ジェーン・ドウ、僕のマドンナ

 嫉妬でアルコールがよく回る日だった。見事に酔いに支配された俺を心配そうに眺める名前の瞳は、今日の満月みたいに丸いなあ、とか思いながら、さっきコンビニで買った水を飲み干す。人間でごった返す歌舞伎町から外れた脇道を歩く。俺の覚束無い足取りに、名前は寄り添う形で歩幅を合わせる。
 コイツのこういう出来るところが少し憎い。実力もあって周りから信頼されている名前は、何だって俺のようなヤツと付き合っているのだろう。俺より今日楽しそうに話していた野火丸さんの方がよっぽどお似合いだ。……思い出したらまたムカついてきた。
 大体、こんな状態になっているのは紛れもなく彼女のせいである。未だに慣れない感情に踊らされているのも全部。

「あー、頭痛え」

 いっそこのまま二人でどこかに行っちまおうか、今日が満月なのを理由に。

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