余計なお世話
生徒がお礼に是非ともと言われてはしょうがない。
でも今まで生きてきた中でお化け屋敷なんて入った事がない。
驚かす方はいいよ。
さぞ楽しいでしょう。
ニヤニヤしてる生徒が目に浮かぶ。
「バァ👐」
不死川先生を追って薄目で走るも不意打ちででてきたお化けにびびる。
「…っ…おぅいやぁぁアア!!びっくりしたぁ!」
咄嗟に不死川先生のシャツの裾を掴んでみる。
「ハァ!?!?なん…っなんだてめェは!!こっちが驚くじゃねェか!つーか近ェ!」
「すみませ…!これを掴んで歩けば問題なし…?」
天井から冷たくてぬるっとしたものが…頬をぺたり。
「✕○…煤「⭐️!?!?」
「ただのコンニャクだろォが引っ張んなてめェエ!!」
床にペムムと叩きつけられたコンニャクの音がする。意外と可愛い音だった。
くすくす笑い声まで聞こえる。
おそらく生徒だ。
もう終わりだ。教諭として。
そしてここを生きて出られる自信がない
生きて出ても不死川先生に半殺しにされるに違いない。
あ。
そっちのほうが怖いんじゃない?
ギャー!という自分の叫び声だけが脳内をこだましていた。
たとえば君が
「ごめんなさい。」
「だいたい生徒が壊すならまだしも職員が壊すなんて。弁償するか?高いぞ?どうしてくれる。」
「その辺にしとけ伊黒…わざとじゃねェからよ。」
「わざとじゃなければ備品をなんでも壊してもいいのか?それが許されるなら我々教師はいらない。」
「ごもっともです。すみません。」
無事お化け屋敷から出てきたものの、不死川先生のシャツは私に捕まれシワシワになり、私はボロボロ。
挙げ句の果てに飾ってあった伊黒先生の教材であるホルマリン漬けを割るという始末。
「フン…まぁ…俺のクラスのやつらも楽しんでいたみたいだし、今回は許すけど次は容赦しない。」
シャーー!!と殺気だっていた伊黒先生。ピシャリと部屋を追い出された。
とぼとぼと保健室へと向かう。
まだ片付けが済んでいなかった。
「不死川先生もすみません…ついてきてもらって。」
「俺んとこの生徒が借りたやつだしなァ…大丈夫だ。伊黒はなんだかんだ優しいやつだしよォ…。」
それを聞いてホッとした。
伊黒先生は女性恐怖症で滅多に喋らない。話しかけようとしても距離とられるし、常に嫌なオーラだしてるから怖かったり。
「今夜は焼き肉ですか?生徒たちと!」
「そーだなァ…連れてってやるつもりだ。あいつらも最後の文化祭だったしなァ…」
「体育祭の後も行ってましたよね!太っ腹です。」
私が高校の時なんてそんなにしてくれる先生はいなかった。だから生徒たちがとっても羨ましい。
「あいつらが働きだしたら倍返ししてもらうんだよ」
「そういう魂胆ですか!」
「んなの嘘に決まってらァ…」
不死川先生とまたこんなに話せるようになって嬉しくなった私は勘違いされてることもすっかり忘れていた。
「私はまだ片付けが終わってないので、お疲れ様でした!」
「手伝わなくていいか?」
「1人で大丈夫です!生徒たちが待ってますよ!では!」
軽く会釈して保健室へとむかう。
今日は盛りだくさんで楽しかったなぁ…くたくただ。
ささっと片付けたら帰ろう。
そう思って保健室の鍵を探していると、さっき不死川先生と別れた方向からくるりとまたこちらへ向かってくるのが見えた。
「…おい…」
「あれ?忘れ物でしたか?」
鍵を開けて入りたいのに要件を言わない不死川先生がそれをさせてくれない。
「ちげェ…お前さ…今、どーなんだよ」
「どうって…何がですか?」
何のことをいってるんだろう…
仕事のことかな?
なかなか切り出さない不死川先生の言葉を待つ。
「…つーかもう少し化粧とかしろよ。」
「…え…」
「…んでよ。ギャーーとか言うんじゃねェ…女なんだからよ。」
「はい?」
「もっと…なんつーか可愛くしねーと…」
「…」
何言ってるの…?
そりゃ可愛くないよ?可愛げなんてないもん。
自分でもよくわかってる。こんな性格だから。
「…そんなの…分かっていますよ。でも…不死川先生に関係ないじゃないですか…」
今までも言われることがあった。
人に言われたってどうってことなかった。はずなのに。
「……俺はお前のことを思って…」
「余計なお世話です!」
思わず大きな声がでた。
自分でも驚くくらいの。
可愛くない、女らしくしろと不死川先生に言われたことが凄く凄くショックで。
何が私この事を思って、よ。
「…不死川先生には…言われたくなかったです…!」
ボロボロと溢れる涙を隠せずに不死川先生を見上げる。
「な゛!?お前なんで泣い…」
視界は涙で震えていたけど、心底驚いたような顔だった。
困らせてしまう、とも思った。
それでもぐしゃぐしゃのこの顔をみられたくなくて。
ピシャリとドアをしめた。
end