はぁ?振ったぁ!?


若干の呆れも含みながらそう言うと、芽依は控えめに頷いた。


「それはこの業界の人?」

「…それもいるし、普通の会社に勤めてる人も」


一般人はどうせ知らない人だからいいとして、同じ業界の人が誰なのか、正直気になるところ。
でもあんまりほじくり返すのも可哀想だし、芽依も言いにくいだろうから、あえて聞かないでおくことにしよう。


芽依にリップを塗っているメイクさん(これがなかなかの美人)も一緒になって話を聞いてるようだ。勿体無い、とぼそりと呟いたのが聞こえた。


「まあ芽依ちゃんはモテるから一人や二人くらいどうってことないんだろうけどさ」

「そんなことないよ」

「だってよく聞くもん、渡辺芽依のモテ伝説」

「えー、何それ」

「私達の間では芽依ちゃんがモテるのは有名だよ」

「スタッフ間にも広まってるって相当だね」


さすが、の一言に尽きる。


「他に好きな人でもいるの?」

「…いない、けど」

「ほらぁ!じゃあ付き合えばいいのに」


鏡越しに芽依と目が合う。

元々良い土台に、更にプロのメイクさんに化粧してもらったから、女のあたしでも見惚れてしまうくらい綺麗だ。
こりゃモテるわ、と再確認。


「芽依今いくつよ?25でしょ?」

「そうだけど…」

「まだ若いんだから、少しくらい遊びなよ!ねぇ?」

「そうねぇ〜」


メイクさんも賛同するように頷くと、芽依は「うーん」と唸り始めた。

“好きになった人としか付き合わない”
この芽依のポリシーを否定したいわけじゃない。

そういう考え方が出来るのは凄いと思うし、格好いいとも思う。少なくともあたしは適当に付き合ってきたりしたから。


でも、勿体無いとも思うんだ。


「せっかくモテるんだからさ〜」

「由里子に言われたくないよ」

「今そういう話してるんじゃないでしょ」

「ハイ…」


ていうか、あたしなんかより芽依の方がモテまくりだっつーの!


「付き合ってみて好きになることだってあるんだよ?」

「んー」

「芽依のこと大事に想ってくれてる人と付き合ったら、絶対幸せだよ」

「……」

「無理にとは言わないけど、もう少し軽く考えてみなよ」



芽依が好きになる人だって十分素敵だけど、他にももっと素敵な人いるじゃん。いつだって芽依のこと大事に想ってくれてる人が。…誰とは言わないけどね。


少しの沈黙のあと、「…考えてみる」と芽依は小さな声で言った。


「あ、だからって彼氏彼氏にならないでよー?寂しいから」

「どうだろうね〜」

「嘘ぉ!そしたらあたし、芽依ん家まで押しかけてやるから!」

「ふふっ、超迷惑」


実際にそうなったら凄く寂しいけど、それだけハマるくらいの相手を見つけられるならいっか。

あ、でも一応あたしに紹介してもらわなきゃ困るけどね。
変なヤツなんかに芽依のこと任せらんないし!





吉高流恋愛論