絶対にしない。セフレだって作ったこと無いと思う。

幼い頃から芸能界に足を突っ込んでいるというのに、“自分”を持っている。
そんな芽依を、翔くんは“純粋”だと言うのだ。


だから俺はこのことを芽依には言わない

「……」

景子ちゃんも芽依には――

「わかった、言わない」


あたしがそう言い切れば、ホッとした表情でありがとうと翔くんは言った。


「でも、」

ん?

「これを言ったところで、芽依と翔くんの関係が悪くなることは無いと思うけど」

……
「芽依が心広いの、翔くんだって知ってるでしょ?」

…うん

「それに、そんな簡単に壊れる絆じゃないでしょ、嵐って」


恋愛感情かは別として、芽依は嵐のみんなが大好きだ。

2人で飲んでたときも、5人がいなかったらやっていけないって言ってたし。


「エッチ1つくらいでどうにかなっちゃうなら、ここまでやってこれないでしょ」

…ははっ、そうかも


ようやく笑顔を見せた翔くん。


ちょうどそのとき、撮影を開始すると声をかけられた。
スタジオの準備ができたみたいだ。


翔くんはニヤリと笑ってあたしを見る。


お嬢様、参りましょう


負けじと微笑み返す。


「…景山のくせに生意気」





報告会

(てか俺って景子ちゃんに芽依が好きって言ったっけ?)

(聞いてないけど見ててわかった)

(えぇ!俺ってそんなわかりやすい!?)

(どうだろう。…まあ、あたしの目は節穴じゃないですから)