覚悟しろよ?
「…どういう…」
困惑しているマツの顔を見る。
無理もない。自分でも驚いている。
何言ってんだ…って。
でもよ…
こいつが知らねェやつといるのを見たら無性に腹が立った。
宇随といても、だ。
仲がよさそうにしゃべってる時も
付き合ってると勘違いしていた時も。
モヤモヤが消えねェ…ずっとだ。
「アー…だからよ。知らねェ男より気心しれてる方が安心だろ。お前が気が済むまで付き合ってやるって言ってんだよ…」
苦しい当て付けのような言い訳を言って車へと戻る。
【なんでそんなにイラついてるか、考えろ。】
宇随が前に言ってた意味がわかった、気がする。
これで確信した。
俺は…気になっているんだ。
同僚としてとかお互い長男長女だから、とかそんな理由じゃねェ。
女として、こいつが…
たとえば君が
「じゃ、またな。」
帰りの道中では特に何も話すことはなく、あっという間に家に着いた。
そわそわしている様子だがこいつに何故と聞かれても困る。
「また明日なァ…」
顔を覗き込むと複雑な顔をしている。そんな姿が可愛くて、思わずポンとしてしまった。
俺はタケが好きだ。
愛だの恋だの疎い方だった。
興味がねェわけじゃないが仕事してる時や友達とバカ騒ぎしてる方が楽しいから重要って訳でもねェ。
こいつは、頑張りやだ。
人に助けを求めねェ。
1人で頑張ろうとする。
なんっかほっとけねェ。
仕事に夢中でしかめっ面のタケも、生徒に寄り添って一緒に悲しんでる時も。
時折すっげー嬉しそうに笑うタケも。
「あんな回りくどい言い方しねェでもう言えばよかったかァ…?」
お前が好きだと。
でも俺自身もさっき気づいたしなァ…
人のもんでもねェ。
知らねェ男はさっさと切らせてやる。
何も気にすることもない。
じわじわ攻めてやらァ…
ふと、スマホにタケからのお礼のメッセージが来てて柄にもなくにやけてしまった。
早々に自宅について返事を返した。
ビールでも飲むか…
冷蔵庫を開けるとひんやり涼しい風が来る。
秋だけど冷たいビールはうまい。
「おやすみなさい、か。」
やりとりを期待している自分に気づいて失笑した。
連絡を取り合うことは正直面倒だと思っていた。
実際長くなりそうなら電話をかけているからなァ…
会話がしてェ。
こいつの事が知りたいと思った。
なんでもいい。
好きな食べ物とか、苦手な事とか。
「…。明日暇か聞いてみるかァ…」
しばらく経っても返事が来ないから
テレビでも見ようかとソファに転がる。
時刻は22時。あいつガキだなァ…
もう寝てんのか?
テレビを見ようにもテーブルに置いたスマホが気になって仕方がねェ
すると、通知アイコンが光り、すかさず開く。
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明日は予定ないです。
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end