いざ水族館へ!



なになに、何が起こっているの?

不死川先生が言ってることがまるでわからない。

わからないまま別れて帰宅すると明日のお誘いの連絡がきていた。

「…どうしよう…」

ベッドの上でクッションに顔を突っ伏す。
もともとは…不死川先生が失礼なこと言ってきて…傷ついて。
女子力あげてやる!ってヤケクソもあったんだけど…

はたして女子力あがるの?不死川先生に付き合ってもらって。
まぁーそもそも男と関わって女子力上がるかどうかもわからなかったけど…


どうするべき?

悩んでる時こそ予定は入っていないもので。
友人から紹介された男性の方はまるですっかり忘れている。


明日、会って聞いてみよう…かな?

ドキドキと、高鳴る胸を押さえて返信する。


うう…誰かに相談したいよう…






たとえば君が






「よォ…ちゃんと眠れたか?」

「え?なんで?」

「変に意識しちまって眠れねーとかよ。そうなってんじゃねーかと思って。」

なにそれー!まぁ…確かにドキドキして眠れなかったけれども!

「別に……まぁ…はい。ちょっと寝不足です。」

くつくつと笑う不死川先生に少々腹が立つ。お見通しってやつでしょうか。
面白がってるのかな?

脳内でムゥー!と地団駄を踏む。

「出るぞ。乗って。」

自宅のマンションまで車で迎えにきてくれた。相変わらず車内は綺麗だ。塵ひとつない。


「どこに行くんですか?」

「なんも決めてねェ。近いところは見つかったら面倒だからよォ…遠方にしようと思ってたんだがなァ…」

少し走ったところでハザードをつける。ん、と差し出されたスマホには遠方のおすすめスポットがブックマークされていた。

隣県の動物園やら地方の森林スポット、遊べる海岸におしゃれなカフェまで。


「何が喜ぶかわかんなくてよ…」

少し照れ臭そうにぶつぶつ言ってる不死川先生が可愛くて。

でもなんか嬉しい…


「なーに笑ってんだァ…」

「いえ、すみません!ありがとうございます、嬉しいです。どこも楽しそうですけどお天気もちますかね?」


空を見上げると雲行きが怪しい。
雨がポツポツ来そうかな?どんよりしてきた。
一応折り畳み傘を持ってきたけど…


「水族館とかどうだ?」

「いいですね!でもちょっと遠いですよ?」

「…ここかァ…高速ならわりと近いな。行くか。」

「はい!よろしくお願いします!」


そういうと、任せとけと笑った不死川先生にドキドキしてした。
異性と出かけることなんてほとんどなかった私は、どうやら楽しいみたいで、不死川先生に言われたムカつく事もすっかり忘れていた。



もちろん、どういう意味か聞くことも。



※※※※



「楽しかったですねー!いやぁ…イルカショーもだけどオットセイ可愛すぎです。」

「どうしたらあんな芸が仕込めんだろうなァ…犬じゃあるまいし。」

「鰯の群れもキラキラして凄く綺麗でしたね!鰯見てたらお腹すいたなぁ…美味しそうでしたよね?新鮮そうで!」

ぼそりと帰りの車内でそういうと、いきなり横を向いて片手で顔を隠す。

「ん?どうされました?」


震えていた手の隙間から今までに見たことない笑顔が。
お腹かかえて笑ってる。



「…ハハ!!ガキかお前は!おもしれェ…!」

「ちょっと!バカにしましたね?」

「あーー笑った。わりィ…あまりにも面白すぎてよ…」

水族館で腹減るとか…とぶつぶつ笑いの止まらない不死川先生に思わずポロッと本音がでてしまった。


「不死川先生もそんなに笑うんですね!いつもムッとしてるから…もっと笑った方がいいですよ!せっかくかっこいいのに。」


と、自然とでた言葉にはたと気づく。
私、今…

「…お前には気ィ許してんだよ。それにいつでもニコニコしてるヤローなんて気持ち悪いだろ。」


「確かに。いやでも煉獄先生は嫌じゃないですよ?」

「あーー…あれは笑ってるっていうよりあんな顔だろ。」

「そうですね…口角が上がってますもんね常に。素晴らしい。でももったいないです。先生も笑うと…その…もっと良いのに。」


「…万人受けしたって何の得にもなんねェだろ。大事なやつの前だけで良いんだよ。」


なんだかむず痒い。この会話。
私には結構笑ったり、優しいときもあって。
もちろん怒った顔も多いけど。
だから少しは大事ってこと?なのだろうか…

と、そこで気づく。
今日の目的。何故不死川先生はこんなにも私に関わってくれるのだろう。
忙しい休日を使ってまでも、だ。



訳があるって言ってたけど嘘はつけない人だと思うから。
訳があったんだろう。


もしかして傷つけたから謝罪でって事なんだろうか?
それだったら申し訳ない、よね。
女子力も男を知る所じゃなくて雑誌見たりネイルしてみたり、そんなとこから始めてみようかな…。自分でできる事から。


「不死川先生、ありがとうございます。私にあんな事言ったから、気にして関わってくれてるんですよね?忙しい休日を使ってまでも…。気にしなくて大丈夫ですよ!」

「は?」

「私、間違ってたかもです。まず自分のできることからやってみます。人に頼らずに!だから…もう…貴重な休みを使ってまで私に…」


良くしてくれなくても大丈夫ですよー!と言いたい所だった。

赤信号で止まったその瞬間、不死川先生に手を掴まれた。




「そんなんじゃねェ。俺が…お前と居たいからに決まってんだろ。」






end

















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