やらかした





「マツ…マツ…」



体をゆさゆさと揺さぶられている感覚はあった。
でも眠くて眠くて目が開けてられなくて。


と同時にふわっと宙に浮いたような感覚までは覚えてる…


覚えてるんだけど




怖くて目が開けられない










これからの2人





はた、と目が覚めると身体中どこそこ痛い



「あれ…私…いったぁぁ…!」





頭が物凄く痛い。
ガンガンする。
二日酔い特有の痛みは久しぶりで
戦闘不能です。




「目が覚めたか?」




「部長…!」



目の前にはシャツにスラックス姿のラフな部長が立っていた。
珍しく髪を束ねている。



それにしてもここは



「会社?」




「覚えてないのか?」



覚えてることもあれば覚えてない事も…




「マツがビールを飲み干してその後眠ってしまったんだよ。帰りは聞いてもわからず、とりあえずここへ」


そうか
部長は鍵もってるから開けられるのか



「特別にな…!今下のシャワーを借りてきた」



オフィスにシャワーと更衣室が準備されている。



社長はとても気さくな人で、ジョギングがてら出社するからと社員用のシャワールームを作ってくれている。




ガランとした空気
人のいない会社の雰囲気に飲まれそう。



「その…なんだ。君もシャワーでも浴びてきたらどうだ?」



「へ?あ…」



自身の姿を見るとあられもない。
私服がよれよれである。
化粧も取れて髪の毛もぐちゃぐちゃ。



「風邪を引くと思ってな…着いてから何度か起こしてみようと思ったんだが…」



「も、も、もういいです!私シャワー…」


しまった
着替えがない。
あるわけないよね!
会社に着替えなんて




「俺のでよければシャツと短パンを貸そう。たまにジョギングするからいつもロッカーにいれてある。」


すると、差し出された薄い青のシャツと大きめの短パン。タオルまである。


大きい…
脱げないかな?
Tシャツはいいとして…



って着るの!?!?
部長のを?!



「短パンは紐で調節してくれ」




でも汗臭くて酒臭いこの服を着るわけにもいかず、



「ありがとうございます…」


シャワールームのロック解除キーを片手に向かった





※※※※




「大きい…」



それは大きいはずだ。
人よりも背もがたいも良い部長だ
以外と短パンが細身だったのが救い。

部長の匂いだ…
って何してるの私!!


でも


「は、恥ずかしい…!!」



素っぴんを晒すなんて!!
上下短パンにパンプスというアンバランスな姿になって部屋に戻った。




「ありがとうございました…!これ、洗ってお返しします…部長?」



私の姿を見た部長は固まっている。


部長?部長?と目の前で手を振ってみるけど反応がない。
まさか顔が酷くて声もでないとか!


ありえる!


「素っぴんが……すみません…マスクしますから!」



「…いや…そうではない、すまない。その…目のやり場に困るな…帰りは送っていこう。マスクはしなくていい…」



ぽんぽんと頭を撫でられて暖かいコーヒーを淹れてくれた。
至れり尽くせりだ。
上司になんてことを…





コーヒーを頂くと胃に染みる…!
ああ、お腹空いてきた!





「この借りは必ず返します…!」




そういうと、困ったように笑っていた。



「いつか仕事で返してくれ」








end









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