[1/3]
はぁーーーー…………
「俺の誕生日なんて誰も覚えてないよね…」
「何やってんでィザキの奴」
「元気ないなァ。なんかあったのか?」
2/6(水)山崎退誕生祭
現在の時刻、PM12:56
ついさっきまでたくさんの隊士さんたちがわいわいご飯を食べていた食堂は、今はガランとしている。非常に静かである。
2月6日。
ふとカレンダーに向いた意識の中に、今日の日付が入り込んできた。
『………なんか忘れてる気がするなー』
真選組女中の尻尾は、悩んでいた。
今日はなにか大切な日だったような気がする…と。
でも、思い出せないのだ。
思い出さなくてはいけない、思い出さないと今後の何かに関わる気がする。でも思い出せない。
そんな状態が朝からずーっと続いていたのだ。
「#name2#」
『あ、土方さん。仕事終わったんですか?』
「半分な。いつものくれ」
『はーい』
『お待ちどーさまです、マヨネーズ丼です』
「サンキュ」
もぐもぐもぐもぐむしゃむしゃごっくん
『(いつも思うけどあれだけマヨネーズ食べててなんで太らないんだろ)』
「……なんだ?」
『え?あ、いや…』
「なんだ、話せ」
『今日、なんかの記念日だったかなぁって思いまして…』
しまったつい口走った。
「今日が?なにもなかったと思うが」
『………そうですか』
律儀に答えてくれた土方さんは本当に優しい方だと思う。
時々、怖いけれど。
綺麗に食べ終わった土方さんはごちそーさん、と言って席を立ち、トレイをカウンターに戻して去っていった。
多分沖田さんが壊したものとかの報告書?とやらがあるんだろうな…
隊士さんの話聞いてると仕事しないらしいし。
土方さん眠れてるのだろうか。
………疲れたときには甘い物っていうよね……
土方さんは甘いもの嫌いだって聞いたことあるけど、少しでも食べたらいいんじゃ…
なんか作るかなー甘いもの…あまいも、の?
あれ、なんか忘れてる気がする。
甘いもの?確か一週間前に……………………
………………………ぁぁあ!!!
『(今日、山崎さんの誕生日だ………!!)』
思い出した思い出した思い出した!!!!
一週間前にケーキ作ろーと思って材料買ってきてたんだった!!わ、忘れてた……………
『(マズイ)』
今はもう昼過ぎ。今から作ったら、間に合うだろうか?ギリギリ…か?
なんせケーキはまだ一回しか作ったことがないのだ。
作り慣れてる人ならまだしも、レシピすら曖昧だ。きっと時間はかかる。
『(…でもなぁ)』
いつも監察として、常に身の危険に晒されながら頑張っている山崎さんは、土方さん位疲れていると思う。
土方さんにも甘いものは作るつもりだけど、優先すべきは山崎さんの誕生日ケーキ。
『(……がんばろ!)』
一人、黙々とケーキを作り始めた。
**
『で、きたぁ…!』
日は落ち始めている夕方。
あれからずーっとケーキを作り続けて、やっと完成したところだ。
『(デコレーションも完璧、見た目もうまく行ったしメッセージも入れれたし…完璧!)』
「#name2#さーん、何してはるの?」
『佐藤さん!ケーキ作ってたんです』
「ケーキ?あぁ、今日 …」
「私もお昼に思い出しまして…(苦笑)』
「そらお疲れやろ。今日お手伝いさん何人か来てくれはるし、夕食はうちに任せて休みぃ」
『え、いいんですか?』
「構わへんよ。」
『じゃあ、お言葉に甘えて…。ありがとうございますっ』
「んー」
いつもは私含め大勢の人で夕食を作る。
その皆さんには申し訳ないが、佐藤さんの優しさだ。素直に受け取っておこう。
失礼します、と言って、ケーキを持ったままキッチンからでると、目の前に沖田さんが立ちはだかっていた。
その目線の先にあるのは、完成したケーキである。
『……………………』
「美味そうなケーキ持ってますねィ。寄越せ」
『無理です。』
「何でィ。いいじゃねーか」
『駄目ですこれ渡す人いるので』
「俺でしょう?」
『なんでですか』
しばらくこの攻防が続き、うっとおしくなったのであらかじめ作っておいたミニケーキを沖田さんに渡した。
まだ不服そうではあったが、それをスルーして山崎さんの元へ向かう。
コンコン、
『山崎さん、いらっしゃいますか? 』
シーン……………
静まりかえってはいる。いるのだが、目の前の部屋からもわもわと負のオーラが出てるような気がする。
『(多分まだ誰にも祝われてないんだろうな…)』
ハハ、なんてちょっと乾いた笑いをして、『失礼しますね』と言って部屋の中に入った。
綺麗な部屋だ。
そしてそこには、部屋の隅で体操座りをして落ち込んでいる山崎さんの姿があった。
心なしかきのこが生えてる気がする。
『山崎さん、』
「………………………」
『山崎さーん』
「……………、尻尾ちゃん?」
『そーです。……お誕生日おめでとうございます、山崎さん」
「………………!!!」
ガバッと交換音付きで顔を上げた山崎さんは驚きに染まった顔をしていた。
そして私が持っているケーキに目線がいくと、嬉しそうな顔に変わり、
「ありがとう。尻尾ちゃん」
そう言って笑った。
山崎さん、Happy Birthday!!!
これからも頑張ってくださいね。
(俺、誰にも誕生日覚えられてないと思ってたから嬉しいよ)
(あはは…(私も忘れてましたなんて言えない))
栞を挟む
* 最初 | 最後 #
1/3ページ
LIST/MAIN/HOME