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『うーん…』
「何してんだ、尻尾?」
昼休み、校舎の隅でしゃがみこむ尻尾を見つけた。
『あ、高尾。見てこれ、猫ちゃん』
「おー可愛いなー。捨て猫?」
『多分。』
そう言ってダンボールに入った猫を抱き上げる尻尾。抱き上げられた何処にでもいるような小さな三毛猫は、嫌がる素振りを見せず大人しく尻尾の腕に収まった。随分懐いてんなー、そう言って笑うと尻尾も少しだけ笑って、
『…昨日の朝からいたんだ』
悲しそうな声で言った。
「昨日の朝…ってマジかよ。昨日の夜相当冷え込んだじゃん」
『うん。でもうちじゃ猫は飼えないからカイロと毛布あげといたんだ。そしたら気に入ってくれたみたいでね。』
よかったー、といって心底嬉しそうに笑った。
「…尻尾んちじゃ猫飼えないんだよな?」
『ん。でもこのまんまじゃ可哀想だから、今日から飼い主探しするつもりだよ』
「いいぜ、その必要ないから」
『え?』
尻尾の腕の中にいた猫を抱き上げて、立ち上がって尻尾を見下ろした。
「俺、飼うわ!」
ニッ、と笑ってやる。
『い、いいの?』
「おう。俺が飼ってたら尻尾も見に来やすいだろ?それに、ちょうど俺の妹がペット欲しがってたしな」
『…ありがと!』
(ほんとに見に行っていいの?)
(もち!いつでも来いよ(さーて、家族説得しねーとな))
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