それからというもの、乙骨さんは毎日来た。

だいたい午前中に来て、用事を済ませ、御昼をたべて帰る。
そして午後に仕事をするという日々


出歩く用事があるときはいつもついてきてくれた。。

買い物の手伝いとかポストへの投函とか最寄の病院の付き添いまでなんでも。

おそらく夏油の護衛も兼ねてなんだろうけど…


なんだか寄り添ってくれてる感じが安心して、ついつい甘えてしまった。


「乙骨さん、だいぶ歩けるようになりました!ごみ捨ても1人で行けましたし、もう大丈夫です!なのでこれ以上は…」

そう途中まで言うと何故か心がしゅんとなってしまった。

ほぼ毎日顔を会わせていたからなんとなくさみしい…。うん。さみしい。
けどまた高専で会えるし…。

ぶんぶんと頭を降る。


「…名字さん?」




「は!すみません!迷惑かけられないなって…お互い任務もありますし…ありがとうございました!」



深々と頭を下げて、せめてと作った手作りマフィンを渡した。
プレーンとココアと抹茶味だ。豆乳ときび砂糖で作っているからあっさりだ。喜んでくれたらいいけど…

「ありがとう。僕の方こそたくさんご馳走になったし!あの…名字さんが良ければまたご飯食べに来てもいいかな?家も近いし!なんなら僕の家でもいいから…」

そう頬をかきながら濁して言う乙骨さんに、私もついカァとなってしまった。
でも正直嬉しい…気持ちだ。



「はい!ぜひ!!」

でも私が彼の家に行くのはちょっとまだ恥ずかしい。





君という花



明日からの高専での仕事復帰に向けてパソコンをカタカタといじる。
夕方まで没頭し、家のインターホンがなる。


「どうぞー!」

「おーーっす!調子はどうだ?うわぁ…すげぇ痣になってる…」

「虎杖君!久しぶりだね。入って入って!足は大丈夫だよ!見た目だけでもうすっかり。」

「名前の好きなプリン買ってきたぞ。私らは女子会な!」

「野薔薇ちゃん!ありがとう〜!ここのプリン好きなやつ!」

「俺はSwitch持ってきた!」

「男子はゲームでもやっときな!伏黒が後で来るってよ」

「わぁー伏黒君も!お茶でもいれるから座ってて!」



見舞いにと家に寄ってくれた友人に会うのは久しぶりでとても嬉しかった。

「どうぞ。美味しいかわからないけど」

冷たい麦茶とさっき乙骨さんに作ったマフィンの残りを並べる。
外は暑かったのか2人とも一気飲みだ。

「これ作ったの?すっげーんめぇ…天才か?」

マフィンをひとつ、ふたつと頬張る虎杖君。爆食王だもんね。


「大袈裟な!ただ混ぜて焼いただけだよ。」


ほどなくしてまたチャイムが鳴り、伏黒君が到着。


「おー!伏黒早くマリカやろうぜマリカ!」

「お前は人んちだっつーのを少しは考えろ。くつろぎすぎだろ。」



男子2人はテレビの前でゲームに白熱している。わいわいするのは嫌いじゃない、むしろ好きだ。


「乙骨さんとそんなになっていたとはな…一泊任務で一線越えたかと…」

「野薔薇ちゃん!そんなはずないでしょ仕事だよ!乙骨さんとは普通の…」


普通の関係だよ、うん。
優しくて、お兄さんみたいな?


「いやぁでも…まぁいっか。名前が楽しそうなのが一番だしな。乙骨さんなら任せられるな、特級だし。」

何を?と突っ込んだけど野薔薇ちゃんはニシシと笑っていた。


「圧勝。お前負けすぎだぞ」

「っくぁーーー!伏黒強すぎ!釘崎勝負だ!」

「ぜってぇ負けねぇ!」

2人が白熱しているのをよそに伏黒君が訪ねてきた。

「また夏油に狙われる可能性あんのか?」

「圧勝だったね。五条先生が言うにはそうらしいんだけど…私なんて狙ってもなんの得にもなんないのに。」

「気を付けろよ。相手は特級だ。まぁー乙骨先輩いるなら安心だろうけど。」

そういえば伏黒君は乙骨さんのこと尊敬してるって言ってたな。
わかる気がする。
呪師としても人としても素敵だと思う。


と、ふとこの前キッチンで抱き止められた事を思い出す。
あああ恥ずかしい。


「うん、わかるよ!いい人だよね!」

「……はぁ。ま、応援してる。乙骨先輩を。」

「クッソーー!釘崎もつえぇ!こうなりゃ4人で勝負だ!」


何を?と思いながらもわちゃわちゃと盛り上がっていたので私も参戦して結局夜はピザまでとって帰った。



「じゃ、また高専でなー!おやすみ!」

3人ともわりと暗くなって帰っていった。
片付けはいつも伏黒君が手伝ってくれる。優しい。





ぽつんと1人の部屋が寂しいくらい静かで、久しぶりの賑やかさだった。



end