おじゃまします



「帰るぞって…お前こいつの家知ってるのか?」




「……知ってるから帰すんだよ。教員が酒の席で問題になれば大変だろうがよォ…それにこの辺でバイトでもしてる生徒にバレたらどうすんだァ…」


せっかく勤められた教職を問題行為でおじゃんにするわけにはいかねェ。




すやすやと寝てるマツを片手で支えながら宇随と話す。
むにゃむにゃ言ってやがる。

ほんとおめでたいやつだ。




俺だってもう少し飲みたかったけどよ。



こんな状態じゃほっとけねェ。



「俺が送ってやるから場所教えろよ」




ナチュラルに自宅を聞いてくる宇随は下心があるのかねぇのかわからない。



「てめェに任せたらただの送り狼じゃねェかァァ!」




使い物にならない煉獄に、帰したら戻るとだけ伝えて2人分金を置いて店を後にした。












たとえば君が





収集のつかなさそうなメンバーだけ残して連れて帰るのも気がかりだったが、とりあえずタクシーを捕まえる。




「…ここの近くまで。」



「はいよ」



タクシーの料金ボタンの色がつく。
車内ではしーんとしていたが、隣にはすやすやと眠るマツの姿。

体重をかけているであろうのに重たくない。

こいつこんなに華奢だったのかァ…



「彼女ですか?可愛いですね」



ふと訪ねられた事に一瞬フリーズする。




「そんなんじゃねェ。」


「若いっていいねぇ〜」




そんなんじゃねェって言ってんのにこの親父。


苛立ちと聞かれていたらと気になってチラッと見るも、規則的な寝息だけが聞こえる。





料金を払い、眠るマツを起こそうとするけど一向に起きない。



「…おい、おい!いい加減に起きろ!」



軽く揺さぶるも駄目だ。
こいつどんだけ深く眠ってやがる。



マンションはわかるが部屋がわからない。
勝手に鞄に入っているであろう鍵を探してもいいだろうか…


独身の後輩の鞄に勝手に手を掛けるのも気が引ける。





「……おい、起きろ!!…チッ……なんで起きねェんだよこいつ…」


ほっぺをつねったりしたけど起きない。
寝たフリしてんじゃねェか?





はァァーーーーーー……と盛大なため息が夜に消えていく。



女の知り合いの家に連れていくか…

スマホを取り出すも恐ろしいほど女の知り合いがいない。



甘露寺に任せればよかったか?



仕方なくおぶってまた大通りにでた。




しばらくするとタクシーが停まる。



タクシーの車内にマツを降ろすと運転手が場所を聞いてきた。





「お客さん、どちらまで?」




ちらりと車内の時計を確認する。




時刻はまだ21時。








「自宅まで。」




※※※※




ガチャ、と鍵の音が響くマンション内。



電気をつけて、とりあえずベッドにマツを降ろす。


こんだけしても起きないなんて。
こいつ地震とかあった日には逃げ送れてるんじゃねェか?





「んん…」







「…!?」


急に寝返りをうったからびびった。


そろりと顔を覗くもまたすやすやと眠る。



一瞬顔がしかめられて
目尻にじんわりと涙が溜まる。



泣いてやがる…

なんでだァ…?


しばらく様子を見ていたがすぅすぅと元の、寝息に戻った。


何故かほっとして薄手のタオルケットをかけて部屋を後にした。



「…はァァーーー…」



いつもの会話じゃない声色に…


一瞬…




何バカなこと考えてやがる。、



相手はマツだぜ?












シャワーでも浴びるか。






こりゃ飲み直しに行けねェな。






【わりィ、行けそうにない】



煉獄にそうメールを打ってシャワールームへと足を進める。















end





トップへ OR戻る