どういう意味?







「お、お疲れ様です…」

「おう。」

本当に待ってた!
半分嘘だと思っていた。
職員室の下駄箱で履き替えて門の方へと向かうと車の中から顔を出した。

「乗れば?」

ん、と隣を指すけれどもさすがにここから助手席に座るのはまずいのでは?

「だってここ学校ですよ!?誰かに見られたら…」

「…別にどーだっていいだろ。」

そういって助手席のドアを開けてくれた。


悩むこと数秒。
マスクも持ってるし、つけとけば問題ないか?生徒にバレるかな?
バイトしてるって子もいるしな…

うーんうーん。、


もうどうにでもなれ!




たとえば君が



「わぁ…綺麗…!夜の海ってこんな感じなんですね…」

しばらく走らせること1時間。
行き先も聞けずただ仕事の話をしていた車内。
失礼なこと言いやがってクッソーという気持ちはすっかり忘れていた。
やっぱり話しやすい…気がする。


着いた先は遠方の海沿いだった。
展望台があって、自分達の町の方はキラキラしている。
海の方は真っ暗なのに、背中側からのライトアップが綺麗だ。


「ここ、よく来るんですか?」

「ああ。たまにな。ボーっとするにはいいだろ?」

「そうですね、最適です。」

潮風がやや生ぬるい。

道中のサービスエリアで買った手頃なおにぎりと、ちくわの磯辺揚げを食べる。冷えても美味しい。


「弟たちもよく連れてきてたなァ…あっちの方に浜辺があるんだよ。遊べそうな場所が。」

スイカ食いてェ…。
そう呟く不死川先生は少し幼くみえた。

「相変わらずお兄ちゃんしてますね。弟さんたち幸せですよ。」

「どーだか…」

「お茶いりませんか?私自販機で…」

「この前は悪かった。」

潮風に吹かれながらガシガシと髪の毛をさわる。

「変なこと言っちまった。」

「…いえ…私の事を思ってですもんね。…だから別に」

「あー。訳があんだわ。言えねェけど。お前は今のままで良い。」

そういってポンポンと頭を叩かれる。


なんだか…なんだか顔が熱いんですけど。
火照る顔を袖で隠す。
少し辺りが暗くて良かった。

「とりあえず、悪かった。それを伝えたかった。」

海の方を見ていたと思っていたのにいつの間にか自分の方を見ている。
その目から目が離せずにいた。



「別に…気にしてないですけど…」

「嘘つけ。あんなにあからさまに避けてんじゃねーよ。」

「あ、気づいてました?」

「分かりやすすぎだバーカ。だからよォ…その。知らねェ他の男と…」


他の男?ああ、友達が紹介してくれたあの人か。
そういえば見られたな。
一緒に飲みに行くの。


「でも私自分の足りないところに気づけたんです。もっと女子力あげますよ!今ちょうど女として最も旬な年齢らしいです!」

何を先走って言ってるんだか。
あの男の人の事をとやかく聞かれたくなくて。
とりあえず何か話さなきゃと頑張ってみる。


「…俺にしとけ。」



「へ?」


一瞬間が入った。
今…なんて…。


「だから……、練習台になってやるって言ってんだよ。知らねェやつにしてもらうより安心だろ。」




そう言い放って車の方へとさっさと歩いて帰ってしまった。
その背中を見るだけで何も聞き返せない。






どういう意味?




end




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