思わぬ遭遇


文化祭前日。

あれよこれよと準備をして迎えるべく明日。

お化け屋敷のセットをしたりメイクをしたり。保健室では人体模型とか使われてた。

伊黒先生直轄の化学室のホルマリン漬けみたいな不気味な瓶をやっと借りられたみたいで。
保健室は普段とは全く違う雰囲気だ。


連日遅くまで準備していたのでくたくただけど、生徒達が頑張っているのをみてるからとても楽しみだ。


「あ、煉獄先生のところは劇をするんですね!」

「みたいだなァ…冨岡のクラスは出店の担当らしいがなァ…あいつ毎日ぶどうパンだから火ィなんか使えんのか?」

「確かに、心配ですね…」


文化祭の準備以来不死川先生とは普通に接することができるようになって、ほっとした。

でも、なんだかよそよそしくて。
寂しい気持ちもあったりして。



たとえば君が





「えっ?足りない?」

「ったく…今になって気づくなんてなァ…どうすっかなァ…」

前日準備を終え、生徒達はわりと遅くまで作業してちらほら帰宅した。
お化け屋敷の部屋のセッティング潘が飾り付けしたら、黒い布が足りなかったらしく。

「しなせんどうしよぉぉこの最後に一番怖いゾンビがでてくるのにー!」

「明るいと怖さ半減だよおぉお」


時刻は19時。手芸屋さんもぼちぼち閉まりそうな時間だ。

べそべそし始めた生徒達に、なんとかするからと声をかけて家に帰した。


「すまねぇが俺買ってくるわ。戸締まりお願いできるか?」

「わかりました…大丈夫ですか?」


そういえば少し走ればなんでもある大きなショッピングセンターがある。あそこに手芸屋が入っていたはず。



「車でならギリ間に合うだろォ…明日はよろしくな。」


そういって颯爽と帰宅準備をして出ていった。
生徒の頼みとなると弱い不死川先生。きっと手に入れてくれると思う。


私もさっさと準備をして、家へと帰った。
明日は本番か…うまくいくといいな。




※※※※




「ッたくあいつら…ちゃんと確認しとけよなァ…」


車を走らせて30分ほどのショッピングセンターは、何から何まで揃っている。
着いてすぐさま店員に聞き、必要なサイズより一回り大きいものを購入した。

これでひとまず安心だな。


時計を見ると20時前。
腹が減ってきた。



「なんか食って帰るかァ…」


一階に飲食店があったしなァ…
パッと入れそうなラーメン屋の旗をみつけ、店に入ろうとした瞬間、目の前を宇随が通った。



あいつも文化祭の買い出しかァ?
そういやここは色々画材が揃ってるからよく来ると言ってたしなァ…





「うず…」



「てんげーーん!久しぶり!」


「おう、見ねぇあいだに別嬪になったなぁ!」


「天元のお陰でしょ!もう、ぜんぜん会えなくて寂しかったんだからー!」

「ちと忙しくてよ…ほら、機嫌直せって。」


目の前で繰り広げられるやり取りに思わず足が止まる。
なんなんだこれは。
あの女…宇随に腕を絡ませやがって…恋人かァ?距離感が友達じゃねぇよな…



タケと付き合ってんじゃねぇのかよ。

腹の底から苛立ちが涌き出てくる。


「おい…てめェちょっとツラかせ」


「は?不死川?なんでここにいんだよ」


ズカズカと近づいて宇随の胸ぐらを掴む。
絡められていた腕はほどかれ、その女に睨まれるが気にしねェ…


「文化祭の教材の調達だァ…いいから来い」


そう無理やり引っ張っていくと、女にわりぃな!後で電話するから時間潰してて、などとほざきやがったから、こいつを、思いきり殴りたくなった。





「ってぇな…逃げないから離せよ」

「…わりぃ…」

「どうしたんだ?んな取り乱して。」

自販機の横に寄りかかっている宇随をギロリと睨む。


「どうしたもこうしたもじゃねェ!お前、どういうつもりだ?あのケバい女…いつから付き合ってんだよ…」

そう吐き捨てると思いきり驚いたような顔をしてニヤニヤしてきた。

「わりと最近だな、いい女だろ?」

「クソがァ!タケと付き合ってんじゃねェのかよ!」


へらへら笑う宇随に心底嫌気がさしてきた。


「…何、俺が誰と何人と付き合ってようが興味ねぇって言ってたじゃねぇか。なんで今さらそんな風に言われなきゃなんねぇんだ?」




確かにそうだ。
こいつは昔からよく女にモテていた。つれ回してる女も見るたびに違うやつだった。
人のプライベートにまで首を突っ込むことはない。昔からそうだ。
別に誰が誰と恋愛してようが興味はなかった。

それなのにあいつが、タケが知ったらどんな顔をするか…。
こんなクソやろうでも好きだから彼女になったんだろうが…
それを…お前ってやつは…


ふつふつと沸き上がる怒りとタケの悲しそうな顔が容易に浮かぶ。




「プライベートまで邪魔されるなんてごめんだな。じゃ、」


「あ、おいてめェ」

「なんでそんなにイラついてんのか。ちゃんとその堅物頭で考えやがれ。」


「は?意味わかんねェ…」



こっちは怒り狂ってるのに宇随は始終笑っていた。
それがクソむかついて、俺は飯も食わずに家へと戻った。







end




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