※BLDかは微妙
※設定の都合上、夢主の名前は『蒼井 伊織(アオイ イオリ)』で固定(名前変換なし)
※サッカーオタクの夢主が動画配信で喋って投げ銭されてるだけ
※知識ガバガバなので何でも許せる方のみどうぞ
キリンチャレンジカップ
日本vsカタール
@埼玉スタジアム2002
得点者:
千切豹馬 12'
凪誠士郎 28'
糸師凛 35'
蜂楽廻 45'+2
糸師冴 51'
糸師凛 70'
潔世一 88'
:
《日本vsカタール 勝手に振り返り生配信》
《××月◯◯日 22時〜》
U-24サッカー日本代表、その親善試合が行われた翌日。某動画サイトに一人の動画投稿者のライブ配信が予告された。チャンネル名は『サッカーについての独り言チャンネル』、投稿者であり配信者の名前は『アオイ』。
代表戦があれば基本その2日後にその配信者による解説動画がアップされるが、稀に今回のように生配信という形で試合の感想を語る回がある。チャットと呼ばれる視聴者のコメントを時々拾ってくれるため、リアルタイムで交流できる唯一のチャンスであるそれは人気コンテンツで、チャンネル登録と配信通知をオンにしている動画視聴者たちはその時間に合わせて夕食や風呂を済ませるタイムスケジュールを立てた。
テレビに出るような有名人が解説するならともかく、一般人がただ喋るだけ。しかしその再生数は毎回10万回を軽く超え、チャンネルとしての総再生数は億を超えている。多くの登録者を獲得しており、数ヶ月前に『銀の盾が送られてきた』という内容の動画もアップロードされていた。
サッカーに特化した数あるチャンネルの中で何故、アオイの動画がそこまで再生されているのか。諸々あるが主な理由は、視聴者から睡眠時間を心配されるほどのサッカーファンぶりだということが挙げられる。彼の配信で話題に上がる内容は国も選手の知名度も問わず多岐に渡り、国内のJリーグはもちろんのことプレミアリーグ、ブンデスリーガ、リーガエスパニョーラなど欧州サッカーもほぼほぼ全て網羅している。
その膨大な知識の海から繰り出される話の情報量は圧倒的で、且つ脳内に検索機能でも入っているのかと思わせる程度には記憶の活躍と応用がスムーズで饒舌。テレビに出演してスタジオで解説する元サッカー選手や実況のために知識を詰め込んだ聡明なアナウンサーすら圧倒すると言っても過言ではなかった。
『ここのプレー、リーグ第◯◯節の××戦で見せた△△選手とのコンビネーションを思い出しますね』
『▲▲選手、先々週の◻︎◻︎戦の時は2列目のポジションで苦戦してたのに、この試合では一列下げてやりやすそうだった。フォーメーション変更がうまくハマった気がします』
『この◼︎◼︎選手のアディッショナルタイムの逆転ゴール、去年の秋頃にちょうど似たような角度からのゴールがありましたよね。確か××戦かな? あれも超スーパーゴールだったけど今回のもヤバいですね』
などなど、エトセトラエトセトラ。スルスル出てくる記憶と言葉はどんな視聴者がどんなグーグル先生に頼るよりも早く的確で、動画投稿を開始した直後は涌いていたアンチもそのサッカー及びサッカー選手への真っ直ぐな(盲目なまでの)オタクっぷりに白旗を上げたのか姿を見せなくなり、ただただファンが増えていった。しかもどれだけ再生数や登録者数が増えても選手へのリスペクトを忘れない姿勢と視聴者への丁寧な対応、初心者にも分かりやすい戦術の説明など、熱烈なサッカーファンからややミーハーなライト層まで、老若男女も問わず幅広い視聴者のハートを鷲掴んだ。
さて、前述した通りアオイは確かに一般人ではある。だがその経歴は所謂通行人Aや村人Bなどとは少し異なり、実は少し華々しい人物だった。
ユースの頃からセルティックなどで有名なスコットランドでプレーし、18歳でトップチームに上がり1部リーグのプロチームにてボランチとして活躍。ところが「育てたり采配する方に興味が沸いたから」と23歳であっさり引退して以降はコーチとしてサッカーに携わった。蒼井伊織というその本名は、サッカーマニアなら名前ぐらい聞いたことがある程度にもともと知名度があった。それも解説に信憑性を与えて再生数が伸びる要素の一つではある。
