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「よしっ、出来たっ! 」


直前で温めるもの以外、最後の料理をテーブルに乗せると泉はその出来栄えに満足した。


只でさえ職業柄不規則になりがちな恋人がここ数日間、ずっと職場に缶詰だったのだ。


『今日こそは家に帰れるから』


大学での授業中に入ってきたメール。
泉は年甲斐もなくテンションがあがりやけに勉強が捗った。


『それから明日は休みだから、ずっと一緒にいられるよ』


更にもう一文目で追い、心の中で読み上げれば無意識に顔がにやけそうになり泉は慌てて口元を隠す。


同棲中の年上の恋人である南はどうにも不規則な仕事であるらしく、学生である泉の規則的な休みとは中々合わないのだ。


ここ数日帰ってこれなかった恋人が帰って来る、ましてや明日訪れる己の休みと一緒だと言う。


これを喜ばずにいられるか。


授業が終われば脱兎の如く学校を立ち去り、スーパーで食材を買い込んで我が家へと急いだ。


南の久しぶりの帰宅とあって、気合いを入れて掃除をし食事を作り今に至る。

時間を確認するように時計を見上げればまだ大丈夫そうだと思い浴室へと急いだ。


その手には己の洋服箪笥に隠していた紙袋。


最後の仕上げとばかりにシャワーを浴びれば紙袋からふわりとした柔らかい触感の布を取り出す。


用意していた『フリルのエプロン』を素肌の上に纏った。


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