様子がおかしい



あれやこれやと1日過ごしているとあっという間に過ぎる。
明日は月曜日、仕事だ。

昔は夕方になると出勤が楽しみで、わくわくしてたなぁ…
もちろん部長に会えるから、だったんだけど。


あの日以来その感情には蓋をした。
迷惑かけないように、役に立ちたい。

それなのに


"部長として心配してくれてるんですか?"


なんて聞いた私はずるい。
困らせたいわけじゃないのに。


それよりも、そうだと即答しなかった部長はもっともーーっとずるい。



なんで部下としてっていわなかったの?







今日も小さなため息か空へと消えていった。






これからの2人







月曜日の朝。
いつも通りに出社する、
はずだったんだけど。



「部長!?なんでここに!」


見慣れた車が一台、マンションの横に停まっている。



「うむ!たまたま通ったから迎えにきた!」


たまたま!?



本当に?!


同じ場所へと向かうのに断るのも…とどうしようか迷っていると助手席が開けられた。




「ほら、後ろに車も来ている」


そう言われると乗り込むしかない。
私は自分の仕事用バックをぎゅっと掴んで乗り込んだ。



「す、すみませんがお願いします…」



車内は相変わらず綺麗なんだけど…
どうしたんだろう?
偶然って言ってたし、信じよう。


嬉しくて複雑な心境だけど素直に嬉しい。




「会社前で私降ろしてください!誰かに見られたら大変ですよ?」



「なんでだ?意味がわからない」


意味がって!


「私と通勤したら部長が色々噂がたちますよ!ご迷惑かけたくないです!」



「気にすることはない。俺は大丈夫だ!」



部長は大丈夫でも私が問題なんです!
部長モテるだろうし、他の女性社員にでも見られたら…

ゾゾワと身震いした。



「それに、俺にとっては好都合だ」



「へ?」



いまいち聞き取れなかったけどそうこう言ってる間に会社に着く。
オフィスまで同じ方なんだけど
落ち着かない!いつも隣歩いてるのに!


こうして家をでてから夕方の退勤時間まで一緒だったんだけど…



「タケ!昼にしよう、君の好きなところで構わない」
「一息つかないか?コーヒーを買ってこよう」
「そこの棚のものは届かないだろう、俺が取る」
「疲れたか?俺が手伝おう。あまり無理をするな」
「残業は2人でやれば早い。帰りも送ろう。」







どうしちゃったの煉獄部長ー!
優しすぎる!!!!!
普段と違いすぎて!というか近い!色々と心臓がもちません!




「もしかして部長私を甘やかして何かたくらんでますか?次の企画の発表とか!」

「一緒にやれば問題ないだろう?タケとやればうまくいくはずだ」



ぽんぽんと頭を撫でられるオプションつきである。




というか
名前で呼んでるよね?いつのまに?



なんでか聞きたいのに聞けない!


"私のことなんで名前で呼んでるんですか?"



なんて恥ずかしくて聞けるわけない!




それでもあの快活でお腹に響く優しい低温ボイスで下の名前を呼ばれたらくらくらしてしまう。

ぽんぽんのスキンシップまで…

今日はお仕事どころじゃなかった。
早く退勤時間になってほしいと願いながらも帰りも送ると手を引かれる。


それに部長は周りを気にしない。
周囲の視線がチクチクと、痛かった。




たぶんこれは
きっと気分だ。明日になったらいつも通りなはず。




明日こそはちゃんと仕事しよう。
そう意気込んだ帰りの車内。




「夕飯はどうする?」


「ちょっと(心臓が)痛いので帰ります!」



「む?風邪か?」


赤信号でふいにおでことおでこをくっつけられた。




「ーーー!!!私ここでおりますまた明日に!」







ギリギリ青になる手前で振り切って降りてしまった。
タケと呼ばれた声がしたけど振り返れなかった。


私、今世紀最大に顔が真っ赤だと思う。
恥ずかしくてこんな顔誰にも見せられない!



どこに向かっているかはわからない。



近すぎる部長のギラギラとした瞳が、薄い唇が頭から離れなくて余計に苦しい。








静まれ私の心臓!!!













end








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