12

ーーーーーーーー
名前ごめん!
五条先生が別の任
務いれてて、明日
は行けなくなった
乙骨さんなら色ん
な意味で大丈夫
帰ってきたら女子
会な
野薔薇
ーーーーーーーー


野薔薇ちゃん…色んな意味って何?

最後にバチコーーン⭐️!だの、
気合いいれてこーー!だの、
GOOD LUCK!!だの。
そんなスタンプがたくさん送られてきた。しかも女子会つき。
それはとても嬉しい。

今までで泊まりがけの任務はあったからいつもどおりすればよし!大丈夫!
なのに
なのになぜか


緊張するよぉおおー!


着替えも色々迷ってしまって。かわいい服も、いれたりして。
誰かと旅行になんて行かないし、ちょっと浮かれてプチ旅行気分になっていた。





君という花





待ち合わせ場所ではラフな姿の乙骨さんが待っていた。
ドキリと胸が跳ねる。

通る人はチラチラと乙骨さんを見ては頬を手で隠す。
わかる、わかるよ。
あんなに長身で、スマートで、髪もかきあげてさ…誰かを待っているイケメンがいたら誰もが振り向くよ。


その待ち人が私だったら周りの人も残念に思うだろう。
くううっ私がもっと美人なら…と謎の懺悔をしつつ、こそこそと小声で話しかける。



「(乙骨さーん)」

「名字さん!私服だからわからなかったよ。」

「それは私もですよ!乙骨さんイケメンですから!目立ちます…ほら、周りの人も振り返ってます…」

「そんなことないよ…でも君に言われると嬉しい。ありがとう。」



あああ並びたくない…イケメンの横に。早めに車へと案内したい。



「名字さんも普段と違って…その…可愛いよ」

そんなことをパァァと笑いながら言うもんだから。全身の熱が顔に集まってくる。

可愛いなんて普段全く言われないので嬉しいけどそれよりも恥ずかしさのほうが上回った。




「かっ…!私なんて五条先生とか七海さんにヒヨコとかハムスターとか言われてるから!そんなもんです!」


ひゃぁあと照れ隠しで口走った意味不明な言葉に乙骨さんは笑っていた。
乙骨さんは天然で人たらしなのかもしれない…。





今から高速で3時間、下道を1時間走ったところに現場がある。
今日は今から現場を下見に行くだけ。遂行は明け方だ。





「道中長いけどよろしくお願いします!」


そう伝えると助手席に座ってきた。
いつもは後ろに座るから…なんだか緊張する。



「こちらこそ。運転きつくなったら言って?僕も免許持ってるから。」

そういってほら、と見せてくれた免許証は今より若干幼い顔の乙骨さんだ。
目の下の隈が少し気になるけど…

今はそんなに目立たない。寝不足だったのかな…


「いえっ!呪術師を安心して送り届けるのも補助監督の仕事です!」


「長距離だから半分ずつはどうかな?名字さんもサービスエリアとか見たいんじゃない?交代でしようよ。帰りはお願いするから。」


「じゃあすみません、帰りは任せてください!」



そういってトイレ休憩ごとに運転を変わることにした。
優しい…優しすぎる。
五条先生とかずーーーっとスマホみたり甘いもの食べたりしてるし、七海さんとか喋らないから眠くなる。
運転を代わってくれる、と言ってくれた呪術師は初めてだった。





「それにしてもなんで五条先生は僕と名字さんにしたんだろ…泊まりがけなんて…」

ゴニョゴニョと口元を濁す乙骨さんを見れずにいた。きっと私も変な顔をしている。


「すすすすみません、私なんぞでほんと申し訳ないです…伊地知さんとかならよかったですね…」


「いやそういうことじゃなくてさ!ほら…名字さんも…若い女性だから…さ…僕なんかと…」


「お互い様ということで!楽しみながら行きましょう!!!私も五条先生のミスで虎杖君とか伏黒君の任務でも泊まりがけあったの大丈夫です!!」





「それ…どういうこと?」


一瞬その場がピシャリと凍りついた気がした。
気がしただけだった、と思いたい。

乙骨さんからの冷たい返しに半ば強引に話を済ませて運転に集中する。



虎杖君とか伏黒君とか、パンダ君とかなら1泊共にしても、今までこんなに焦ることなかった。たぶん慣れてる人だから?
部屋は別々にしてくれてると思う。たぶん。
五条先生が手配してなければ!!伊地知さんが手配してくれてれば!


乙骨さんは…まだ知り合って日も浅いし。

だから余計に意識してしまうんだろう。
それだけだと思う。うん。


ブンブンと頭を降り、道中のサービスエリアでちょこちょこ食べ回ったりしながらあっという間に最後のサービスエリアだ。


「そんなに食べるの?」

「せっかく来たんですから!食べたいものはとりあえず買います!」



ちょうど交代だったので高速を降りた下道はお願いすることにした。

乙骨さんの運転はとても優しくて寝そうだった。いけないいけない。




※※※※※




「確かに不気味ですね…」


日が暮れる前に現場に着いて辺りを見渡す。タブレットで確認すると自殺の名所らしく、このつり橋で交通事故が多々起こっているらしい。



「あ…」

つり橋の脇には花束が1つ、2つ備えてある。
手すりにも車が擦ったあとが。



思わず手を重ね、祈る。
どうか安らかに…。




「どうですか?」

「今は何も感じない…。」

「そうですか…。」

「帰ろうか。今日は美味しいものでも食べて寝て、朝に備えよう。」

「了解です!」



伊地知さんが予約してくれていたビジネスホテルへと向かい、チェックインするときにはたと気づいた。



これは
これはもしかして
もしかしなくとも…



「同じ部屋…!?」






end