読めない名字

わらわらと皆が出ていった保健室はシーーンと静かになった。
これで集中できる。


日報に事務処理まで済ませてから後ろに佇んでいるたくさんの検尿容器と書類。

これを、クラスごとに分けなければならない。



時刻は夕方6時。
戸締まりの先生がくるまでのタイムリミットはあと一時間。



今日終わらせたら明日は休みだ!
そう意気込んで各クラスの人数名簿とにらめっこし始めた。





たとえば君が









「これは2-A組…冨岡先生のクラス…3-Bは煉獄先生…確かに、煉獄先生は3年生の担任ぽいなぁ…」




各クラスの名簿をみながら用紙と容器を数えていく。

人数分だからかかなりの数。数え間違いがあるかもしれない。





「3-Cは…不死川先生…なんて読むのかな?」


珍しい名字。読み方がわからない。
あとで他の先生に聞こう。


数える作業が一段落したときに気づいた。



容器にシールを貼るのを忘れていた…



「せっかくここまでしたのにー!」



思わず独り言と涙が1粒でた。
さよなら私の休み…



時刻は7時前。そろそろ教頭先生が閉めにくる頃だけどまだ来ない。




まだやっててもいいのかな?




鍵をかけに必ずこの通路を通るから気づくはず。
そう思って一度数えた容器を取り出し、シール貼りに没頭した。





「…い…おい!」



「うぁあ!びっくりした!」


無心で貼っていたから気づかなかったけどもう夜の8時をまわっている。






「そこら辺で終わりにしなァ…」




「あ!」



あの嫌な人だ!
よりによってこの人が来るとは!
げっ!と言いそうになった危ない危ない。



この人は帰り支度をしてここに寄ってくれた感じなのかな?荷物と鍵をもっている。




「もしかして教頭先生は?」




「んなのとっくに帰った」



「知りませんでした…!すみませんすぐ帰る支度します」



終わらなかったシール貼りにがっかりしながらも、待たせるとまた怒られそうだからそのままで準備する。




重たいって言ったしね。
根に持つぞ〜。




「明日って学校開きますかね?」




「部活があるからなァ…」



てことは開くね!よし、土曜に終わらせて日曜はゆっくりしよう!


そう思って保健室の鍵をとった。






「お前…これ…」



名前がわからない先生のクラスの付箋を見つけたその先生が問いかけてきている。



「実は読み方がわからなくて…どなたかに聞こうと思って」





「しなずがわだ、お前保健もだけど国語も勉強しろォ…」






「!!!」




確かに、確かにそうですけれどもーー!



恥ずかしさとムカつきで帰りは甘いもの爆買いして帰った。





ほんとやなやつ!




end















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