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腕のいい整体師
ある街に評判の整体院があった。
どんなに頑固な肩こりや腰痛も、スーッと直してしまうそうだ。
ただし奇妙な
噂もある。
『そこそこ美しい女の人は、絶対にそこに行ってはいけない』
『そこそこ美しい』って・・・何だ?基準が漠然としすぎてよくわからない。
たいていの人はそんな噂など全く気にせずに整体院を訪れている。
玲美は超美人のOLさんだ。
スタイル抜群。息を呑むように美しい人である。
当院のS先生は「きれいな人だなぁ・・・」と、思わずつぶやいてしまったが、
『ゴホン』と咳払いをして気を取り直し、
「こちらにどうぞ」と、施術用ベッドを勧めて、さっそく施術が始まる。
首すじを押さえつけられると・・・あれあれ?
スーと力が抜けていく。
「あぁぁー。すっごく気持ちぃぃ」
「なるほど。ではここはどうですか」
「あ、はい、とっても」
首、背中、腰。ツボを押さえるように、揉むようにグイグイと押していく。
噂通りのいい腕だ。体中がどんどん軽くなっていく。
気持ち良い。いや、気持ち良いのを通り越して、フネフネになっていくような感じ。
マッサージは続くが、そのうちにまるで力が入らなくなった。
その様子を見ていたS先生は「そろそろいいかな」と、言う。
冷蔵庫、の冷凍庫を開けて空の
蓋付きビンをとり出してきた。
冷凍庫には10本、いやそれ以上のビンが並んでいた。
「ん、あれってお人形かな?」
ほとんどのビンには10センチくらいの人形が入っている。
ビンを
叩いているポーズ。もがくようなポーズ。何か叫んでいるようなポーズ。
すべて女でしかも美人。おまけに素っ裸、一糸まとわずの全裸である。
霜で真っ白ということはカチンカチンに凍っているのだろう。
S先生は空ビンの蓋を開けながら近寄ってくると、
「わかるように説明してあげるよ。実は私は妖怪でね」
「はぁ?先生ったら何を言いだすんですか?」
「まあいいや。信じなくてもいいよ。
でもね、ある妖術を使うと、人体から魂だけを抜き取ることができるんだよね。
あのビンの中の人形のようなのは、体から抜き取られた女性の魂さ」
なるほど魂は人の形をしているのか、って納得している場合ではない。
「この妖術ビンの中で凍らせて保存しているっているわけ」
彼女は夢を見ているんじゃないかと思った。気持ちいいし。
「それで抜け殻となった体は、もったいないから・・・」
彼が部屋の奥にあるクローゼットの扉を開けると、
「あっ!?」
何十体もの人形、いわゆるラブドールが、ゴロゴロと転がっている。
「これはね、ラブドールのようだが元々は本物の人間なんだ。
魂が抜けると数日で死んでしまうので、防腐処理を施してある」
彼はいかにも愉快そうに話を続ける。
「私のオモチャになってもらっているんだ。リアルラブドールよりもさらにリアルなんだよね。それはそうだよね」
信じがたいがウソではないようだ。しかし本当なら大変だ。犯罪ではないか。
「人形は永遠に腐敗しないからね。死体が見つからなきゃ警察にもばれないんだ。意外と」
何と言うことを!玲美は逃げなきゃと思うが、体が全然言うことを聞かない。
「秘孔をついて体の自由が利かなくなるようにしたから、まったく動けないでしょ。
いやあ、それにしても君は素晴らしい体をしてるね。立派なラブドールになれると思うよ」
彼が何か呪文を唱えると、玲美は目の前が一瞬暗くなり・・・気がつくとビンの中に閉じ込められていた。
力いっぱいビンを
叩くがビクともしない。
「無駄だよ。霊体はこの妖術ビンの外には出られないんだよ」
目の前には、自分の体がベッドの上に横たわっている。気持ちよさそうに!
「ちょっと、起きてよ、あたし!」と叫ぶが・・・無駄である。
S先生は、彼女の服を、そして下着をはぎ取って全裸にしてしまった。
手足を持ち上げて、体の向きを変えて、隅々まで鑑賞している。
「いやらしい!ちょっとやめなさいよ!」
S先生は鼻歌を歌いながら、冷凍庫から女入りのビンをとり出してきた。
カチカチに凍っている女性、誰かさんの魂をポリポリと食べだした。
「なかなかうまいな。もう一個食べようかな」
美人アイスキャンディを食べ終えると、玲美の体に何か香薬を塗り始めたが、
「これでよし。小1時間もすれば、完璧な玲美さんのラブドールの出来上がりっと。
後でじっくりと遊ばせてもらうからね。
それじゃ、もう君には用はない。
いずれ、おいしくいただくことになると思うけど、それまでカチンカチンに凍っててね」
冷凍庫に入れられて『バタン』と、扉は閉められた。
なすすべもなく、玲美は・・・
腕のいい整体師 完
2025 04 01
Written by GreenIce