蒼井伊織は日本に帰国後、川崎ブレイカーズユースのコーチに就任。クラブチームが日本一を懸けて争う日本クラブユースサッカー選手権──所謂U-15。川崎はトップチームはJ1リーグ上位常連だが、下部組織であるユースの戦績は振るわず近年ベスト4止まりだった。そのチームのフィジカルコーチとスカウティングを担当して全国優勝に導き、その後別のユースで監督としてチームを率いてそちらでも優勝。
その後はライセンスを取得し、現在バスタード・ミュンヘンで活躍する潔世一の出身校である神奈川私立一難高校の監督を務め、初年度で全国高校サッカー選手権ベスト4、翌年と翌々年は優勝して2連覇するなど、20代の若さにして付いた渾名は『優勝請負人』。
ちなみに今年も例に漏れず、強豪ひしめく鹿児島県で、現在マンシャイン・シティで活躍する千切豹馬の母校である羅古捨実業の監督として県大会を勝ち上がって全国へ出場し、つい先日行われた決勝戦でPK戦の末に勝利した。
ただ本人はW選手達の努力があってそこへ戦術が偶々ハマっただけWと穏やかに監督の力量をやんわりと否定して話したが、チャットに納得の声は少なかった。
【選手の力を引き出す練習をして、試合では個々の力を活かしつつ相手の強みを抑える采配をして優勝。それが監督の手腕じゃなかったらもう逆に監督って何すんの?】
【たまたま長年優勝出来なかったチームの数々が、たまたまアオイが行く先々で、たまたま優勝したってことか〜^^】
【全国でどこのチームと当たってもいいように全出場校の全選手スカウティングして戦術練りまくっておいて何だその態度は、もっと威張れください】
など、無事平和に荒れた。
そんなアオイの本領が発揮される生配信は、事前に準備した映像なんかがある訳でも台本がある訳でもないので取り留めのない雑談をするだけというラジオのような内容ながらも、豊富な知識で視聴者を飽きさせない。一つの質問に対しての掘り下げが絶妙で、多すぎるコメントの中で拾ってもらえるかは別として、リアルタイムでアオイと話せるとあってファンとして見ない手はなかった。
そして普段の動画はサッカーの映像に声だけを登場させたものであるのに対し、生配信は顔出しである。今年29歳という立派なアラサーだが見ようによっては23歳の新社会人ですと言ってもギリギリ通らなくもなくもない若々しさと爽やかさ。加えて、どちらかと言えば少し中性的で整った顔立ちに柔和な表情と笑顔、その形の良い唇から発せられる聴き心地の良いテノール。ぶっちゃけサッカーにそこまで詳しくない人の中にはアオイを見ること・声を聞くこと自体に重きを置いている視聴者も多い。
とにもかくにも、サッカーファンはその解説を肴に酒を飲み、また次の試合も見てある程度試合を把握した上で週末にアオイの解説と考察を聞いて、なるほどと唸りながらまた酒を飲む。
代表戦だけサッカーを見る程度というライト層はその解説とプレーの意図や理由を知って興味を持ち、何よりアオイが楽しそうにスタジアム観戦の雰囲気なんかを伝えたりするものだから、そんな風に楽しめるならせっかく地元のサッカーチームあるし一回ぐらい生で観戦してみたいかも……と観戦チケットを調べる。
あくまでW一般人WがW趣味としてW配信・投稿している動画。その影響力に関しては流石に数字的根拠はないものの、月額制のサッカー含むスポーツ特化の専用チャンネル(公式ストリーミングサービス)の契約やJリーグの観客動員数の右肩上がりの要因のひとつにアオイの名前が上がる程度には、日本へのサッカーの浸透に貢献しているというのが世間の総評である。
ゆえに実はオフィシャルなサッカー連合の人間からも認知されているのだが、一般人な当の配信者は露知らず。先日行われた親善試合で7-0という大量得点で圧勝した日本代表の試合について、さらに細かく言えば敬愛するフットボーラーである推し達の活躍について、好きにダラダラ語りながら晩酌したいという安直で純粋な理由から、いそいそと配信準備を行なっていた。
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「こんばんは。すいません、おつまみ作ってたら遅れました……。音量とか映像大丈夫そうですか?」
配信予告時刻を5分ほど過ぎてからようやく生配信が始まった。【音量大丈夫です】【お疲れ様〜!】【おつまみ何作ったの?】など、早くも多数のコメントが流れる。
