[1/10]
「尻尾っち尻尾っち!!!夏ッスね!暑いッスね!!!!! 」
『そうだね』
「海行くッスよ!!」
『なんで』
「ほんと冷めてるッスね…暑いからに決まってるッスよ!涼みに行くッスよ!」
『部屋からでなければ充分涼しいよ』
「んな事言っちゃ駄目ッスよー!」
朝から人んちに来てキャンキャン騒いでるこの駄犬はモデルとして有名な黄瀬涼太である。
モデルの仕事をすればカッコイイーキャー(棒)なんて騒がれてるけど、幼馴染の私にはただの犬にしか見えない。
「ね!!ね!!!!尻尾っち海水浴!!!!」
だって犬の耳見えるもん。獣耳は萌えるけどコイツのは萌えないよ萌えるのは黒子くんだけだよ黒子くんおいでよ
『めんどうだから行きたくない』
「オレほんと泣くッスよ!?最近尻尾っちと絡んでないから淋しがってるだろうなーって思って来たのに!!!!!!」
『大きなお世話。実際淋しがってんのはアンタでしょ』
「図星ッス☆」
『いっぺん死んで来い』
あぁうざいうざい!!なんなわだよさっきから尻尾まで見えてるんだよなんの病気だよやめろ!!!
「尻尾っちぃいぃいい…………」
『…っだあぁぁぁぁあ!!!分かったよ分かったから離れろ暑い!!行くよ行くから!!!!!』
「ほんとッスか!?よっしゃ!!じゃあ準備してくるから準備してろよ、尻尾!!!」
『っ……わかったから先いけっ………』
バンっっっと閉まったドアに向かって、ため息をついた。
壊れたらどーすんのよ、なんて思いながら、
“………準備してろよ、尻尾!!!”
『…バッカじゃないの』
きっと真っ赤であろう熱い顔を、手のひらで覆った。
小さい頃から変わらないこの気持ちは、きっとーーーーーーーーーー。
かなわない想いでも、消えることはないと思う。
(あっつい…)
(久々に尻尾って呼んだ…)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初々しくしてみたかった。
黄瀬君と幼馴染だと、小さい頃からいろいろ大変そうだよね。
そんな私は伊月と幼馴染だったら何もいりません。
栞を挟む
* 最初 | 最後 #
1/10ページ
LIST/MAIN/HOME