「あー、やっぱ芽依ん家は落ち着くわ!」


と、我が物顔でソファーに座るのは人気女優の上戸彩である。

私の家で寛いでくれるのは嬉しい。だけど、さすがにスウェットで片手にビールって。


「よし、今日は飲もう!」

私明日朝から撮影だからそんな飲めませーん

「さすが嵐、忙しいねぇ」

嵐にも暇なのいるよ。ニノとかニノとかニノとか

「あはは!確かに最近ニノって個人の仕事あんま無いイメージ」


こういう比較的暇な期間が無いと、みんなやっていけないから。ニノだって大奥らへんの時期は殺人並の忙しさで、本当に大変そうだった。だから、羨ましいっていうよりは、休みがあって良かったって思う。

忙しいってことは有り難いことなんだけどね。やっぱりメンバーの体調の面を考えると、「有り難い」だけじゃ済ませなくなるんだ。



「そういえば聞いたよ」

ん?

「敬浩くんとヨリ戻したんでしょ?」

っ、!


彩が泊まりに来るってことで、多分この話題は出るだろうことはわかっていた。
わかっていたけどあまり触れたくなかった。


自分と同じ境遇になると共通点もたくさん出てきて分かり合える。それもあって、彩は私と敬浩のことを前から応援してくれていた。

でも、私は彩と違う。

彩はHIROさんと真剣に付き合ってるけど、果たして私もそうだろうか。
敬浩のことが好きだと、胸を張って言えるだろうか。



「わかってるよ」


飲み続けていたビールを机に置いて、彩は優しく笑う。


「敬浩くんに言われて流れで付き合ってるんでしょ?」

…何でわかったの?
「芽依見てればわかるよ」


そんなに顔に出ていたのか。演技はまだまだだな、私。


「でも、もう一つわかることがある」

…?

「敬浩くんのこと好きだって断言できないけど、芽依はちゃんと真剣に付き合ってる」


彩は私の手に自分のそれを重ね合わせた。


「そんなに後ろめたく感じなくていいんだよ」

……

「最初から好き同士で付き合うカップルばっかじゃないじゃん。付き合っていくうちに好きになれる」

……

「それに、もし好きになれなかったとしても誰も芽依を責めないよ。だって芽依はちゃんと敬浩くんと向き合ったんだもん」


彩の言葉がじんわりと身体に染み込んでゆく。


好意を寄せられるのは嬉しい。
けど、好きになる可能性が無いのに付き合うのは相手に失礼だから。“堅い女”と思われるかもしれないけど、どうせ傷付けてしまうなら早い方がいい。

そう思っていたからこそ、敬浩とヨリを戻したことが、自分の中でずっと引っ掛かっていた。


でも、彩がああ言ってくれたおかげで、なんだか楽になった気がする。
少し考えすぎだったのかも。



「ほら、明日も早いんでしょ?寝よ寝よ!」

飲みまくるんじゃなかったの?

「仕事に支障出させたら芽依のマネージャーに殺されるもん」

どんだけ凶暴なの、私のマネージャーは


空になった缶を流しに持っていく彩。その後ろ姿に小さくありがとうと呟いた。





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