目鼻立ちのはっきりとした純につり合う細く無駄のない艶やかな身体を見下ろし撫でる。時差ボケで穏やかな寝息を立てている愛らしい彼女の頬にキスを落とすと、フリル地のオフショルダーの水着を躊躇うことなく捲り上げた。

「ヘヘッ。警戒心の欠片も無し」
『…………』

かけていたサングラスを外すと現れる、宝石のように輝くアクアブルーの瞳。汚れを感じさせないその美しさとは裏腹に、持ち主である男の腹の中はドス黒く、目の前にいる獲物を逃すまいと欲情の色を帯びている。
露わになった形のいい胸に手を伸ばし、柔らかな感触に口角を上げる。さて、一体どこまでやれば目を覚ますのかと最低な好奇心を胸に承諾のない行為を進めていく。寝込みを襲うという最低な行動も、この男にかかれば羨む女が出てくる行為に様変わりする。

『………ん〜……』
「純〜」

鎖骨あたりに所有印を刻み、胸の頂を指先で刺激すると違和感を感じたのか一瞬眉間にシワを寄せ純が身じろぐ。仮にもし最後までして目を覚まさないなんてことがあれば、この女は相当イカれてるなんてことを考えながら薄く開かれた唇に優しくキスをしてから胸元に顔を埋めた。
チュッ…と音を立て指先だけで主張し始めた乳首を口に含み、熱を帯びた舌で舐め回し、堪能する。空いている左手で妖艶なくびれを撫で、目的の箇所までスーッと手を下ろしていくと、純が再び体を小さく動かした。

「ねぇ、起きないと指入れちゃうよ?」
『……んん〜……』
「…ククッ。今のはYESってことで、いいのかな」

耳元で吐息混じりに囁いて、タイトな水着の上から秘部をなぞるとくっきりといやらしい割れ目が主張していた。確認などしなくとも、彼女の体は持ち主の意志を無視してすでに男の欲望を受け入れる準備を整えている。体は覚えた愛撫に反応し、今か今かとその瞬間を待ちわびているようだった。自分が仕上げた体を前に悪魔のような笑み浮かべた五条は、体を起こし我慢できずに純の水着に手をかけた。
その瞬間ーー。

『…………ん…?』
「あ」
『…………………』

妙な違和感を下半身に感じた純が、長いまつ毛の映える瞳をゆっくりと開き目を覚ます。覚醒途中の、まだハッキリとしない意識の中で自分が置かれている状況を徐々に把握していくと、一気に血の気が引き女らしからぬ悲鳴が上がった。

『ギャーーーッ!!!新手の特級呪霊ー!』

念動力のこもった純の拳が、勢いよく無下限の防壁にぶつかりビリビリと振動を生みベッド横にあった花瓶を破裂させた。

「おっは〜!純やっと起きた」
『じゃねーよ!!なにしてんですかぁっ!!!』
「え、寝込み襲おうと思って」
『満面の笑みで言うセリフじゃないんですけど!?』
「だって純可愛いんだもん」
『だもんじゃなっ…キャーッ!私胸丸出し!』
「あ、直しちゃ駄目だよ」

晒されている胸を隠すため捲れている水着を直そうとしたその瞬間、五条が純の体を抱きしめて再びベッドに倒れ込む。後ろからギュッと抱き寄せて柔らかな胸を揉みしだくと、甘い吐息が純の口から漏れ出した。

『や、やめて下さいっ…』
「可愛い彼女の水着姿に欲情しない男はいないでしょ?」
『知りませんよ、そんなのっ…んっ…』
「ん〜、純可愛い」
『は、離れて下さいっ。これ犯罪ですよ!?』
「寝てる間に写真いっぱい撮っちゃった!見る?」
『おいふざけんな!』

五条から逃れようと腹部に回された手を解こうとするが、ぴくりとも動かずより強い力で抱きしめられてしまう。

『そう言えば私、ビーチにいたのになんでホテルにいるの…』
「ああ、それは僕が運んだの」
『まさか先輩っ、わざわざ寝込み襲うためにっ…!?』
「あのさ。僕をなんだと思ってるの?」
『女の寝込みを襲うゲス野郎です』
「いやさ、純時差ボケで寝ちゃったから」
『聞けよっ…』
「僕もホテルで一緒に休もうと思って戻ったんだけど…。純が可愛くてそれどころじゃなくなったってわけ」
『どっちみち最低ですよあんた』

冷めた口調でそう言い放ち、純は自身の胸を悪戯に触る五条の手を掴み静止させる。上半身を起こして今度こそ水着を直すと、不満げな声が聞こえてきたがそんなことはどうでもよかった。数ヶ月ぶりにとれた休暇を使い、(もちろん一人で)海外の美しいビーチでバカンスするんだと楽しみにしていたのに、どこからその情報を嗅ぎつけてきたのか成田に行ったら五条がいた。頑なに断れば良かったがフライト時間が迫りこうなってしまった。

『私ビーチに戻ります。買い物もしたいし…』
「いいけど、もう少し人がはけたらにして」
『なんで?』
「純はすぐ声かけられるから心配なの」
『それはただの挨拶みたいなもので…』
「そうじゃない連中だっていたでしょ?だから」
『気にしすぎですって。ここ海外ですよ?』
「だから、が嫌だっつってんじゃん」

生徒の前では見せない一面。高専時代の彼を思い出させるような少々荒々しい物言いに、純がムッとした表情を浮かべ不満をあらわにする。しかしここでイライラしてはせっかくの休暇が台無しになると深いため息を吐き、気を落ち着かせてから五条に向かって右手を差し出した。

『一緒に行きましょうよ』
「………」
『それならいいですよね?』
「え〜、ヤダ。えっちしたい」
『はぁっ!?』
「僕のご機嫌取りが先。ね、純ちゃん」

同じように上半身を起こした五条が、差し出された手を取り純の体を再び組み敷く。顔の横で両手を押さえつけ身動きを封じると、蠱惑的な唇に噛み付くようにキスをした。



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