アニマルセラピー、という言葉は広く知れ渡っている。ざっくり言えば動物に触れることで人は癒される、というものだ。

ところで、A組イチの短気で怒りん坊である爆豪勝己は、とにかく苛立ちやすい性格だった。事あるごとに他人に突っかかり、性格の相性からか、相手によってはぶつかり口喧嘩、となることもしばしば。言動が粗暴なことは、もはやクラスどころか全校に知れ渡るほど。

そんな爆豪だが、幼馴染が二人いる。一人は緑谷出久、最近少しその関係は良い方向に傾いてはいるようだが、元は爆豪とは水と油かそれ以上に仲の悪い男子生徒。
もう一人はミョウジナマエ。今、風呂上がりにロビーのソファで眠りこけているところを、爆豪にキレられながら叩き起こされ、頭をタオルで吹かれている男子生徒。

その生徒には、外見的な特徴があった。頭にぴょこりと生えた耳、ゆらゆら揺れる尻尾。早い話が、個性はW猫W。

ドライヤーの風の音がロビーに響き、切島、瀬呂、上鳴がひょっこりとやってきた。爆豪がタオルドライを終えたミョウジの髪を、ドライヤーで丁寧に乾かしている。その優しい手つきに、一同は一瞬止まった。

「え、え?」
「ばくごー、……?」
「何してんだ……?」
「見りゃ分かんだろが、こいつ猫っ毛だから乾かして寝ねえと明日ややこしいことになんだよ!!」

そうじゃない、と3人は思ったが、それを口に出すことはやめた。つい緑谷と爆豪の組み合わせを認識しがちだが、この二人も幼馴染なのだ。時々かくん、と船をこぐミョウジは本当に今にも寝てしまいそうで、しかし爆豪は気にせずドライヤーを続ける。

「ミョウジって、こーやってみると本当に猫っぽいな〜」
「なー。男にしちゃ顔もカワイイ系だし、癒されるわー」
「なー爆豪、撫でていいか?」
「俺に聞くなや!!…………喉撫でっとマジで猫だぞコイツぁ」
「アドバイスまでくれんのかよ飼い主だな……」

髪を乾かしている爆豪は仕上げの工程なのか、ドライヤーが弱風に変わっているため、ミョウジのうとうととした顔が3人によく見える。切島は爆豪に言われた通り、喉のあたりをそっと撫でた。するとミョウジは、ゴロゴロと喉を鳴らして、気持ちよさそうに切島の手にすり寄った。
小さく「にゃ」と鳴いた声は、ほぼドライヤーの音でかき消されたが、仕草がとても意外だった切島は、顔を赤くしてサッと手を引っ込めた。

「えっちょっまっ、な、」
「……やばい変な扉開きそうで俺、触れねえ」
「俺も……」
「はぁ?どこがだよ」

爆豪はドライヤーを止めてコードをきっちりと巻くと、後ろからミョウジの喉を撫でた。切島が撫でた時より気持ちいいのか、ゴロゴロと喉が鳴るだけでなく、普段は発されることのない猫らしい声を出す。
そして喉と一緒に耳の付け根を撫で始めた爆豪に、3人はただただごくりと見つけ続けた。

「ん、んん、んにゃ……にゃう、んー……」
「……うん、俺そろそろ部屋戻るわ」
「っバクゴー、ミョウジマジでここで寝落ちそうだから、部屋運んでやれよ!な!俺ももう寝るから!」
「バクゴー、頼んだぞ!!」

3人が顔を赤くしながら立ち去るのを、眉間に皺を寄せたいつもの表情で見送った爆豪は、無防備にすり寄ってくるミョウジを一瞥してフンと口角を上げた。

「こんな触り方、まだまだ序の口だよなァ?」

まるで愛猫を抱き上げるようにして膝に乗せ、抱きしめて耳元で告げると、息がかかったくすぐったさから、ぴくりと肩を跳ねさせた。そして、するりと尻尾の付け根を撫でると、ミョウジはわかりやすくビクビクと刺激を拾った。それが快感であると気付いている爆豪は、ミョウジの身体を抑え、執拗にそこを攻めあげる。

「にぅ、ぅ、んん、ひァ……っ、なに、ッあ、かつ、き、?」
「やっと目ェ覚めたかよ、オラ」
「さ、さめた、覚めたからァ……っ、しっぽ、や、ァア……っ」
「ハッ、えっろい声」

手を止めると、ぐったりと爆豪に倒れ込み、フーッフーッと興奮と熱を逃すための呼吸を繰り返す。その間にも爆豪の手はいやらしくミョウジの尻を撫で、過敏に反応したW猫Wの耳元で囁く。

「最近シてなかったもんなァ。外から触られるだけでもンなトロトロになるほど気持ちいいんだから、ナカからWココW、俺のでゴリゴリされっと、ニャーニャー鳴いてヨガって止まんねえんだろうな?」
「……っ……」
「俺ァ補講で疲れてっし、ストレスも溜まってんだよ。アニマルセラピーとやらで慰めろや」
「……癒す、なら分かるけど、慰めるは絶対違うと思う……」
「変わんねーわ」

爆豪はミョウジの手を引き、ロビーを後にした。爆豪の部屋で、日付が変わってもなお抱かれ続けたミョウジは、爆豪が達するまでにも前や後ろや尻尾の性感帯を攻められて啼かされたので、翌朝は声が掠れ、リカバリーガールのお世話となった。

対して爆豪は、睡眠はやや不足しているにも関わらず、座学も演習も、とても調子が良かったという。
癒し癒され厭らしく

優しくするのも面倒見るのも、すべては獲物を食べるため

2019.05.03