先生の部屋

カーテンから差し込む日差しに薄く目をあける。
見慣れない天井にあれ?夢かな?とか思ってまた目をつむる。
いつもの寝やすい寝巻きとは違ってややきつめの服。

じんわりと汗ばんだ手。







…あれ?




家じゃない?!






たとえば君が




思わずガバッと、起き上がるも頭がガンガンする。
自分を見て思い出す。


そういえば飲み会の時…そのあとどうしたんだっけ…
痛い頭をフル回転しつつもあんまり覚えてない。


あたりを見回すと紺を基調としてる部屋で、とてもシンプル。





女性の部屋ではないことは確かだ。


クローゼットは黒のズボンとネクタイ、ベストがかかっている。

あのベストは見覚えがある…




サァアと血の気が引いた気がした。





「よォ…気分はどうだ?酔っぱらい。」





そこにはニヤニヤとする不死川先生の姿が。


ふらり、と目が眩む。
二日酔いとかではなく自分の失態が徐々に思い出されてくる。



「……ごめんなさいすぐ帰ります!…」



「まぁー良いんじゃねェの?とりあえずほら、」



差し出された麦茶を手に取る。




「ありがとう…ございます。」



チラ、と不死川先生を見るとリビングへと戻っていった。


飲んでたし、とても胃にしみる。




「とりあえず…そのツラどうにかしたらどうだァ?」



寝室の鏡を見ると、マスカラが落ちて酷い。化粧が崩れているどころか服もよれよれ、髪もぐしゃぐしゃ。





「ほらよ、シャワーは出て左手。」



パサッと顔に投げつけられた大きめのTシャツと短パン



「へ?」



「とりあえず着てろォ…貸してやっからよ。」



「そんな!すぐ帰りますから!」


顔が酷いとかよれよれとかそんなのを通り越して、不死川先生の服を着るということが恥ずかしすぎて無理!!



何故か意識してしまって見れない。



「そんなツラのまま外に出れんのかァ?電車に乗るんだろ?」



確かに、そうなんだけど…
だけども!





「いいから黙って行ってこい」




そういってシャワールームへと通された。








もちろんクレンジングとか化粧水もなく、男性用のシャンプーとボディーソープが並べてある。
なくて当たり前だよね!あったらちょっとショックかも。


ショック?なんで?



あ、髭剃り用のクリーム。ひげ見たことないなぁ…




ごしごしと念入りに洗って出る。
渡された服タオルからはほんのり男性の匂いがした。



よくよく考えてみれば彼氏でもない人の家でシャワー借りて服までって…



穴があったら入りたい…





「シャワーありがとうございました。」





タオルを首からかけておそるおそる部屋へと戻ると一瞬固まった不死川先生がいた。




「先生?おーーい不死川先生?」


不死川先生の目の前で手を振るも、無反応。
するといきなり新しいタオルをもって来て、わしゃわしゃと髪の毛をふかれる。


ちょっと痛い。



「いたた!先生強いです!」



「ドライヤーなんてねェからな。早く拭かねェと風邪引くから黙ってろォ…」



もはや人を拭いているというより犬かなんかを拭いているような力強さですよ!






一通りさっぱりして改めて謝罪する。




「私、昨日やらかしましたね。」



「おう。思い出したか?」



くつくつと笑う不死川先生にため息。



「無理して背伸びすんじゃねーよ。」



手元にあった雑誌を丸められてポスッと叩かれる。
次からは気を付けよう…






「…はい、気を付けます。不死川先生のせっかくの休みが台無しになってしまうので帰ります。このお礼は…」





「高くつくぜ…?」




ニヤリと不適な笑みにどんなに高くつくんだろうと思うと聞けなかった…

さよなら私の給料…





荷物をもって玄関でまた謝る。
すると一緒に出て鍵をしめた。



「下まで1人で降りれますよ?迷惑かけてすみませんでした!」




何も言わない不死川先生。
そのまま降りると駐車場につれてかれた。



「送る。」


ぶっきらぼうに車のドアを開けられても…


そこまでしてもらうのも気が引けて躊躇する。



「え、でも」




「チッ…いいから早く乗れ」


ポンと背中を押されて
半分強制的に不死川先生の車に乗り込んだ。













「その格好のまま帰らせられっかよ」





end













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