誤解は晴れたが…




あいつにこれが一番良い方法だと思ったんだ。

直接、宇随は別の女と付き合っている、浮気されてると伝えるよりは。

傷つく顔がみたくなくて。
その女より良い女になれば宇随はマツの方へ帰ってくる。

そう思ったのによォ…

マツの足りない所なんて思いつきもしねェ。

咄嗟にでた言葉に自分でも驚いた。
そんなこと微塵も思っちゃいねェのに。
ポロリと涙のこぼれた顔をみて、ガラにもなく慌てた。



「何やってんだァ俺は。」



たとえば君が



「…おい…。」

「もうこんな時間。」

「…待てよ」

「急いでるので。」


あれからというものマツには避けられている。
弁解しようにもなんといっていいか分からずそのまま日にちが過ぎていった。

業務連絡でさえも付箋紙でのやりとりになっている。


「…あー…くそッ。なんだよあいつ…」


宇随はというとあれからいつも通りだ。
いつも通り出勤してマツと話し、帰っていく。
あいつは残業で残ってるのに。
彼氏なら待っててやれよ、とかジュースでも持っていけよ、と腹立たしくなる。

先に帰る宇随の先にあのケバい女がいるかと思うと胸糞悪ィ…

やり場のない感情にイライラしていた。


「何かあったか?最近様子が変だぞ」

「…別になんともねェよ」

「…そうか!何かあったら相談するんだぞ!」

バシバシと背中をたたれて去る煉獄。
お前に相談できるかよ…
俺よりも男女の問題に関しては疎そうだ…。



時刻は19時。


久しぶりにラーメンでも食って帰るか。

なんとなく気になるからと、帰るときに保健室の明かりを確認してしまう。

今日は…ついてない。
あいつ、もう帰ったかァ…

俺もいそいそと荷物をまとめて学校をでた。




※※※※




「ありがとうございましたー!!」


お気に入りのラーメン屋の暖簾をくぐる。
うまかったなァ…

飲み屋街にあるラーメン屋だから近くのパーキングに停めてある。

焼き鳥屋の良いにおいがする。


「…今日は金曜か…。」

いつもより人が覆いそこを歩いて駐車場へと向かう。
煉獄でも誘って飲みにでもくりゃあよかったな…

いつもドンチャンして終わりだがな…

「……そうなんですね!私は朝はご飯派です!」


ふと歩いてる先から聞きなれた声が聞こえる。


「…マツ…と…誰だあいつ。」

横には見知らぬ男。

馴れ馴れしい手付きでマツの肩を触っている。
嫌なのか、少し離れて向かってくる。

もしかしてあいつも…浮気…?

いや待て。あいつはそんなんするやつじゃねェ。
なんとなくだけどしない気がする。


横にいるへらへらした男を見て、無性に腹が立ってきて気づいたらあいつの手を掴んでいた。


「お前、何してやがる」

「不死川先生?!なんでここに…!」

「飯だよ。そいつ誰だ?」

ギリギリと睨み付けると相手の男は少し後ろに引いた。


軽くそいつに会釈したあとにピューっと近くの路地へと入り込む。

「ちょっと…不死川先生邪魔しないでくださいよ!!」

「お前こそなにしてんだよ。」

「何って…ご飯食べに…。気張らしに。」

「はァ?お前なァ…」

「不死川先生…私、とても傷つきました。あんなデリカシーのないこと面と向かって言われたら誰だってやけになります。まぁ…私に足りないところですもんね。女らしさ。だから紹介してもらったんです。友達に。」

「は?お前何言って…」

「女らしくなる為には男を知らねばいけない!と友達がいってました!私、頑張りますから。誰かさんにもう言われないように!」

無気になってるマツは一息で言い放つとその路次からでていった。


待てよ。
お前…それ浮気じゃ…

「宇随は…どうなるんだよ…。お前と付き合ってんだろ…?」


こいつも、宇随もどっちも大事な同僚だ。お互いが別の相手作ってたって良いことはひとつもねェ。


傷つけるだけだ…。



「宇随先生とは付き合ってません!一度も!!」


ピシャリと言われ、ヒラリと路地から出ていった。


今…なんて…?




「宇随と付き合って…ねェ…だと?」




end


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