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「ナマエさん、結婚しよう」
「ざっけんな轟、ナマエは俺と結婚すんだよ死ね」
「いや、しないよ???」
現場でも取材でもプライベートでも、とにかく合えば喧嘩になる(実際は爆豪が一方的に轟への暴言を吐いているだけかもしれない)が、最近その内容がおかしい。
まずそもそも二人とも俺に対して距離が近い。本当に近い。近頃はもう慣れてしまったけど、肩に手を回されたり手を繋がれたり腰を抱かれたり、とにかく諸々全部がおかしい。残念ながら慣れてしまったけど。
そして二言目には「好き」「付き合ってほしい」「触れたい」「キスしたい」とくる。そして今日はいよいよ「結婚」だったな。相変わらず二人とも冗談がキレッキレである。
「いや、アレは冗談じゃなくない?」
「ははは、それこそ冗談きついですよホークス」
「………」
強靭かつ華麗な翼を持つトップヒーローが、その麗しい顔で憂いを帯びながらため息をつく。人気が高いのも頷ける。格好いいし強いし賢いし気が利くし、個性の翼も綺麗だし。
「君、いつかぺろっと食べられてそう」
「あ、そうですね、おかわりしよ。すいませーん、替え玉ひとつくださーい」
「ラーメンのことじゃないんだけど」
「博多ラーメンほんとに美味しい…毎日でも食える」
「……それは良かったね」
ホークスさんの呆れた視線が痛い。ラーメンを堪能するために福岡に来たわけじゃないです。任務のためです。本当です。それにしても博多ラーメン美味すぎ。健康を無視できるなら毎日食べたい。さすがに無理だけど。
▽▲▽▲▽
「ナマエ、ホークスに『毎日おまえの作る味噌汁が食べたい』ってプロポーズしたって本当か?」
「何それ???」
「こっちが聞きてぇわクソが」
今日も出会い頭から絶好調だなこの二人は。どこ情報なのか知らないけどそんなこと言ってないし言おうとしたこともない。誰だそんな根も葉もない噂流す奴。ホークスに失礼だろ。
「ホークスが言ってた」
「本人かよ!!!!!」
ややこしいことして事態を混乱させないでくれトップヒーローさん。言ってないだろそんなこと。それっぽいことすら言ってないだろ。こないだの遠征は昼飯食っただけだから酒も飲んでないし、ってことは記憶はないけど実は言ってました的な展開もないわけだし。
貴方は何か面倒なことがあっても個性でひとっ飛びすれば一旦回避できると思うけど、俺は違うんだぞ……。
「で?どうなんだよ」
「いやいや、言ってないから」
「本当か?」
「博多ラーメン毎日でも食べたいって話ししたことはあったけど」
「……また福岡行ってたのかテメェ……」
「仕事だからね? 博多ラーメン食べに行ってる訳じゃないからね?」
なんかそうこう言ってる間に轟がぎゅって抱きしめてきた。今まで距離が近いなってタイミングは色々あったけど、ハグは初めてだな。一瞬ちょっと抜け出そうとしてみたけど、うん、無理だわ。コイツ力強い。そんなムキムキマッチョに見えないのに力強いよ。
「轟てめぇ離れろやァ……」
人間って眉と目と口そんなえげつない角度にできるんだな、ってくらいに顔を歪ませた爆豪が、両手を絶え間なく爆発させながらそう言っている。般若みたいな顔ってたぶんこういうことだろうな。爆発も相まって怖すぎる。
俺が身動きを取ろうとしても1ミリも動かなかった轟の腕を、爆豪がべりっと引き剥がす。すごいなお前。逆に轟の腕がもげたりしなかったか心配だったけど、大丈夫だったらしい。
爆豪が俺の右腕を掴んだのとほぼ同時で、轟が俺の左腕を掴んだ。両手に華だったらどれだけ良かったことか。もしくは俺が華だったらまだ絵面的にマシだっただろうなと他人事のように思う。
このまま力任せに引っ張られたら俺の腕は間違いなく骨折か脱臼かの負傷案件だったけど、二人ともそれはわかってるのか、ただ俺の腕を掴んでるだけだ。ものすごく睨み合ってるけど。子どもが見たらチビるレベルの怖さで。
「……?」
瞬間、二人は気付いていないけどなんか聞き慣れた音がするなと思って、空を見上げた。風を切る音なのだ。なんだっけこの音、絶対聞いたことあるはずなんだけど。
「あ、」
半開きの口でそのまま呼吸したような間抜けな一文字を発した瞬間くらいに、俺は空へ攫われていた。真上から急降下して、俺を拾って急上昇したそれは、陽の光できらきら光った翼を背に携えていた。
「近くまで来たから遊びにきたよ」
「うわびっくりした……。ホークス、久しぶり」
「反応それだけ? 相変わらずだね」
俺を横抱きにしたホークスは、何故か俺の額にちゅ、と口付けた。子ども救出したときとかの距離感と勘違いしてない? 俺の周りみんなこうなの? 職業病?
なんか爆豪と轟が下で何か叫んでるけど、めちゃくちゃ高いところ飛んでるから聞こえないな……。超怖いけど後で聞こう。超怖いけど。
「あの二人、いっつもWああWなの?」
「ああって?」
「お互い牽制し合ってるってこと」
「(牽制?)まあ、仲はあんまりなのかな」
「若いねえ」
ホークスは俺を抱き上げたまま悠々と飛んでいく。東京の美味しいご飯屋さん紹介してよ、と言われたので、空飛んでるときの道案内なんかしたことなくて必死で、置き去りの二人のことをすっかり忘れていた。
下手くそアミュレット
後日、たまたま爆豪と現場が一緒の時に額にキスをされ、そのまま口にもキスされた。なんでだよ。
そのまた別の日に轟と一緒になった時には、同じように額にキスされて、首元に何箇所かキスされた。
もう訳が分からないので、考えるのをやめた。
かんなさん、リクエストありがとうございました。
本当に本当にお待たせして申し訳ございません…。
お待たせしすぎたので、おそらくご本人様に読まれることはないだろうと思いつつ、そっと置かせていただきます。
思い返せば私の書くツートップはいつも夢主に関してある程度協力していたので、取り合いなシチュエーションを書いたことがなく、書いていてとても新鮮でした。
あまり表現できていない気がするのと、ホークスが出しゃばり過ぎですが、楽しんでいただけたら幸いです。