戦略会議
なんとなく、いつもより念入りコースで洗った洋服。
ほどよい匂いの柔軟剤も買ってきていれてみた。
いらないのにアイロンとかかけてみたりして。
広げてみると改めて着てしまった…彼氏でもないのに、と恥ずかしさが込み上げる。
休みなのに、家のことがしたいのに。
何故か畳んだ服に目が行く1日。
これからの2人
「おはようございます…!」
「マツか、おはよう!今日も早いな。感心感心」
「わわ」
そういってまた頭ポンポンする。
前から比べるとスキンシップが多い気もしなくもない。
いちいち照れてる私も私で驚いてる。
お礼もかねておかずを2つにわけて作ってみたけど食べるかな…
始業前なのにデスクで資料を整理している部長をチラ、と見る。
いつもならサクッと話しかけられるのに躊躇してしまう。
「あの!この前お借りしてた服をもってきました…ありがとうございました。私ったらなんて失態を…すみません。少しばかりですがお弁当のおかずを、少しもってきました。お腹のすいてるときに…」
ひと息で話し終わると、しばしの沈黙。
手提げ袋に綺麗にアイロンがけした服をいれて、お弁当と手渡してみた。
「ありがとう。昼に食べるとしよう!今日は先日の案件への戦略会議だ。」
いつものやり取りができたことに少しほっとした。
※※※
月末に開催される大手ショッピングモールで子ども向けのイベントが開催される。
その中で商品の販売促進ブースが1つ儲けられていて、不死川さんの会社が競っているということだ。
今のところは不死川さんの会社が有益なんだけど…
「…これ、絶対良いですよね。」
「ああ、子どもたちもきっと喜んでくれるはずなんだが」
「問題はコストですね。」
テーマは生き物。
大手ショッピングモールが売り出したい絵本や図鑑の利益向上のためのイベント。
ちなみに不死川さんの会社は動物のキャラクターの、着ぐるみとミニシアターを企画している。
私たちが提案したのは
移動水族館。
実際に見て、触って、生き物を感じてほしい。いわゆるタッチプール的なものだ。
他にも花や虫、実際に見せられるものは子どもたちにとってもとてもいい刺激だ。
それに関連した絵本や図鑑も展示するつもり。
予算はきまっている。
大手ショッピングモールが指定した額でどれだけ人を集められるかにもよる。
「部長、これ…!この絵本、わりと身近な生き物が載ってますよ!これなら私たちでも集められそうなのでは?」
「…生き物だからな…人の手のみでは限界がある。」
絶対絶対成功させたいこの案件。
特にあの不死川さんはギャフンと言わせたい!
メラメラと燃える闘志に自分でも驚いている。
「午後から取引先の業者で関係があるところがあるか調べてみよう。いつの間にかこんな時間だ。昼にしないか?」
ナチュラルに昼に誘われて言われるがままお弁当を休憩室に持っていった。
「ありがたく頂くとしよう。」
何度かお昼は一緒にしたことあるんだけど、こうやって対面するのは…とても気恥ずかしい。特に自分の作ったものを食べているから尚更。
「うまい!ご飯が進む!マツは料理上手だ!」
どんどん吸い込まれていくおかずたち。
お弁当箱小さかったな…
大きいの買おう。
ん?
買うの?
「ちょっと!!声押さえてください…!」
ああ…視線を感じる…!
「それはそうとマツ…聞きたいことがある。聞いてもいいか?」
お弁当のおかずとおにぎりとパンを既に食べ終わった部長はもうコーヒーをのんでいる。私もあと少し…
「大丈夫ですよ。どうされました?」
一気に真剣な顔つきになる部長に一度箸を置く。
もしかして何かまたやらかした!?
「先日…冨岡を家にあげたのか?」
end