不死川実弥は私の彼氏である。
彼は一緒に夜を過ごすと私よりも絶対早く起きている。そして私が目覚めるのを見計らったように「起きたかァ。ホラ、こぼすなよォ」とベッドでまだポヤポヤしてる私にミルクたっぷりのカフェオレを作って持ってきてくれる。
そして自分も飲むであろうブラックコーヒーが入ったマグをベッド横のサイドテーブルに乗せて、私の横に入り込んでくる。
「体調はどうだァ?」
「今日が休みでよかったって思うレベルで腰が痛いよ…実弥くん頑張りすぎ…」
「…っ…悪かった…久しぶりに会えたからつい…」
「ごめんねぇ。私の仕事の納期が重なったから…でも、今日と明日は休みだから…」
「やっとタケと2人でゆっくり過ごせるってわけだなァ」
そういうとマグの中のコーヒーを一口飲み、「なァ、タケ…もう一度、いいかァ?」と優しい、だけど艶のある声が私の名を呼んだ。
「いや、ちょっと、もう無理ぃ…」
「なぁ、少しだけだから…」
近づいてくる顔にドキドキして、でも次に来るであろう優しい衝撃を待ち構えているとスマホが着信を伝えた。
「…俺のか…」
どんどん離れていく距離
「あー、玄弥、突然電話してくるなんて珍しいじゃねェか。なんかあったか?」と電話を始めた彼の背中がとても愛おしくなり、後ろからガシッと抱きしめた。
「うぉっ……いや、なんでもねェよ。また近いうちに俺は顔出すからってお袋たちに言っといてくれ…ああ、わかった。じゃなあァ」
通話が終わり、スマホをボスッと放り投げ、胸元に回る私の腕を撫でるように触りながら実弥くんは言葉を続けた。
「タケよォ。突然どうしたァ?電話越しに玄弥から何かあったのかと心配されたじゃねェか」
「なんか胸がキューッとなって…実弥くんのことが私は大好きなんだなぁと思ったら、無意識のうちに…ってか電話大丈夫だったの?玄弥くんからだよね?」
「俺の親からの伝言だった」
「なんかあったの?!急いで帰らないといけない?」
「いやァ、ずっと前から言われてた事なんだけどなァ…」
「なになに?……っ…ギャァ!!!」
私の腕の中にいた実弥くんが突然後ろに倒れるように体重をかけてきて、耐えきれなくなりベッドに倒れ込む。
そこから先は何が起こったのかわからない。
私の目の前に映るのは天井。
実弥くんは私の首元に顔を埋めている。
そして耳元で囁かれた。
「俺の親がタケに会わせろってうるさくてなァ。とうとう玄弥まで使ってきやがった」
「え、実弥くんの…?」
「無理にとは言わねェ…だけど挨拶とかでいつかは会わないといけなくなるけどなァ」
「え、それって…」
私の言葉を遮るように、少し顔を赤らめた実弥くんがキスをしてきてその話は終わってしまった。
「俺の家族に会わせる前に、まず俺がタケにプロポーズしないといけないなァ」
たくさんキスをされて意識が朦朧としている中で聞こえた実弥くんの一言は、現実なのか夢なのか、私はまだ知らない
ある朝の出来事
「兄ちゃん、お袋がいつ彼女を連れてくるのかっていつも聞いてくるんだよ。自分で聞けばいいのに恥ずかしがって聞けないとか言っててさ。結婚式の話とかもしたいって言ってて…どうにかしてくれよ…」
玄弥すまねェ。
兄ちゃんはまだ彼女にプロポーズすらできてないんだ…
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