(8)




この世界は特に何も変わっていないように見えて、少し違う。それはまるで間違い探しの絵本のようだった。でも大体は同じ。電車も駅名も、人間も、何も変わりなく見えた。それは不思議でもあったしそうとも言えなかった。


買い物へと向かったのはやっぱり池袋。住んでいたというのもあるし、デュラララといえばやっぱり池袋かなと思ったからだった。やっぱりちょっとウキウキしてる。良くないぞ。
でも実のところなんだかこちらに来てからと言うもの、気分が良いのだった。


(仕事の不安とかがないからなのか…やっぱりOLとか合ってないのかもなー…)


駅から出て、黄色いものを身につけた人が多いことに気付く。


(ああ、そうか。物語開始の一年前、って黄巾賊とブルースクエアの抗争が…)


あまり関わらないようにしないと…っていくらなんでもいきなり絡まれたりはしないか。目的の服屋さんへ行こうと止めていた足を踏み出した瞬間、後ろから声をかけられる。


「おねーさん!これ、落としたよーん」


振り返ると私のバッグについていた小さいクマさんを持った金髪の少年が立っていた。まるで子供みたいな顔をしていて金髪がアンバランス。そして黄色いバンダナを首に巻いていた。
えっと、もしかして、紀田正臣?少し幼い顔をしているのはまだ中学生だからか…。

「あ、ありがとう。気づかなかったなーあはは…」


自然に、自然に、と思えば思うほど変な風になる私は昔からうそが下手くそ。目の前の彼、紀田正臣はそんなこと気にもせずニコニコと笑ってこちらを見ている。


「いやいやぁ、お礼なんて!一緒にそこでお茶でもどうですかー!?」


ナンパか…。しかもこんなずっと年上をか…。まるで息をするようにナンパする中学生の紀田正臣に思わず笑顔になる。


「あはは、本当にありがとう。ゴメン、お姉さん急いでるんだ。お茶はまた今度!…それにキミ、彼女居るでしょ。ダメだよー大事にしてあげないとー」


そう言いながら去ろうとすると驚いた顔して「おねえさんエスパー!?」と聞いてきたので笑いながら私はこう言った。


「わたし、預言者なんだよね」


えっと驚いたあとの笑った顔が可愛かったなあと思って少しだけ胸がちくりとする。
これからの彼を思ったのだった。あの笑顔が曇ってしまう日がやってくる。それも今私が身を寄せている折原臨也の手によって。


信号を渡るとき、馬の嘶きが聞こえたような気がする。


昨日折原さんが言っていた『傍観者』という言葉が重くのしかかったような気がした。
ALICE+