弟きたる


「先生いるー?」



お昼前にガラガラと扉を開けて入ってくる。
こうやって夏休み中も部活の子とかたまに保健室に来ることがある。



「いますよー、どうしたの?」




お盆期間中は学校は完全に休み。
だから数日はこれないから色々と片付けたりまとめたりの作業に追われている…




「後輩なんだけどさー、みてくんねぇ?あ、こら逃げんな!」



そういって先輩に連れられて部屋にペッといれられた男の子。




「手当てが終わったら体育館なー」



じゃ、といなくなってしまった生徒を見送り部屋に入ってきた子を椅子に座らせようとする。



「はいはい、ここに座っ…」





「……」



そこにはとっても嫌そうな顔をしている大きくてモヒカンの子がたっていた。






たとえば君が







「何してこんな捻りかたをしたの…!」




ユニフォームはじんわり汗かいてて。
きっと練習中に捻ったんだろう。


さっきしたであろう捻挫のところがやや赤く腫れ上がっている。



「ちょっと痛むからね…」



足首を右に左に動かしてみるけど動きは問題なさそう。
でもちょっと腫れるかなー


「……ってェー…」



「無茶しないんだよー。骨には異常はなさそうだけど腫れて痛みが強まってきたら病院ね。一応テーピングと湿布しとくから」





「…ありがとうございます…」


あ、しゃべった。

くるくるとテーピングをして固定してみる。
足も大きい。





「…大きいね?背何センチ?」




「180」


大きい!
年頃の男の子たちの中でも大きい方だ




「おっきいね〜。はい、これでおしまい。そこの名簿に名前書いてくれる?」




手当てをしたり休んだ子の記録の名簿にスラスラと名前を書いている。




「ん。」





「ありがとう。あ…!」




一通りチェック漏れがないか目を通すと名前の欄で手がとまる。




不死川玄弥




もしかして…!?
この猫目、やや傷だらけのぶっきらぼうさ…


もしかしなくとも不死川先生の弟?!





「あなた、不死川先生の弟さん?」



「そうです。兄貴が世話んなってます。」


軽く会釈して困ったように笑う顔はまさに不死川先生そっくり!


ちょっと素直でかわいい不死川先生みたい!



「こちらこそ不死川先生にはたまに助けてもらってます…」



深々と謎の挨拶をかわしているとまた部屋の扉が開いた。




「玄弥君!大丈夫だった?心配したよ」



マネージャーかな?
ジャージ姿のかわいらしい生徒さんが駆け込んできた。

不死川君はというと、真っ赤である。




かわいい




「大丈夫だよ、でも無理しないように見張っててね?!」


そういうと2人でニコッとして出ていった。




青春だなぁ〜いいなぁ〜







さて残りの仕事を済ませてさっさと帰ろう。
盆は実家に規制予定だ。





「よォ…まだいたのか?」




「不死川先生!もうあがりですか?」




「おー」



この前の事件以来なんとなく不死川先生は話やすくてついつい話をしてしまう。
まぁやらかしたことは恥ずかしすぎるけど…




「そういえばさっき弟さん来ましたよ、先生にそっくりですね」



「そうかァ?あいつ部活ばっかりして数学はてんで駄目だ」


はぁーと盛大なため息にくすくす笑ってしまう。



「明日から休みですね。ゆっくりしてください。あ、…それ…」


不死川先生はいつもの鞄に虫かごをもっている。
いつも気になっていた、接待室前に置いてある虫かご。


何がいるんだろう…と思いながらも見ることはなかった。

生き物は好きだけど虫は触れない…
見るだけならいいけど!





「不死川先生が世話をしてたんですか?」



「盆休みに入るからなァ…連れて帰るぜ。見てみるか?」

パァァといつもよりもキラッとしたような表情に一瞬戸惑ったけど…


「……見るだけなら…」


デスクの上に置いてある虫かごから一匹のカブトムシが見えた。



「2匹いるんだけどよォ…オスしかいねぇな」



そういって虫かごからオスのカブトムシを手にとって見せてくれた



「わぁ…懐かしいです。子供のころはよく父と弟が取りに行ってました。」


カブトムシと若干の距離を取りつつじっとみてると急に羽ばたきだしたカブトムシ。
ひょいっと不死川先生の手から飛んでいった。



「っっきゃぁぁ!!!!ちょっと不死川先生どうにかしてください飛んでますよ!!」



「あ゛ぁ"?!飛ぶもんだろうが!今捕まえる…!」



締め切っている保健室で捕獲しようとするも逃げるカブトムシ君。


運動神経のいい不死川先生に追い回されて、なんと私の胸元にピタッと着地した。


「きゃぁぁ…!不死川先生とって
!!とってくださいー!!!」



「あっ…!おい暴れるんじゃねェ!じっとしてろォ…!」



じりじりとあがってくるカブトムシ君
あと少しで服に入りそう


目の前には鬼の形相で私の胸元を見ている先生がいる。


「不死川先生早く…!」




「…チィッ…!!」



待つこと数秒
顔が赤くなっていってる。

もしかして胸元だから!?
そんな迷ってる場合じゃないですよ不死川先生ー!




「おーおーおー派手にイチャついてんなぁ〜ほれ。」



いきなり休憩用のベッドからでてきた宇随先生。
私と不死川先生の間にパッときてカブトムシを取ってくれた。



「宇随先生…!いつから寝てたんですか?」



「午前からいたけど?マツ意外と胸あんのな」




「はぁぁ?!」



セクハラですよ宇随先生!
そういって無い胸をさっと隠す


「不死川もウブすぎんだろ〜」



「クソがっっ!!」



カブトムシを虫かごにいれて手渡すとやや顔が赤い不死川先生が怒って部屋からでていった。





「……一緒に帰るか?」




「結構です!!!」












end














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