お誘い


外回りから帰ってきて、部長が不在のときは必ずデスクにチョコレートと付箋が貼って置いてあった。

"お疲れ様"

それだけなのになぜか胸がぎゅうっとなってしまって。


お疲れ様、今日も暑かったな、外回りにいってくる、腹が減った、


その一言は様々で…
なんとも思ってないときは部長って気遣いが細やかだなぁと思ってた。
好きと気づいてからはなんとなくその付箋でさえも捨てられずにデスクの内側に貼ってある。
誰にも見せられない私だけの秘密



この気持ちを押さえようと思ってからしばらく経ってもなお、優しくされるたびに胸がぎゅっとする。
暖かい気持ちと、押さえなきゃいけない葛藤。



ああ、嬉しいのに辛いなぁ…











これからの2人






「日曜…ですか?」




「うむ。休みで申し訳ないんだが良ければ付き合ってほしいところがある。」







お昼休憩中、目の前の部長が何を言い出すかと思いきや今週末の予定を聞かれた。

フリーだし予定はないのだけれども…






好きという気持ちを忘れなきゃいけない。


そのためにはとても酷な気がする。のに。



心の中で嬉しいと思っている自分がいる。






「予定はないですけど…どうされました!?」




共に帰り支度をしながら会話をする。
もちろん引き出しの出し入れはささっと、見られないようにね。


「この前の取引先の案件、実は小さい女児向け用品でキャラクターものの取り扱いになりそうなのだが…どういうキャラクターが良いのかまるでわからない。甘露寺に聞いたら近くのハーモニーランドというところが色々いるらしく、気になっている」




は、は、ハーモニーランド!!!!!!
部長の口からハーモニーランドとは!!!


少しおかしくて可愛い。




「小さい弟さんいらっしゃるんですよね?弟さんはどう…」




「千寿郎は男の子だからな…断られた」




確かに!といっても部長は弟さんのこと結構子供のように言ってるけど実際小学生とかだったかな?さすがにもう行かないか…




「男一人でいくのもその…」


いつものように快活でない歯切れの悪い部長はちょっとだけ可愛い



「それに、マツも好きじゃないかと思って。大人の女性にも人気みたいだ」


そう話ながらカバンから財布を取り出し、少し皺になったチケットが二枚。




少々照れたようにみえる部長をまじまじと見てしまう。




ああ、勘違いとか
部長の、言葉に一喜一憂したって意味がないのに



これからの2人には仕事以上なんて絶対訪れないのに。









「……俺と来てくれるか?」





ずるいよ









end







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