そんな中、配信開始から1分の段階で赤く表示されたスーパーチャット──通称赤スパがピコンと表情された。
【\10,000:かりんとうまんじゅう
ちょい前ですけど、羅古捨実業全国優勝おめでとうございます】
「『ちょい前ですけど羅古捨実業優勝おめでとうございます』、かりんとうさんいつもありがとうございます。決勝のPK戦は流石にちょっと緊張で吐きそうでしたけど、選手たちが頑張ってくれました」
同時視聴数(通称同接)が多い故にスーパーチャットも多いアオイの配信。中でも赤スパ常連の熱烈なファンが10数名おり、見慣れた視聴者からはサッカーにちなんで『赤スパ11(イレブン)』、最近はそれすらも略してそのまま『イレブン』などとも呼ばれていた。なお本当に11人居るのか、はたまた11人で収まるのかは不明である。
そしてその中の一人である『かりんとうまんじゅう』は、日常の話からサッカーの話題までいろんな話題でスパチャを送る会話を楽しむタイプの視聴者だ。
【かりんとうさん安定の速攻赤スパ】
【やっぱり見てた、さすがです】
【赤スパの応酬になる前にコメするの先手必勝感ある】
他の視聴者からも『かりんとうさん』と呼ばれており、アオイも慣れたように反応し言葉を返した。
「今日のおつまみ? えっと、鶏ハム、もやしのナムル、あときゅうりの一本漬けと、シメにわさび茶漬け食べる予定です」
【お腹すいてきた】
【おつまみサッと作れるの料理上手じゃん…】
音量・映像など配信状況をチェックしてから、動体視力の訓練かのようなスピードで流れるコメントを拾う。そうして準備したのち、檸檬堂と書かれた青い缶のプルタブを開けて小気味の良い音が響いたところで、別の視聴者から赤色のコメントが飛んだ。
【\10,000:鯛茶漬け
俺も今お茶漬け食ってる】
「鯛茶漬けさん、いつもありがとうございます。お名前の通りお茶漬け好きなんですね。美味しいですよねぇ」
こちらも赤スパ常連、イレブンの『鯛茶漬け』。せっかく10,000円以上の金額を送るにも関わらずその文章はいつも短文である。チャットの内容から少しクールなイメージのくせに最終的には必ず上限の50,000円まで送るので、視聴者から密かにWツンデレWと評されているのを彼とアオイだけは知らない。
「とりあえず、乾杯〜」
【かんぱーい!】
【乾杯!!】
【もう飲んでます】
【おつまみ用意しとけばよかった】
【俺も檸檬堂です乾杯】
アオイが画面に向かってチューハイの缶を近づけて乾杯の音頭を取り、視聴者もそれに合わせて各々乾杯して乾杯コメントが加速した。
「カタール戦、めちゃくちゃ面白かったね。いや試合としてはちょっと一方的でアレだったけど、綺麗に崩したゴールがいっぱいあったし点差に余裕あったから新しいフォーメーション試してたし、観てる側は楽しかったな」
アオイの観戦側としての総評に【気になったプレーは?】【あの2点目って事前に練習してたのかな? アドリブ?】【点入りすぎて相手かわいそうだった】などコメントが飛び交う。それを眺めて目に止まった質問なんかに回答しながらおつまみを食べていると、再び赤スパがピコンと表示された。
【\25,000:かりんとうまんじゅう
千切の左SB起用どう思った? あと対策するとしたらアオイならどうする?】
もはやコメントするついでに10,000円以上を投げるかのように行われるチャットだが、普通は一人がこんなにポンポン諭吉を派遣するコンテンツではない。だがこれを当たり前にやってのけるのが一般の視聴者にも認知される所以だ。
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イレブンの面々は投げ銭の一日の上限金額である50,000円を、生配信の度にほぼ毎回送り切る。もちろんアオイのチャンネルのメンバーシップ登録(スーパーチャットに比べれば月額は微々たる金額だが)もしていてその上で、あとは配信だけでなく動画にも簡単に金を投げて「参考になった」などというコメントをする。アオイも流石にまずいのではないかと戸惑って、慌てて生配信で懇願した。
