秋の夜。
外を吹く風も涼しくなり、クーラー入れずに窓を開ける。
部屋に風が入っていく。
「あ、アイス食べたい…期間限定の、みたらし味のやつ」
「んァ?もう風呂上がったばっかりなんだから今日は我慢しろォ」
お風呂上がりのスキンケア。
そんなときにふと食べたくなったモノ。一度思い始めたら止められなくなるのは食欲の秋のせいだろうか。
急いで髪を乾かし、櫛で整える。
「我慢できない!そこのコンビニで買ってくる!実弥さんは何がいい?アイス?それともシュークリーム的なかんじ?」
「……俺も行く…」
テレビを消し、鍵をかけてマンションを出る。
「ほら、行くぞォ」
「うん!」
自然と繋がれる手。
向かう先は徒歩5分の所にあるコンビニ。
「あった!みたらし胡桃味…実弥さんはどれにする?」
「これと…あとこれだな…」
カゴに入ったアイスやスイーツを会計する。
エコバック忘れたからビニール袋を追加で頼んでコンビニを後にする。
「タケ。ちょっと寄り道しようぜェ」
「え?いいよー」
そう言う彼に手を引かれてついて行った先は近所の公園。
「ほら、ここに座れェ」
ベンチに並んで座る。
「実弥さん…ここでカップアイス食べるの?」
レジ袋の中にはそれぞれが食べたいカップアイスとお菓子、そして…
「これをタケと食おうかと思ってな」
目の前に出されたのは、一つの袋に2つ入っているチョコ味の氷菓。
「カップアイスを家で食べてもいいんだが、今夜は風も涼しいしなァ。たまにはこう言うのもいいんじゃねェ?」
「ほらよ」と封を開けて二つに割ったうちの一つを手渡してくれた。そして彼は続けた。
「それに、今日は星もたくさん見えるし、月明かりが出てて明るいしなァ」
「っ!!ーーー!!!実弥さん!」
月明かりに照らされる彼の笑顔がとても優しくて、外なのに思わず抱きしめる。私と同じボディーソープ使ってるはずなのに、私よりも優しい匂いがする。
「タケ、アイスが溶けるぜェ」
「いいの。あと少しだけこうしててもいい?」
ポンポンと頭を撫でられる。
少し長めに実弥さんの匂いをいっぱいに嗅いで、名残惜しいけど離れてアイスの封を開ける。
「ん〜!久しぶりにこれ食べたけど、おいしいね!」
手の温度で少しずつ柔らかくして、口に運んでいく。実弥さんがなんか呟いてたけど、アイスに集中しすぎて聞こえなかった。
「実弥さん、なんか言った?」
「いや、なんにも言ってねェ。ほら、俺はもう食い終わったぜェ」
「ほんとだ!早い!急いで食べるからちょっと待ってて!」
「置いて行ったりしねェから、ゆっくり食え」
そう言って、実弥さんは私の頭をもう一度ゆっくり撫でた。
秋の夜長の月明かりが私たちを優しく照らしていた。
月明かりふんわり落ちてくる夜に
「小さい頃、玄弥とよく分けて食ってたのが、今となっては好きな女と食ってるってなんかいいよなァ」
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