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朝の読書運動
「あーぁ。カッタルイなぁ・・・」
瑠依は机に突っ伏す。
朝の読書運動・・・
彼女の高校では『本に親しもう!』とのことで、このようなことをやっている。
「何で高校生になってまで、こんなことをやらなきゃなんないんだ」
読書が嫌いな瑠依はぼやく。
目の前にある本をつつきながら、
「ラインでも来てるんじゃないかな」
しかしスマホは教室だ。図書室への持ち込みは禁止。
「あーつまらない」
図書室に来て本を読まなければ、やることなどない。
「いっそ、寝てしまうか」
しかしそこまで長い時間でもない。
ウダウダと体を動かしていると、
「あんた、なにやってんのよ。本を読みなさいよ!」
「え・・・」
腕を組んで
恵が立っている。
彼女は真面目なクラス委員である。
「この読書の時間も授業の一環なんだよ」
(ちぇ、大きなお世話だ)
不真面目な奴をクラス委員が注意する!
メグミの行為は正しいのだろうが、瑠依のような生徒からすれば迷惑で鬱陶しい。
「あたしの勝手でしょ」
「そういうわけにはいかないわ!」
彼女はクラスの生徒に本を読ませる義務がある、と思っている。
クドクドと説明(お説教のようなもの?)をはじめた。
瑠依は「うぐぐ!」と言葉を飲み込む。
ここで逆らっては分が悪い。
先生に報告でもされたら、なおさら面倒になりそう。
「はいはいわかりましたよ。読めばいいんでしょ!」
瑠依は仕方なく本を開いた。
「わかればよろしい」
メグミは向こうに行ってしまった。
ドヨンとした重い気分に、不愉快な気分がさらに加わってしまった。
瑠依は仕方がなく本を手に取った。
「あれ、あたしは何の本をもってきたんだっけな?」
図書室に入る時に、適当に書庫から持ってきたのだが、はて?
内容、背表紙などはまったく見ていなかった。
文字の少ない図鑑を取ってきたような気がするが・・・
「どうせ読むつもりなんかなかったもんね」
ページをめくると、右ページは立ち姿の全身正面写真になっている。
ほとんど、いや全部学生だな。
男子も女子もいる。私服を着ている者もいるが制服姿がかなり多い。
なんか変な本だ。
左側のページには、名前、そして日時。〇年〇月〇日に行方不明。
「行方不明になった日時って?!」
その他、本人の履歴や特徴なども書かれている。
この図鑑は最初から最後まで写真と経歴しか載っていない。
瑠依はページをめくっていくが首をかしげだした。
「なんだこれ?」
あらためて背表紙を見ると『失踪者名鑑』となっている。
「はぁ?」
普段、文字を読まない瑠依だが、序文を読んでみる。
『この本は失踪者の一覧です』と書いてある。
「失踪者の一覧って・・・?」
内容的にはおかしな本ではある。しかし、おもしろいとも思わない。
珍しいジャンルかもしれないが、全く興味がわかないのだ。
正直なところ「へえ、そうなの」くらいの感想しかない。
ここで、あらためて目次に目を通す。
名簿のように名前だけがずらりと載ってる。ずらりとだ!
「すごい人数だね」
それよりも、
「うゎひどいな、これ」
目次の一番後ろの部分には、鉛筆やらボールペンやらで、誰かさんの名前がびっしりと書かれていた。
余白を埋め尽くさんばかりに書き込まれている。
気に食わないやつの名前を書き込んでいったのだろう。
「あははぁ、これって加筆なのかな」
いやいや、明らかにいたずら書きだ。
目を本から逸らして考えていると、前の方の書庫にメグミが立っている。
何かの本を探しているようだ。
「ちぇ、いい子ぶってからに・・・」
瑠依はふと思いついた。
「そうだ!」
筆記具をとり出すと目次を開き、わずかに空いている余白に、
『鈴木 恵』と書き足してしまった。
「ざまあみろ。ふん、これであんたも失踪者だよ。さてと・・・」
そろそろ読書時間も終わりだ。
本を持って立ち上がろうとした時に、ふと、
「最後の失踪者ってどんな人だろ?」
ちょっと興味が起こって、最後のページを開いてみると・・・
瑠依はドキリとした!
『鈴木 恵 2026年8月28日、学校の図書室で失踪。特徴は・・・』
一番最後のページには、メグミがニッコリとほほ笑んでいる写真が載っていた。
朝の読書運動 完