3年生の爆豪勝己×普通科3年生の夢主






爆豪から告白された。

体育祭で1年次に優勝、2年次に準優勝したことなんかもあって、雄英じゃ有名な生徒の一人だと思う。
言っておくが俺は男で、もちろん爆豪も男で。爆豪は男が好きなの、と聞くと「たまたまてめェだっただけだ」と言った。

罰ゲームか何かかと思ったけど、そんなことするやつじゃないことはすぐに分かったので、俺は悩んだ末に、「爆豪のことよく知らないから、まずは友達から始めたい」と答えた。

そうして、爆豪と俺は友達になった。たまに会う度に挨拶と、わずかな時間で世間話をする。話せば話すほど、爆豪の強さと、ヒーローへの覚悟を見て、ああ本当に格好いい奴なんだと思った。こんな奴が、ただの普通科の自分と友達で良いのか、とも思っていた。

そう、俺と爆豪は友達だ。だから別に、爆豪がクラスの友達と話したりとかそんなこと、別に普通なのに。

気付いたら、食堂から教室へ向かうところだった爆豪に声をかけて、腕を引っ張って、人気のない校舎裏に来ていた。

「おい、何かあったんか」
「………」
「なァ、」
「ば、くごう、が好きなのは、俺じゃないの」

シン、とした空気に、遠くの喧騒がほんの少しだけ聞こえる。やってしまった。爆豪からしたら、勇気を出して告白して、なのに「友達から」っていう当たり障りのないもので返されて、そんな奴にこんなこと言われて、今更何を言ってるんだって感じだろうな。

爆豪の顔が見れなくて、自分のつま先を見る。勝手なこと言ってごめんって、今すぐ謝らないと。これからも宜しくって言わないと。

頭に浮かぶ言葉をうまく拾えずにいると、爆豪が静かな声で「こっち見ろや」と言ったので、反射的に顔を上げた。

「嫌なら殴れ」

え、と自分の口から言葉が漏れたのは一瞬で、気付いたら爆豪の顔が目の前にあった。すこし傾いて、目が閉じられて。まるで他人事のように、綺麗だと思った。
唇が触れる直前に後頭部にそっと手が添えられたけど、逞しい身体とは裏腹に拘束力のないそれに、胸がぎゅっとなった。

そっと唇が触れて、一瞬離れて、また触れる。息を止めてしまって苦しいのに、何故だかやめて欲しくない。

「ぷは、ッばくご、っん、……」
「……鼻で息しろや」

この行為の意味も意図も分からず、ただそれだけ呟かれて、また再開される。何度目かのくっついて離れてのとき、いつの間にか腰に爆豪の腕が回っていることに気付いて、一気に恥ずかしくなった。
角度を変えて何度も触れる爆豪は見るからに手馴れていて、大して俺はどんどん心臓の音が大きくなって、そろそろ死ぬかもしれない。

「ばく、ご、も、むり……」
「っは、……」

ようやく離れた頃には俺の少ない肺活量の限界は超えていて更に死にそうで、しかも離れる間際に俺の口の端を爆豪がぺろりと舐めたことで「んっ」とかいう気持ち悪い声が出て、より死にそうだ。

「嫌なら殴れっつったろ。意味分かってんのかよ」
「い、意味はアレだけど、嫌とかじゃな──……あ」

爆豪は眉間の皺はそのままに、少しだけ目を見開いた。ああもう死ぬ。忘れて、と言って後ろを向こうとすると、肩をがっしりと掴まれた。力が強い。さすがヒーロー科。

「どういう経緯か知らねェが、俺が他の奴と話してたんが気になったんだろ」
「それは……、そう、かも」
「言っとくが俺は、てめェとよく一緒にいる黒髪モブも短髪モブも気にいらねェし、てめェに告るモブ女のことも死ねと思ってんだよ」
「え、あ、そうなの……?」

というかそんなに俺の周りの人間のことまで知ってたのか、という驚きは声にならない。告白のことも、サポート科の女子からだからヒーロー科は無関係だし。

「俺のモンになれ」

でももう、いいか。キスのときは何ともないように見えたのに、今この瞬間、この言葉を言ったとき、微かに赤い頬ことに気が付いて、何もかもがどうでも良くなった。

俺が頷くやいなや、がばりと抱きしめられた。骨が折れるんじゃないかってくらい強かった。さすがヒーロー科。
煮るなり妬くなり好きにして


だけど痛いのは嫌で、「優しくして」というと頭をはたかれた。解せない。



2019.05.01