1人ぽっちじゃさみしいよ。
ただそう思って声をかけたのが始まりだった。


「冨岡先生。今日も1人ですか?」
「マツが一緒にいるから1人じゃない」
「私ですか…まあご一緒させていただきますけどね!」

昼休み。
生徒から恐れられているせいか、冨岡先生の食事する所には誰一人生徒は近寄ろうとしない。
体育館横の階段で1人、ぶどうパンを齧っている冨岡先生に声をかけてから数ヶ月経つ。
ご飯を食べながら喋るのが苦手という彼に勝手に話しかけて弁当を食べる。

周りの同僚からは「冨岡を気にかけてくれてありがたい!」だの「好き好んで1人で食ってるんだからほっとけェ」だの最初のうちは言われてたけど、今となっては何も言われなくなった。

「今日はオカズだけですが冨岡先生の分も持ってきたんです!毎日ぶどうパンだけじゃ栄養偏りますよ。」

はい、とタッパーの蓋を開け、割り箸と一緒に渡す。
唐揚げ、玉子焼き、ウインナー、ほうれん草のおひたし、そして…

「…昆布巻き?」
「おばあちゃんみたいですけど、昆布巻きが好きでよく作るんです。もしかして、嫌いでした?」
「嫌いじゃない。」

「いただきます」と手を合わせ、昆布巻きから先に手をつける冨岡先生。

「美味い。」
「よかったです。」

2人並んでお弁当を食べる。

「マツ。ご馳走様。美味しかった。」
「お口にあって良かったです。また気が向いたら持ってきますね。」
「鮭大根を作ってないか?マツの作る鮭大根が食べたい」
「鮭大根…?」
「駄目だろうか?」
「作ります!楽しみにしててくださいね鮭大根!」

その言葉を聞いた冨岡先生は、周りに花が咲いたんじゃないかっていうくらいの満面の笑みを浮かべた。
そんなふうに笑えるのね、冨岡先生。

ピコン、ピロン、私と冨岡先生のスマホに同時に着信音がなった。
差出人は宇髄先生。
グループチャットになってるらしい。冨岡先生、煉獄先生や不死川先生、伊黒先生や胡蝶先生、悲鳴嶼先生までメンバーに入っていた。

【どんな魔法をかけたらあの冨岡を派手な笑顔にさせたんだよ。さすがだな、マツ】
というメッセージと一枚の画像。
画像を見てみると先程の満面の笑みを浮かべている冨岡先生とその横でニコニコしている私が写っていた。
今撮られてたの?全く気付かなかったな…と思ってたら新しいメッセージが2件続けて届いていた。

【次は鮭大根を作ってくれる事になった。どうだ、羨ましいだろう】

【誰にも渡さないし譲らないからな。マツも鮭大根も】

隣を見ると、すっごくドヤ顔の冨岡先生がこっちを見ていた。

「そういうことだ。タケ、これからもよろしく頼む」
「は、はい。こちらこそ…」

そう言うと冨岡先生は先に職員室へ戻っていった。
冨岡先生そんなに鮭大根好きなのかしら。



遅れて職員室に戻ると、なぜかみんなから「おめでとう!」「幸せに」と声をかけられた。悲鳴嶼先生に至っては泣いていた。

何のことだと首を傾げていたら「冨岡のどこに惚れたのだ?さっき冨岡から聞いたぞ。付き合い始めたんだってな!!」
と、煉獄先生の口からとんでもない発言が聞こえてきた。

ニヤニヤしながらこちらを見ている宇髄先生。
頭を抱える伊黒先生。
「嬉しいわ〜」と喜んでいる胡蝶先生。
「何で冨岡?」と真剣に悩んでいる不死川先生。

そしていつの間にか私の隣に立っていた冨岡先生。
「皆、ありがとう。俺はマツと幸せになる」


いつの間にか冨岡先生とお付き合いする事になったらしい。



気づいてた?片想い


(このあと正式に告白されました)
(なぜ告白もなく付き合ってると思ったのか、不思議です。)
(でも、面白いからよしとしました)








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