「あんまり無理して俺に金使わないでいいので……! いやもちろん嬉しいですけど、コメントの見落としとか普通にあるかもですし、あとスパチャ送っていただいても反応できないこともあるし! 本当にご無理のない範囲でお願いします……!」
しかしそれに返答する形でまた赤スパは送られてきた。
【\10,000:きんつば
困らせてるみたいでごめんなさい汗 無理とかはしてないです! コメント拾うとかも気にしないでください! アオイさんにいつも活力を貰っているので、そのお礼ですm(._.)m】
【\10,000:缶詰のパイナップル
アオちゃんごめんね>< 俺が送りたくて送ってるだけだから! これからも楽しみにしてるー!】
【\10,000:みるくてぃ
アオイの声聴いたらよく寝れるし、たまにお話できたらうれしーってだけ。】
【\20,000:塩こぶ茶
金はあるから送ってる。コメント拾う拾わないは気にするな】
【\30,000:石垣牛のイチボ
つーかスパチャ送ったのに拾ってもらえないとか言うやついんの? 話すこと全部アオイさんの自由なんだから無視していいですからね】
など、いっそアオイが喋る度に何人もがチャット欄を赤に彩る状況になり、更に金額が上がった。そのやり取りを見た普通の視聴者たちは『違う、そうじゃない』とネットでお馴染みのツッコミを心の中で呟いたが誰も止めなかった。
アオイが投稿し配信する動画はサッカーの試合の解説や考察はもちろんのこと、オススメのフィジカルトレーニングやシュートなどの練習方法やクールダウンのやり方や意味、簡単にできるアスリート向けの食事メニューなど、広告収入はあるだろうがそれを抜きにすれば、無償でやり続けられるものか心配になるほどのクオリティ。
これからも無理のない範囲で続けてほしいからこそ、せめて利益はあればあるだけアオイの生活は潤うはずとも思ったため、ただただ見守った。
「……ぅ……分かりました……。とりあえず、将来やりたいことがあってそのためにお金は必要ではあるので、お言葉に甘えます。もちろんスーパーチャットをくださる方だけでなく、見てくださっているすべての方に感謝しています。ありがとうございます」
結局アオイが折れる形で終結し、その日の配信はそのままサッカーの雑談へと移行した。なお、その時の真摯で謙虚な対応は特に課金をしていない視聴者には好感を与え、そして重課金勢には『将来のために金が必要=自分が送った金で推しの将来が舗装できる……?』というある意味逆効果な事態となっていたのだが、アオイや他の視聴者は知る由もないことだった。
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「かりんとうさん、スパチャありがとう。『千切の左SB起用どうだった? あと対策するとしたらアオイならどうする?』……確かに、マンシャインでは左起用も多いけど代表では今まで基本右でしたよね。今日は相手の対応が遅れてたのもあったと思いますけど、個人的には千切選手がより伸び伸びプレーできてた気がします。左じゃないとカタール戦の一点目みたいなゴールは生まれなかったと思うので、どちらもメリットがあるのでどっちが良いかってなると一概には言えないなぁ」
【確かに、相手対応しきれなくてバタバタしてたな】
【普通に右に千切、左に蜂楽と思ってたのかもね】
【千切選手てあの赤髪の人?】
【そっか代表ではずっと右だったのか】
【初心者です、すみません右と左だとどう違うんでしょうか…?】
「『右と左だとどう違うんでしょうか』、えーっと簡単に言うと、向いているプレーの違いがあります。利き足が右の選手なら右から左へ打つ方がクロスを上げやすいのですが、逆足と呼ばれる左からだと右足ではクロスを上げにくいです。なので一般的には利き足と同じサイドに配置するのが良いとされています。この辺りは過去にユース世代のですがちょっと細かく解説した動画があるので、またリンク貼っておきますね」
【たすかります】
【ありがとうございます!】
【へ〜】
【左利き少ないから左SBできる人が少ないんだよなぁ】
「一応メリットもあって、右利きが左SBをすることで、ニア側……その左サイドからゴール左隅への巻いた回転のシュートなんかを狙いやすくなるという利点があります。
