3.彼女は囲まれてる
彼女は何故か、1人になることが少ない。
朝。
「おはようございます!お隣失礼してよろしいですか!」
「おはよう好きにして」
「好きにします!」
「ありがとうございます!」
「囲んで座れとは言ってないよ」
「好きにして、とのことでしたので!」
「拡大解釈をするな」
昼。
「先輩こんにちは!お隣失礼してよろしいですか!」
「おまえ達狙ってきてるだろう」
「違います先輩をお見かけしたので飛んできました!」
「そうですそろそろ先輩が来られるだろうと踏んで来ただけです!」
「狙ってきてるじゃないか」
放課後。
「小松田さん、裏裏山に行ってきますね」
「先輩!裏裏山へ何をしに行かれるのですか!?」
「鍛錬ですか!?ご一緒してもよろしいでしょうか!」
「どこから着いてきてたんだ…」
「尻尾ちゃん、久々知くん、尾浜くん、鉢屋くん、不破くん、竹谷くんだね!みんな気をつけてね*!」
そして、休日。
「暇だなー…」
鉢八「「先輩!街に行きませんか!?」」
雷「お勧めの本があるんですけど、読みませんか?」
「借りよう」
「「「「なんで雷蔵には優しいんですか!!」」」」
「雷蔵単体には面倒を感じないからね」
のんびりとしていた彼女の周りには、彼女を慕う後輩達の姿。
「いつも思うんだが、おまえ達他にすることはないのか?鍛錬とか、委員会活動とかあるだろう」
「委員会はもちろん行っていますよ!」
「でも、先輩とお話するのがおれたちのすることなので!」
「いや他にやることあるだろうその感じ。あーあ、これで成績優秀なんだから、困ったもんだね」
「先輩、逆です逆」
「?」
「おれたち、先輩とお話するために頑張ってるんですよ。八は論外」
「おれも頑張ってるんだけど!?」
「…もっと別の目的を持ってくれないかな」
彼女はため息をつく。後ろから抱きつこうとした勘右衛門の手から身を躱し、その場から立ち去ろうとする。
「先輩どちらへ?」
「さてね」
「お供しまーす」
「頼んでもないのに来るんじゃない」
しっしっ。
追い払うような仕草をこちらにやり、くのたま長屋の方へ歩いていく彼女。その後ろ姿を見送って、勘右衛門は「あーあ」と声を漏らした。
「先輩、今日は一段と冷たい」
「そうか?いつもと変わらなく感じたが」
「僕たちにはいつもあんな感じだものね」
「他学年にはお優しいのになぁ」
「というか、雷蔵にも優しくないか?」
「それは思った」
「僕はお前達よりまともだと思うもの」
「ら、雷蔵、君、分かって…」
「まぁ、俺達にだけああいう感じなのも、いいじゃないか」
「それ、先輩が聞いたら絶対嫌な顔するだろうなぁ」
「全くなのだ」
「ちょっとみんな、雷蔵が」
その場から動こうとせず、話し込む5人。
彼女からぞんざいな扱いを受けている自覚はある。下級生に笑いかけているところはよく見るし、6年生と和やかに話しているところもよく見る。
「まぁ、暫くしたらくのたま長屋から出てこられるだろうから、その時に行こう」
それでも、彼女の隣は心地良い。
「先輩!なにをされてるんですか!?」
「…富松に頼まれてね。迷子2人を探しているんだ」
「神崎と次屋ですね。お手伝いします!」
「…、兵助と三郎、お前達伊賀崎の所に行ってやれ」
「え、」
「さっき八左たちが虫探ししてるのを見た。手伝ってやってほしい」
「…はい!」
「勘と雷蔵はこっち。あいつら学園内にはいるらしいから、すぐ見つかると思う。見つかったら生物委員会のほうに行くよ」
「はい!」
一度目を合わせて、返事とともに立ち去った2人には目もくれず、走り出す彼女。ついてきた2人には「後で団子」と呟いた。その一言だけで、彼らの指揮は上がるのだ。
「兵助ー!三郎ー!」
「勘右衛門!」
「迷子組は見つかったのか?」
「ばっちり!それより早く虫見つけよ!先輩が『 後で団子』って仰ってたんだ!」
「それは本当か!?」
「デートじゃないか!!」
「連れていくといった覚えはないんだが」
「あっ先輩」
「ほら団子。お前達で食べな」
「えっいつの間に買われたんですか!?」
「探してる時に通りかかってね。渡し忘れそうだから先に渡しておく。協力ありがとう」
「お礼なんていいですよ!一緒に団子食べましょう!」
「嫌だ」
こんな感じで、彼女はまた、囲まれる。