あの日から私はなんとなく乙骨さんを目で追ってしまうようになっていた。

どことなくお互い気にかけている、けれども深入りしない。
そんな関係だ。

本当はもっともっと話してみたいけど…彼の忙しさとか。任務続きで疲れてないか、とか。

ふと会ったときも軽く話をするだけ。

元気?怪我してない?休めてる?

お互いそんなことを話してはすぐ終わってしまう。


誰かともっと話してみたい、だなんて思ったことはなくて。
とても新鮮で、私を混乱させた。





君という花



「ぁぁーーっ五条先生のアホー!」

なんっで帰ろうとした時に報告書の仕事まわすかなぁぁ

「帰りに偶然出くわしたのを祓っちゃった♡あとはよろしく〜」

「なーにが祓っちゃった♡よ!」

最強だから仕方ないけど!それでみんなの安心が少しでも得られるならと自分を納得させた。

時刻は21時。
辺りは真っ暗だ。


すると、バタンと扉が開いた。

「あれ…名字さん?」

「乙骨さん?!?!どうしたんですかこんな時間…あ……」

そういえば今日の報告書、乙骨さんの分はすでに処理していたから帰ったのかと思っていた。
こんな遅くまでかかってしまったのだろうか?

「帰りに任務外の呪いを見つけたから祓ったんだけど、ぼーっとしてたらヘマしちゃって。」

「乙骨さんヘマするんですか!?以外です…怪我してますね…すぐ手当てします」


背中の服が破けている。大きな傷だと家入さんにお願いしないといけないけど…

「じゃあお願いします。」

そういって上着を脱いで椅子に座ってもらう。
服の破けていた線に沿って怪我をしている。
出血が…。



「だ、だ大丈夫ですか?出血結構あったんじゃ?」


「うーんどうだったかな…あんまり気にしてなくて」

「気にしてください!心配します!」

傷に沿って消毒をして念のため包帯をもってきた。

「ごめんね、ありがとう。」


しゅん、とうなだれる乙骨さんの背中をみていた。
というかはたと気づく。
細身だと思っていたのに以外と筋肉質で。男なんだな、と思った。
普段優しいから意識したことなかったけど。そういえばこの前転びそうになったときもガッチリしてたような…


思い出す抱き留められたあの日。



「どうしたの?」



「いえ!なんでもない!デス……すみません。戦いながら考え事してたんですか?」


包帯巻きたいけど、上半身裸の乙骨さんの、前にいくのは恥ずかしくて。手が止まっていた。
気づいた乙骨さんが、貸して、と手慣れた手付きでするする巻いていく。

「うん、ちょっとね。君が元気かなって気になってたんだ。」


「へ?あの、私…」


激務続きだった乙骨さん。
少し痩せたかな?とも思う。


「元気そうでよかったよ!でもこんな遅くまで1人でいたら駄目だよ。帰りが危ないからね。着替えてくる、待ってて。一緒に帰ろう?」


そういって着替えて戸締まりをしてくれた。


家が同じ方向だから公用車で帰ることに。
五条先生が帰る間際に仕事押し付けたから許されるでしょう。


「僕が運転するよ。君は座ってて」


「え?でも明日が…」

「また迎えにくるよ。僕も車だと助かる。」


荷物とかあるもんね、と妙に納得してお願いすることにした。


「服、破れちゃいましたね」

「そうだね…まぁこんなこともあるよ。」

「私、縫いましょうか?簡単でよければできますよ!


少しでも役に立てたらいいな。
前も虎杖君とか破れたのを縫ってあげた事がある。


五条先生のは絶対しないけど。


「いいの?お願いしようかな。」


「はい!任せてください!休みの日にしますので、」

そういって受け取ろうとしたけど一旦お洗濯してから、ということで持ち帰ってもらうことに。



そうだよね、血とかついてるもんね。

あっという間に家のマンション前に着いて軽く会釈をして出ようとした。

すると、ふと手を捕まれて一瞬息が止まった。


「破れてる服がまだ何着があるんだけど…。…それもお願いできないかな?もちろん、すぐすぐにではないんだけど…」


久しぶりに目を見た気がした。
なんだか気恥ずかしくてずっと直視できていなかった。


とっさに捕まれた所からだんだんと熱をもって顔まで熱い。



「…っ…!が、がってん承知の助です!」


「ありがとう。新しく買うか迷ってたんだよ〜。じゃあ今度僕の家に来てくれる?」




へ?


end