応援したい

閉会式では煉獄先生のクラス代表が優勝旗を手にとっていた。

手当てをしに来た生徒によると、優勝したらクラス全員焼き肉に連れてってやる、という担任の約束だったらしい。

煉獄先生太っ腹だなぁ




食べ盛りな生徒たちだからクラスマッチに燃えたのね…



それにしても嘴平君なんて何度来たことか…!


閉会式も終わり、片付け終わった体育館はやけに静かで。さすがの部活も今日はお休みらしくちょっと寂しい。



「あとは日誌書いて、保健用品の補充だな…」



今日も帰れそうにない。





たとえば君が






絆創膏と、ガーゼ、湿布にテープ。
結構使ったな〜



在庫の棚とにらめっこ。
こりゃ発注かけて週頭に来るようにしたほうがいいかもしれないなぁ…


冷やすようの保冷剤もない。
これもだ。



チェックリストをバインダーに挟んで黙々と書いていくとガラガラと戸が開く音がした。




「はーい、ちょっと待ってくださいね〜」



キリの良いところまでチェックし終わり、あとは注文するだけだ。


出入り口の方にひょこ、と顔を出すと不死川先生が腕を組んでもたれ掛かっていた。



「おう」





「不死川先生、お疲れ様です」






珍しい。
不死川先生が来るなんて、何かあったかな?
こんな遅い時間に。



「どうされました?」



「…今日リレーで転んだやつ…どれくらいで治るかわかるか?」


クラスマッチの最後の最後に手当てをした子は不死川先生のクラスの子だった。
捻挫だったけどしばらくはかかりそうな症状だったしなー…




「うーん…だいたい1週間から10日で治るんですけど…なんとも言えませんね。部活ですか?」



「ああ、夏の大会までに完治するか気になってよ…」



チラ、とカレンダーをみてみる。
終業式が明日だからたぶん今月中ってとこだなぁ…



「大丈夫ですよ。たぶん今月中には治ると思います。無茶しなければですよ!」



そう笑うと不死川先生も困ったように笑った気がする。


ドキッとした。

泣いてるその生徒を慰めている顔も、今の顔も、初めてだったから。



笑ったりするんだな、と思って。



まじまじと見るのも恥ずかしいからすぐさまデスクに目をやる。



しばしの沈黙。

私は日誌を書きながら話してるけど、不死川先生は一向に帰らない。

まだ何かあるのかな?





「お前まだ帰らねェのかよ?」





「あと日誌と発注だけなんでもうすぐ帰りますよ!」



いそいそと在庫を差し引いて発注をファックスする。
時刻は7時前。まだ業者はファックスとってもらえる時間だ。

セーフ!


「不死川先生は今から焼き肉ですか?」


そういえばいつもの格好じゃなくてラフな服に着替えている。



「生徒たちが連れていけってうるせーんだよ。転んだやつのメンツもあるしな。次は冬にリベンジする。」


そうか…
転んでしまった子が自分のせいで、って思ってたらかわいそうだもんね…




「以外と優しいんですね」





クスッと笑うとおでこを小突かれた。
結構な強さで。


「いったぁー!」






「以外は余計だ。おら帰んぞ」




そんなこんな話してたら仕事も終わって保健室の鍵を閉める。


いいなぁ生徒たちと焼肉かぁ…

青春って感じでうらやましい



自然と帰る方向へ並んできてしまったけど


「不死川先生太っ腹ですね!楽しんできてください!」





軽く会釈すると軽く舌打ちが聞こえた。





「暗いから乗ってけ」




そういって強引に乗らされた。
助手席に乗るのは2度目だ








※※※※




「間に合いますか…?」




「心配ねェよ。」



薄暗くなった夜道をスースーすり抜けていく。車なら近いのに歩くとやっぱり遠いんだよなぁ…
だいぶ夜も明るくなってきて安心できるけど


特に話すこともなくて、家までのこの数分が変に緊張する





「そ、そういえば不死川先生足早いんですね!ビックリしました!」





何か話題をと思って絞ってでてきたリレーの話。確かに不死川先生もぶっちぎりで早かった。




「別にたいしたことねェよ…越せると思ったんだけどな。」



「あんなに差があったのにあと少しでしたね!それでも凄いです」




煉獄先生のクラスの生徒も鬼の形相で走る不死川先生に怯えていたもんなぁ





「……お前の」



赤信号で止まった。あと少し。





「アホみてェな声が聞こえて笑っちまったぜ」




「へ!?」



くつくつと笑ってる不死川先生の横顔を見ると胸の中がこう、なんていうのかな。むずむずとする感覚が沸き上がってくる。






じゃあな、と降ろされて思い出す。




そうか、私めちゃめちゃ応援してたわ。



聞こえてたの?まさかね、まさかだけど。



恥ずかしい!!!





end







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