【今日は行けません、すみません。】


週末はいつもどちらかの家にお泊りに行っている。すごく楽しみ。
何をするでもなくただ一緒に過ごすことってとっても幸せ。
なんだけど…
(きちゃったのよね。)
そう。煩わしい月に一度のアレ。



【ごめんなさい。】

そういつものように連絡した。
決まってその時はいかないのだ。

(だって会ってももいちゃいちゃできないし…)


ピコン


いつもの返事は【わかった。また来週だな!】
今日もそうだろうと開いてみると何やら違う文章が

【今から君の家に行く】


え!?ちょっとまって!なんで?
生理だと体も重くて眠い。ちゃんと相手できないかもしれない。

ちょっとしばらく放置してみた。
すると、


【もうすぐ着く】の新着メッセージ。



【ど、う、し、た、ん、で、す、か?わ、す、れ、も、の…】
と打っているとインターホンが鳴った。モニターには杏寿郎さんが。

やばい!部屋は散らかってはないけど、どうしようどうしよう!
慌てていると入ってきた。鍵をかけ忘れていた。

「鍵をかけるようにと言っているだろう。心配する。」


「ごめんなさい、、でもなんで?今日は…」


ラフな私服の彼もかっこいい。ぼーっと見つめてみる。
仕事の時のスーツなんて鼻血ものだ。
それに比べ私の格好はスウェットに短パン。髪の毛はざっくばらんに結われたお団子。
コンタクトもはずしてメガネ。完全なる家スタイル。


「座って話そう。体は大丈夫なのか?」
腹巻が見えたの!?咄嗟におなかを隠す。ショッキングピンクの腹巻。


「なんで?」
「いつも月に一度は断られるからな。理由を知りたくて来てしまった。言いづらいことか?」
優しく髪を撫でる彼の手は男らしい。
ああ、この手も好き。

「えと、、生理で。体が辛くて、杏寿郎さんの相手ちゃんとできないと思って。」

おずおずと話してみると、目を開いて驚いていている。
どんな感情なの?固まっている彼。
しばらくするとぎゅっと抱きしめてきた。暖かい。
この金色のふわふわの髪の毛があたるだけ眠気を誘う。

「男はそんなところに疎くてな、、気づいてやれずにすまない。」

そんなの当たり前ですよ!
敏感なほうがびっくりするよ!


「なので今日は。。。」

「タケ」
「ん?」
「俺は、タケが辛いときも一緒にいたいと思っている。何か手助けできるかもしれない。」
「でも、、、その…できないですし。私役立たずですよ?」

すると大きなため息。またぎゅっとしてきた。

「それだけが目的ではないだろう?まさかそう考えていたとは…」

ちょっとショックを受けている!いつもの威勢のいい杏寿郎さんはどこへやら


そこに居るだけでいいんだ、と呟いた。


「ゆっくりと寝たり、体を擦ってあげたり、教えてくれたら男の俺でもいろいろできるんじゃないかと思ってだな。要するにタケと一緒にいたい。弱っている君ともな。もっと頼ってほしい。」


確かに、杏寿郎さんの腕枕はすごく安心できる。すぐ寝ちゃう。
穏やかな話し方だって、あの低くて暖かい声に心地よさを感じる。
私だってずっと一緒にいたい。できれば毎日でもいい!
会って、他愛もない話をして一緒にぐだぐだするだけでも幸せだなぁ

「そう思うんだが君はどうだ?」

逆の立場で考えてみた。

「確かに、前一度杏寿郎さんが風邪ひいたとき、頼ってもらえてうれしかったです。」

「俺もあの時、迷惑をかけると思って一度断ったろう?でも君といて安心した。」


そうだったんだ。私必死で看病してたから。

「だから、俺もタケにとってそういう存在でありたい。」

この人はこんなことをサラッという。
私は嬉しくて、でもちょっと恥ずかしくて、彼の胸に突っ伏した。
今顔を見ないでほしい。真っ赤だ。

「私、生理の時はいつも眠いんです。」
「うむ」
「よく食べます、そしていつもよりイライラしているかもです。」
「うむ」
「お腹が痛いときもあります」
「その時は抱いて擦ってあげよう」
「プリンが食べたくなります」
「たくさん買ってこよう」
「もっと、くっついていたいです。。」
「ああ、それは俺も同じだ」


思わず彼の顔を見上げると太陽のように笑っていた。



「杏寿郎さん。」
「なんだ?」
「ありがとうございます。」

よしよし、と頭を撫でられ、背中をぽんぽん。落ち着く体温。
軽めのキスが何度も、くすぐったい。
たまにはこういうのもいいなぁ、なんて。

短パンで過ごしていた私にブランケットを持ってきてくれた。

いつもとは違った週末の始まり。




もっと俺を困らせてくれ
そう囁く彼には太刀打ちできず、完敗です。



君をぐずぐずに甘やかしたいのさ


「わがままですみません。」
「問題ない!」


End










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