ただ、左サイドは当然内側である右からプレッシャーをかけられるので、右手でブロックしながらボールを取られにくいように左足である程度コントロールできないとボールを運ぶのが難しいです。それもあって利き足と同じサイドが良いとされているんですが、千切選手の場合はあの速さでDFをぶち抜けばプレッシャーをかけられる前にシュートを打てるし、もともとFWということもあって得点感覚に優れているので、そういうメリットを取って試してみたのかもですね」
【確かに追いつけてなかった】
【ヨーイドンで走ってあんなに差がつくのヤバい】
【千切側のサイドバックそこまで速さなかったし完全にミスマッチ突けてた】
「あとは普通に千切選手の左足の精度が高くなっているのも理由の一つだと思います。昨シーズンの中盤ぐらいからですかね? 左サイド起用はもう少し前からですが、そのぐらいから左足のクロスでいいボールが上がるようになって得点に繋がり始めましたよね。逆足でのボールコントロールもクロスの精度も練習量が出るところなので、きっと凄く努力されているんだろうなと思います。
あとは左利きより右利きの方が多いのでどうしても右利きが左をやらざるを得ない場面が今後あり得るのと、単純にマンシャインで一緒にやっている御影選手と凪選手が一緒にスタメンだったので、普段のポジションの方がスムーズだという判断もあったのかなと思っています。
御影選手は特に縦の視野が広くて、自陣のパスカットから一気に千切選手や凪選手へ目掛けて蹴るホットラインがかなり通りが良いので、今年だと△△戦の同点弾とかはそこの関係がうまく行ってたしあとは◼︎◼︎戦の、……すみません、脱線しました……」
チューハイを飲む暇もつまみを食べる暇もなく喋り続けたアオイはようやく我に返り、落ち着くために炭酸を喉に流し込んだ。
【千切選手の話だけで日付変わるなって思った】
【隠せないサッカーオタク】
【これだから生配信見るのやめられない】
【いつも通り】
【\500:別に脱線してもいいよ!!】
【顔赤いけど酔ってる?】
【\20,000:石垣牛のイチボ
アオイさんかわいー笑 またマンC語り期待してます】
「……イチボさんいつもありがとうございます……。お酒入ると駄目ですね……。とりあえずそんな感じで、強みが生きるのであれば左もアリだなと思いました。あとはコメントしてくださった方もいましたが単純に左SBが不足気味で貴重なので、このままどちらでも活躍できるとなれば心強いですよね」
【ますますちぎひょカッケーってなった】
【\300;推しによる推し語りありがとうございます】
【ますます対策聞きたい】
「対策かぁ……まあ千切選手の対策は他の選手よりも分かりやすいかなと思います」
基本的にはあまり批判的な言葉をストレートに使わないアオイが珍しく言い切ったことにより、W対策が分かりやすい=対策できる程度の選手Wというニュアンスを読み取った視聴者は慌てた。
【ガチ? 教えて】
【言っていいのそれ?】
【なんか炎上する可能性ある? でも聞きたい、でも炎上しないでほしい】
怖いもの見たさならぬ怖いもの聞きたさから戸惑いつつもコメントが流れていく中、アオイは呑気にきゅうりの一本漬けを頬張りながら「なんか前置きが変でしたね、そんなコワい内容じゃないですよ」とけらけら笑っていた。
「対策ですが、イメージしやすいって意味でした。千切選手に追いつける足の速さ、咄嗟の裏抜けに対応できる視野の広さ、スプリントの多い千切選手を少なくとも75分はマークし続けられるスタミナ。これらを持つSBでできれば左右どちらもできる選手を一人置くか、二人見つけてきて両サイドに置いて左右のポジションチェンジに対応する。それか加速しきる前に寄せて千切選手のスピードを殺して味方が追いつくまで攻撃を遅らせられるようなSH(サイドハーフ)やボランチを用意する。どちらも無理なら、主なパサーである御影選手か糸師冴選手から完封する。こんなところですかね。
まあめちゃくちゃ判断に優れた世界有数のCB(センターバック)とかならSBが剥がされても対応できるかもだけど、それだって一歩遅れたら決定的な位置まで侵入されるから、そうなると結局クロスやシュートがミスキックになる頼みになっちゃうので……。その手前で対策したいところですね」
分かりやすいでしょと首を傾げるアオイに、動体視力が必要とされるプロボクサーですら読めないほどにコメントが流れた。
