宇随先生

どど、どうしよう…
ガラにもなく焦っている。
今週末?不死川先生と?某ショッピングモール?しかもお迎えつきですって?
週末までまだ日にちがある。何を着ていこう…服がない。

っておしゃれしなくてもいいじゃん私!
普段通りで!いいよ!


なんだか胸がドキドキする。
なんのドキドキかはわからない…
きっとあの三白眼でまた何か言われるかもって怖いんだ、怖いだけだ、きっとそう…
っていっても最近は怖いどころか優しい気がするけど

ぶんぶんと頭を振る。
何カーーッとなってるんだ!

さっきから一向に手につかない日直の仕事をやろうとするのに頭がそのことでいっぱいだ。
日直終わってから電話かけ直せばよかった…
後悔しても遅い。





たとえば君が




切り替えてデスクに向かって日誌を書き終わったとたんにふと思い出した。

ホースだしっぱなしだ…
帰れると思ったのに!


急いでシャーペンを置いて外にでる。



延びきったホースを巻き取るのに手間取った。じりじりと日照りの痛い昼過ぎ。





「おーおー派手に大変そうだなー」




無我夢中でホースを巻き取っていたら私服姿の宇随先生だ。




「宇随先生!こんにちは。どうしたんですか?今日お盆休みですよ」


手には進路指導の冊子が。


「ちっと忘れもん。お盆なんて今時帰ったりしねーよ」



あちー、と夏なのに薄手のフード付きの上着をパタパタさせながらホースを伸ばしてくれている。巻き取りやすい。


「汚れますよ?」




「2人でした方が早ぇだろ」



いつも学校にいるときはメイクをしている宇随先生が今日はノーメイク。
どこからどうみても先生には見えない。



「…惚れたかぁ?あんま見てると穴空いちまうぞ」



「…!!惚れてません!ノーメイクが新鮮なだけです!」




いっつも宇随先生はそうやっておちょくってくる。ぷんすかしてる私をケラケラ笑いながらすること数分でその作業は終わったけど汗だくだ。



「助かりました、ありがとうございます!」


「タケ、もう上がりか?」


「はい、あと戸締まりして終わりです」


「じゃー待っとくわ」


えー待たなくても良いのに、と呟けば冊子を丸めてポスッと叩かれた。



「汗かいてるからシャワー借りてきます。」



「手伝ってやろうか」


そういって薄手のパーカーを脱ごうとする宇随先生に手元にあったタオルを投げた。



「結構です!!」


「下着落ちたぞ」


「え!?」



「冗談だっつーの」



もーーーー!とまたまたぷんすかしてさっさとシャワー浴びてでてきた。



※※※※




「髪乾かさないと風邪ひくぜ?」


待たせてるのもあってガシガシと適当に拭いてでてきた私の髪の毛を触る。



宇随先生ってチャラいと思ってたんだけど自然とスキンシップしてくるんだよね。
それがいやらしくないというか…。
一応びっくりするから毎度怒ってるんだけど。きっとこのふとした距離感にノックアウトな女性はたくさんいるだろう。



「夏だからすぐ乾きますよ!」


いつものことなのでササッと距離をとって離れる。



鍵をかけて靴を履き替える。


あ、そういえば不死川先生との約束のことすっかり忘れてた。
何を着ていけばいいんだろう
何を話せばいいのかな…
この前は迷惑かけたし、たくさんお金もっていこう。

ふぅーとため息がでてた。気づかないうちに。




「どうした?悩みか?」


ちら、と宇随先生をみる。
なんだかんだでよく見ている。というか気づく。相談してみようかな…
でもからかってきたら不死川先生嫌だろうしな…


「宇随先生…あの、…なんでもないです」


元気ないわけじゃない。
むしろ楽しみかもって思ってる自分もいる。
なんでかはわからないの。


「元気ねーな。ひとっ走りいくか?」


門まで来たところでポスッとヘルメットを被せてきた。
少し大きめのヘルメット。これ男性用じゃない?


メット越しに見えたのは宇随先生のであろう大型バイク。



「…うっわぁぁあ!初めて間近で見ました!宇随先生こんなかっこいいのに乗ってるんですね!」


「お、タケもバイク興味あんの?」



「乗ってみたいなって思ってました!風が凄く気持ちいいって弟が!」



「じゃ、気分転換にいくか」



返事はひとつしかない。




「安全運転ですよ?」



ブンブンとエンジンが鳴り響く。
このヘルメット、多分宇随先生のだ。
かすかに、香る香水のにおい。
いつも保健室で寝てるからわかる。




「俺を誰だと思ってるんだ?しっかり捕まってろ…!」















end


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