とりあえず、隼士のヤツ、後でシメる。

…っていうのは建て前。ホントは感謝してたりするんだ。

自分から別れを切り出したというのに、そう簡単には忘れられなくて。テレビを点けて芽依が出てたりすると必ず観ちゃうし。無意識のうちにアドレス帳から芽依の電話番号呼び出してるし。
完璧、未練たらたらだよ。



…んぅー


助手席で眠っていた芽依がゆっくりと目を開けた。

相変わらず寝起きが可愛い。トロンとした目で前をぼーっと見つめている。

無理な話だけど、この姿、他のヤツには見せたくないな。


「起きた?」


視線はそのままで声をかけると、俺の車だとわかったんだろう、目をくりんと見開いてこっちを向いた。理くん、と名前を呟かれるだけで、胸の奥がギュッと掴まれたような感覚に陥った。……俺は女子高生かっての。


「隼士と裕典と飲んでて潰れたんだよ。覚えてる?」

…隼士がうざかったのは覚えてる

「ははっ!確かにアイツ、テンション高かったわ」



なんとなく、ギクシャクしているように感じるのは気のせいだろうか。

――当たり前か。こうして会うのは、関係を終えたあの日以来なんだから。いや、会うどころかメールさえもしてなかった。
まあ、俺はドラマやレギュラー番組、雑誌などでしょっちゅう芽依の姿を見かけてたから、久しぶりな感じはしないんだけど。



…どうして理くんが?


そうか、芽依は俺が隼士に呼び出されたことを知らないんだ。

その経緯を説明すれば、そっかと素っ気なく返事をした芽依。



自分のことを振った俺に対して怒っているのだろうか。

…いや、違うな。
俺が“元彼”だからか。

俺は芽依の1番になりたかった。けど、超えられない人が何人もいて、それは無理だとわかった。だから俺は逃げた。

その結果、こうして芽依の中での俺は見事に順位を下げたってわけだ。


正直、別れても俺はそれなりの位置には居られると思っていた。一度は愛した男だし、っていう甘い考え。

いや、でも実際、芽依は今までの元彼と連絡をとったり、出掛けたりしている。
それが俺に無いってことは、
――相当嫌われたってことだ。



…じゃあさ、どうすれば良かった?

あのまま付き合ってたら、束縛して芽依を傷つけてしまいそうで。それは絶対に嫌だった。だから別れを選ぶしか無かったんだ。





結局、芽依の家に着くまで、お互いにずっと無言だった。

あの頃の俺らには、もう戻れない。






別れた代償