付き合ってんのか?

「ぁぁあー!い、そ、が、し、い!」


来る2学期。
暑さも落ち着くはずもなく夏休みが終わってしまった。

思わず声にでてしまった本音が保健室を響き渡る。


生徒達は実力試験の最終日。
半日で帰ることになっている。
下校の時間…なんだけど…



「みんな試験終わったからって羽目はずしすぎだよ!」


ぷりぷりとやれ消毒液や絆創膏を出すと皆照れたように笑っている。
そりゃ久しぶりに会えたもんね。わかるよ。楽しいもんね。ついはしゃいじゃうけど!


怪我人続出の保健室にはずらりと男子生徒が並ぶ。





たとえば君が









「そーカリカリ怒んなよなぁ〜モテないぞ?」



「宇随先生…またいたんですね!採点とかで忙しいのでは…?」



宇随先生は保健室を使ってのさぼり常習犯である。

「おれのテストはちょろいからな…採点なんてすぐ終わる。」


なんだそれ!
いいの!?


「どんなテストなんですか?」



今日やる仕事を付箋紙に書き出し、パソコンに張る。うわぁまだまだ山積みだ。
作業しながらの会話になるけど宇随先生は私が忙しかろうとなかろうとお構いなしだ。




「俺をモデルに描け、男前にできてたら満点。」



「ぶっ…!なんですかそれ!テストとしていいんですか?」

ぶふぅーっと吹き出してしまった。



「俺がいいって言えばいいに決まってんだろ?派手にイケメンに描いてくれてるぜ。」

となるとイケメンに描いてる生徒はだいたい満点なわけね。



「はいはい、イケメンですもんね。」



ほぼ棒読みで会話する。
宇随先生はイケメンだ、と思う。
話しやすいし。恋心なんてコロッと持っていかれそうだ。
でも私は不死川先生のほうがいいな。





ん?




今私なんて…?!

ぶんぶんと頭を降る。

思い出すのは買い物に行った日の事。


作業中にチラチラとみてしまう、デスクの端に置いてあるハンカチタオル。



「おーい…聞いてんのか?」




「…はい?あ、いえ聞いてますよ」



「どっちだよ」



けらけらと笑う宇随先生を余所に羨ましささえ感じる。自由でいいな。




夕暮れ時の涼しい風が入り込む。
よし、頑張ろう。



「宇随先生がそこで寝たらシーツ替えなきゃいけないんですよ?仕事が増えます!」



「そのままでいいじゃねぇか、別に汚れてねーよ。」



「そういうのじゃなくて!最近宇随先生がサボってることを勘づいた生徒が先生が寝た跡に寝てみたいって来たんですよ!困ります!」



「おいおい俺の男前がそんなことを招くとは…罪なやつだな。で、誰だそいつ」



「そんなの、言えませんよ…!」


生徒の淡い恋かもしれないし!

宇随先生が腰かけてるベッドのシーツを取ろうと引っ張るも動かない。
キッと睨んでみるけどニヤニヤしてる。
これは遊んでるな…?



「先生、どいてください。クリーニングに出します。」


じっと見つめられると恥ずかしくなる。
イケメンだし特にいやな感じだ。




「な、なんですか?早く…」



「一緒に寝るかぁ?」


「なっ…わわっ…!」





ぐいっと引かれて体制を崩しそうになる。
ふわりと宇随先生の匂いがした。
バイクに乗せてくれたあの時みたいな。




「からかうのもたいがいに…!」




バシバシと叩くとガラリと扉が開く音がした。
しまった、生徒かな?
慌ててでようとしたらジャッとカーテンが勢いよく開いた。






「宇随てめェ…今就業中だろうが…何してやがる…」





「不死川先生!あの、これは…」



青筋がたっている不死川先生の視線の先にはへらへらと笑っている宇随先生。
あの殺気のような雰囲気によく笑えるな…




「おーこわ。じゃ、またなタケセンセ」





ヒラヒラと手を振って出ていくの背中に思わずべーっと舌をだした。






「もう!いっつも邪魔しに来るんですよ!どうされましたか…?」





「いや…お前、今日大丈夫か?なんか具合悪そうだったからよ…」




夏休みボケでの回らない頭と生理2日目の腹痛によるものだろう。
そんなにへこたれて見えてたのか…




「大丈夫ですよ!薬飲んでますので!あ…」





ふとシーツの脇にポカリが置いてあるのに気づいた。わりとひんやりしている。


「宇随がお前に持ってきたんじゃねェか?」



「…まっさかー!忘れ物だと…思いますけど」




「あいつポカリなんて飲まねェぞ」



もし宇随先生が持ってきてくれたんなら悪いことしたな…持ってきてくれたら一言言ってくれたらいいのに…!



手渡されたポカリをじっとみつめる。

んー。。あとでお礼言わなきゃ





そして気づいた、目の前の不死川先生のネクタイ。
以前私が選んだものだ。
夏は暑いからネクタイしない先生が多いから冬ごろ見れるかな?と思ってたけど…



こんなに早く見れて嬉しい。
それを伝えたい、と口を開こうとすると、不死川先生の不機嫌な顔。






「宇随と付き合ってんのか?」



「へ?いや、あの」


頭が一瞬真っ白になった。



何も答える事が出来ず思考が止まっていると、



「…そーかよ。お似合いだな。」





そういって手に持っていたお茶を少し荒くデスクに置いて、保健室を出ていった。




end













トップへ OR戻る