「ぼ、僕ですか!?」

「そ。名前の護衛兼付き添い?しばらくね。」


意識がはっきりして名字さんと五条先生が夏油との話をしたらしい。

今後は僕か彼女に接触がある可能性があると。
足もまだリハビリ中だし、普段の生活も何かと不便も多い。


「だからって…男の僕では名字さんも嫌かもしれないですよ…。真希さんとか女性がいいと思いますけど…」


「夏油に太刀打ちできる?今後も接触があると見越して憂太しかいないと思ったんだけどねー。」

護衛兼手助け的な事らしい。
まぁ両足折られてるから家入さんに治してもらってもしばらくは生活に支障が出るとは思う。


「それとも何?他のヤローにする?七海とか。僕とか?」


「いや、僕がします。怪我させた僕の責任ですし。」

「憂太いきなりぬるっとするのやめてよね。おーーこわ。」


無意識に、やってしまった。
パンダ君に前にも言われたな。

五条先生は、じゃああいつよろしくねーとヒラヒラと手をふっていなくなった。






君という花







「しばらく休み…ですか?」

「はい。名字さんは働きすぎです。今回の事もありましたので少し休んだ方が良いとの事で…」

「でも伊地知さんが大変ですよね!?」

「リモートできそうな仕事はお願いするつもりです。ほら迎えが来ましたよ。また連絡しますので。お大事に。」

お迎え?!タクシーじゃないの?
伊地知さんが運んでくれたそこそこの荷物を受け取り、高専の前に車が停まった。
いつも仕事で使う車だ。

「こんにちは、調子はどうかな?」

「乙骨さん!!なんで?」

車のドアを開けてすかさず私の荷物を奪われる。
手際よくトランクに詰められると、助手席のドアを開けてくれた。

「家まで送るよ、話は走りながらでいいかな?」


消え入るような声で返事をし、車に乗り込んだ。
いつもは任務へと送迎する身なので自分が助手席に乗ることはない。
とても新鮮だ。


「乙骨さんが運転してるって不思議ですね!」

「ハハ、いつもは逆だもんね。」


この足が早く治れば大丈夫、ということか。ならば早く治さねば。



助手席から隣をチラッとみると乙骨さんの横顔がある。
窓からの風が心地よくて。
髪の毛がサラサラと揺れる。

はたと視線に気付き、なんだか照れる。


「家が近いからってことですよね?」

「うーん、それもあるけど。」


要するに夏油さんが今後接触する可能性があるから、護衛兼サポートってとこか。

「接触しますかね…乙骨さんはともかく、私には…」

「大いにあると見越してだから。五条先生もその方がいいって。もう君を2度と怪我させないよ。」

カァ…と、赤くなる。
乙骨さんはふいに凄くこっ恥ずかしい事とをサラりと言う訳で。
それが自然体なもんだから動揺してしまう。
他の女性とか勘違いしそう…。


「夏油さんの目的ってなんなんでしょう?話してて邪悪な感じはしなかったですけど…」

「君を傷つけただけで十分邪悪だよ。」

たまに雰囲気が一瞬変わるからヒエッとなる。

「まぁ…しばらくはよろしくね。とりあえず…荷物運ぼうか?」

家に来る途中でスーパーに寄ってもらった。肉とか魚とか適当に3日分くらい。乙骨さんチョイスだから楽しみだ。

なんやかんやと話しているうちに自宅についた。

一週間ぶりの我が家。

荷物はそこまで多くないけど足が痛いから持てず…部屋までもってきてもらう事に。


これって…どうしたらいいんだろう。
運んでくれてありがとう?じゃあさよなら?失礼かな…



部屋は…そんなに散れてはないはず。。
ちらりとスマホの時刻を見る。
もうお昼時だ…



「あの、よければご飯でも食べてきませんか?簡単なものしか作れませんけど」


鍵を差し、ガチャリとドアに手を伸ばす。
後ろについてきた乙骨さんをなんとなく振り向けず。


ドキドキと胸打つ鼓動。


特にたいした意味はないのに。
部屋にいれる異性にこんなに緊張するなんて初めてで。


虎杖君とか伏黒君とか来たときは何も感じなかった。野薔薇ちゃんいたからかな…




「いいの?僕なんか入れても。」

「だ、大丈夫です!お礼もかねて、ですので。乙骨さんさえ良ければですけど…」




返事を待つこの数秒が、果てしなく長く感じた。




end