さぁ…これから何をしようか? 完




「結婚してほしい。」

部長が話す"結婚"というワードに目が点になった。



けっ…結婚!?!?
付き合うとか、そんなんじゃなくて?


「あの…何か間違って…」

「俺は君と結婚したい。君と一緒に仕事をして、君という人を知って。もっと知りたくなった。」

畳み掛けるように話してくるから何もいえない。
目を逸らせないから、顔が燃えるように熱い。

「俺のこれからの人生を支えてほしいし、俺も支えたい。そう思えるのはタケだけだ。一緒に北海道に来てくれないか?」


いままでの部長との思い出や色んな感情が一瞬でフラッシュバックする。
良いことばかりではなかった。
少し傷付いたりもした。


それでも…



「私は…」






これからの2人







「ソファは日が当たるそっちにして
テレビはこっちですかね?」

「そうだな!」

「カーテンは緑にして正解でしたね。部屋に差し込む光が柔らかい。」

「うむ、少し休まないか?荷解きで疲れているだろう?」



部長が北海道へ移動になったと同時に私はプロポーズされ、あれやこれやとしているうちに入籍し、周囲を驚かせた。


そもそもお付き合いしてからなんじゃない?と、お返事する前に聞くと、

「添い遂げるなら君が良い。それに、タケを幸せにしたいと思ったんだ。」

「私が部長が思うような人じゃなかったらどうするんですか?とりあえずお付き合いしませんか?」

「君がそうしたいなら構わんが…俺はもう北海道へ行く。君と遠距離をするくらいなら一緒に暮らしたい。人柄は良く分かっている。」


たしかにそうだ。
思いが通じてやっと幸せが訪れたのに遠距離だなんて…。


「寂しすぎます…」

「…やっと素直になってくれたな。」

ぽんぽんと、頭を撫でられて思い切りぎゅっとされた。
ふわりと頬に垂れ込む髪の毛がくすぐったくて思わず笑みがこぼれる。

「俺はタケが好きだ。片時も離れたくない。君が家に待っていてくれるなら仕事も頑張れる。」

「働かなくていいってことですか?」

「それは自分で決めて構わない。」


となると、親にも言わなきゃいけないよね。
お母さん…驚くだろうな…。
お父さんなんて…
でも部長の人柄なら、きっと好きになってくれるはずだ。


「私…部長と一緒にいたいです、だから…あの…」

よろしくお願いいたします…。。


と、結婚の返事が気恥ずかしくてモニョモニョしていたらとびきりの笑顔がふってきた。



「一生笑って過ごせるように。君を幸せにするから、俺についてきてくれないか?」


「…はい!」


ほんの数週間前の事が昨日の事のようにフラッシュバックする。


それからというもの親に挨拶に行ったり部長の家にお邪魔したり。
うちのお母さんはあらまぁまぁイケメンで元気で仕事もできてと、太鼓判押しで北海道行きはすんなりと見送りしてくれた。
ちょっと寂しかったけど…。

お父さんだけが最後まで駄々をこねたけど…
一緒に一晩飲んで話して打ち解けたらしく、頼むとだけいって見送りには来なかった。




2人とも新天地なので部屋を決めてから家具やら色々揃えるのが大変で。やっとこさ部屋らしくなってきた。




あと少し残っていた荷解きが済み、2人で新しく買ったソファに座る。


「日向で気持ちが良いですね〜それにしても4月なのにこっちはまだ肌寒いですね。」

「そうだな…タケ…こっちにおいで。そう離れるな。」

私はというとまだ部長とのこの距離感が慣れず、未だドギマギする。

「あの…部長…」

「杏寿郎だ。もう君の部長ではないぞ?名前で呼んでほしい。」

「杏寿郎さん…」

「…そういえばキスはお預けだったな。」

「へっ?!?!」


そうか、部長が風邪であんなことをして…千寿郎君に見つかったんだっけ…

「あの時は大変だった。しばらくメールも電話もしてくれなかった。」

「多感な時期でしたもんね…千寿郎君…」

千寿郎君には本当に申し訳ない。
そして恥ずかしすぎる。

顔合わせに行ったときにまず千寿郎君に謝り、なんとか誤解を解いた。



「あっちには冨岡がいたからな…、気が気じゃなかった。こっちには邪魔物はいない、遠慮することもない。散々我慢した。君という愛しい人が近くにいながら。自分の男の部分にも正直驚いた。」



ズズズ…とソファに寄りかかっていた体を押し倒し、天井には杏寿郎さんの顔が。。



「杏寿郎さん…?あの…」




驚くのは私の方ですから!

だって完全に男の顔。

目を背けられない。
逃げられない。
捕らわれた獲物のように。







「さぁ…これから何をしようか?」





これからの2人 完

happyend!









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