エイプリルフール(2018)
「あのねぇ臨也くん」
「やぁ、一週間ぶりかな? 名前にしては随分とご無沙汰だったね」
「私、明日結婚するんだよね」
「…………は?」
「正確には婚姻届を出しに行くだけだけど」
「ちょっと。ベタすぎて面白くない」
「どうしたの?」
「無知な名前は知らないみたいだけど、エイプリルフールで嘘をついていいのは午前中だけなんだよ」
「ソースは?」
「イギリスのオークアップルデー。日本由来じゃないけど……もうほとんど浸透してるからね」
「ふぅん。でも私が結婚するのはエイプリルフールの嘘じゃないから問題ないよね」
「は?」
「彼がね、そろそろいい歳だしって先週プロポーズしてくれたの。それで昨日両家顔合わせが終わってさ」
「ねぇ名前、おい、」
「今日でもよかったんだけど、エイプリルフールに籍入れるのって……ねぇ? なんか、縁起悪そうだし」
「……それ以前に名前、俺以外に彼氏いないでしょ」
「実は2年くらい前から……?」
「嘘に決まってる。俺に隠せるわけないじゃん」
「彼氏って言っても、昔馴染だし友達の延長みたいな感じだったからそんなに雰囲気出てなかったかも。臨也くん私の友達付き合いには割と無関心だったし」
「っていうか2年前って、お前もうこの部屋の合鍵持ってただろ」
「だって。臨也くんとの将来ってあんまり想像つかなくない? っていうか臨也くんの将来が見えないよね」
「……何。それじゃあ今日は別れてくれって言いに来たの」
「鍵を臨也くんに、と思って」
「そう。受け取ったからもう出てって。彼女でもないやつ相手にしてるほど俺も暇じゃないんだよね」
「……臨也くん。最後に一言、いいかな」
「手短に済ませてくれる?」
「……ふふ! 臨也くん、かぁわいい!」
「は、」
「わかりやすく拗ねちゃってー! 私と別れるのそんなに寂しかった? ごめんねぇ、嘘なの!」
「……エイプリルフールじゃないんじゃなかったの」
「うん。エイプリルフールじゃないよ。ただ普通に嘘ついただけ」
「鍵返すとこまでやるなんて悪趣味じゃない?」
「あぁ、それ。気づかれるかなーとも思ったんだけどね、私の家の合鍵だよ。臨也くんにあげる〜」
「君って性格悪いよね」
「臨也くんの趣味よりはマシだよ」
「………………可愛くない」
「あはは、臨也くんは可愛いね」
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