【いや確かにわかりやすいけどね?】
【無理ゲー】
【対策する気なくて草】
【※できるとは言ってない】
【相手DF「やることが多い」】
【だって御影抑えても糸師冴が来るんでしょ? 逆もしかり】
【足が速いってすごいなぁ…】
「実はカタール戦は現地観戦でメインスタンドで観てたんですが、生で見るとより速いです。体感的には新幹線なので本当に追いつけないので、そのせいでマッチアップの相手は常に縦パス一本で決定機になってしまうカウンターを警戒せざるを得なくなり、すると相手のSBは攻め上がりにくくなって攻撃参加しにくいんですよね。
攻撃のために上がっている状態でボールをロストしたらすぐに千切選手の前のスペースに出されてしまうので、それだとスタートラインが同じかむしろハンデありの理不尽なよーいどんが始まっちゃいます」
【新幹線は草。でも言いたいことは分かる】
【わかる、気付いたら想像の10mは前にいる感じある】
【\20,000:れもんてぃ
眠くなってきてたのに笑っちゃって目覚めちゃった。お嬢新幹線より速いの? ずるじゃん】
【\10,000:缶詰のパイナップル
スタジアムいたの!? 教えてくれたらこっそり探したのに!】
【\10,000:きんつば
新幹線ちょっとわかります…笑 ていうかアオイさん埼スタいたんですか!?】
「れもんてぃさん、いつもありがとうございます。お仕事お疲れ様です。起こしちゃってすみません、寝れそうなら全然寝てくださいね。
きんつばさんパイナップルさん、埼スタいました! あ、埼玉スタジアムのことで、カタール戦が行われたスタジアムですね。サッカー専用スタジアムなので観客席とピッチが近くて大好きなスタジアムの一つです。今回かなり前めの席が当たったので、ハーフタイムで裏に戻るときとかすごく近かったです」
【朗報:寝落ち直前おやすみスパチャ50,000円で有名なれもんてぃさんが起きてる】
【ナイスパ&ナイス起床】
【現地観戦羨ましい…!!!!!】
【イレブンのきんつばさんパインさんがアオイさんと出会ってる可能性】
【お嬢って千切選手のことですか?】
【青い監獄時代出身のチームメイトに呼ばれてて、今はファンも呼んでる千切選手のあだ名ですよー】
「千切選手の話に戻りますね。えっとどこまで話したっけ……。とりあえず正直あれだけのスピードがあると、本当に全く対策をしない状態で挑んだら適当に逆サイドへ蹴られるだけで一気ゴール前まで突破されて何度もシュートチャンスを作られるんですよね。千切選手自身が中央へ切り込むのをどうにか阻止してもそこから精度の高いクロスを上げられれば、マークを外すのが上手い潔選手やいつでもポジショニングが良くてとフィジカルも強い凛選手、あと競り合いとヘディングが強い國神選手、何よりマンシャインのチームメイトである凪選手にボールが入ってしまうので、まあ本当に対策必須な選手の一人だと思ってます。
……なんか対戦ゲームで使われそうな言葉になっちゃいましたけど、まああながち間違ってないかなと。
ただ千切選手の強みを活かすには前にスペースが必要なので、ゾーンでしっかり守れてる相手を一人で崩すのはなかなか難しくてちょっとアイデアが必要なのかなとは思います。ただまあ、逆サイドがだいたい蜂楽選手とか雪宮選手みたいな1対1の仕掛けが得意な選手が入ることが多いので、そこに人数かけたらこっちサイドは空きますし、どれだけ警戒してもいつかはこじ開けられるかなって思います」
【なるほど】
【次の試合は相手の対策とかも注目して見てみます!】
【御影→千切→凪のホットラインなんだかんだ安定してるし脅威だよなー】
【引いて守ってる相手だとちょっとやりづらいって感じ?】
【分かりやすい! あとはにかんでベタ褒め尊い】
【\15,000:かりんとうまんじゅう
新幹線(笑) めちゃくちゃ参考になった。いっぱい話してくれてありがと】
「とんでもないです。こちらこそいつもありがとうございます。さて、せっかく千切選手サイドの話をしたので、今回逆サイドにいた蜂楽選手のプレーなんかも振り返ってみましょうか」
パッケージにWほろ酔いWと書かれた2本目の缶チューハイを開けた。配信開始から30分、まだまだシメのわさび茶漬けまではたどり着きそうにない。