9.料理があんまり得意じゃないんだ
任務先にあった死体は2つ。
大学生のものだったらしい。
乙骨さんの読みは当たっていて、調査を進めると面白半分肝試しで行ってしまったらしい。
知らない他人だから運が悪かった、と思うようにしても消化できない現実。
せめて遺体だけでも綺麗な形を保っていてほしいと願う。
「乙骨さんの任務遂行が早すぎて昼前には高専につきそうですね!」
「そうだね、今日はすることがあるから早めに終わって助かったよ。名前さんは昼からは任務?」
「いえ、今日はこれだけなので高専で残りの仕事をします。」
切り替えて行かなきゃ、身が持たない。自分の仕事を終えて伊地知さんの手伝いをしなきゃ。
そして夜は家に帰って晩酌でもしたい。
そう思ったらやる気がでてきた。
「乙骨さんは用事ですか?良ければ最寄りで降ろしますけど!」
車のミラー越しに訪ねるとぶつぶつと何か考えているようだ。
「じゃあ…お願いしようかな。」
指定された先は某有名な不動産屋だった。
そうか、住みかを探さなきゃいけないのか!
君という花
ついでにお昼もどうかと言うことになり、うちの近くの美味しいうどん屋で昼食をすませた。
「これが最高なんだよね」
スルスルとうどんを平らげる乙骨さんを目の前になんだかうどんをすする、という動作をするのが恥ずかしい。
どうやら七味唐辛子に感激しているみたい。
「海外が長かったんですか?」
「うーん、長いと言えば長いし短かったといわれたら短いかな。向こうは日本と食文化が全く違うからね。」
「日本人は醤油ですよね。あと味噌!味噌汁最高です。」
食べ物談義も弾み、お腹は満たってきているはずなのに食べたい欲が止まらない。
「食べたくなってきたなぁ…」
「高専には食堂がないですもんね…でも、これからたくさん食べられますね!」
みんなの持参している昼食をみると性格と生活が滲み出てくる。
五条先生なんて甘いものしかみたことない。七海さんは今朝のパン屋さんが多い。
虎杖君とかはコンビニ、伊地知さんはお弁当作ってきたりしている。たまに見かけるけどとても美味しそう。
「そうだね。でも僕料理があんまり得意じゃないんだ。インスタントラーメンとかくらいかな…」
「そうなんですね!以外です、なんでもそつなくこなせそうです」
強いし優しいし気配りできるし。五条先生とは違った意味で最強だと思う。
「そんなことないよ。」
「伏黒君も乙骨さんのこと、とても尊敬してると言ってました。あの伏黒君がですよ!それってとても凄いことです…」
「伏黒君かぁ…そういえば名前さんは虎杖君たちと同級生だね。みんな元気かな?」
「元気すぎますよ!」
あーだこーだと他愛もない話をしてうどん屋を後にした。
乙骨さんは話しやすいからついつい話してしまう。
「ここの焼き肉もおいしいです!もう少し行ったところのパン屋さんも…」
「美味しい店がたくさんだね。」
大きな不動産屋に行き着くまでに、この辺の美味しいお店をいくつか教えてあげた。
私も最初は高専にいたんだけど、補助監督になってから一人暮らしを始めている。
ここは高専からも割りと近いし便利な場所だ。
「じゃあまた。ありがとう。」
「いえ!お疲れ様でした!」
ぺこりと会釈をして車を走らせる。
それから数日は顔を合わせることはなく、しばらくしてパンダ君から乙骨さんが引っ越しするらしいという情報が入った。
end